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58. 順を追って
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部屋に戻った僕は「疲れたぁぁ」と言って、ベッドにダイブした。
まるで自分の部屋かのように言ってるけど、ここはお母様の書斎。でも、僕の部屋のように使っていいとお母様も言ってたし、ちょっとくらい羽根を伸ばしても良いよね。
「旦那様の承諾も得られたし、俺たちの婚約も家族みんなに伝えられてよかった」
ベッドにダイブするように飛び込んだ僕は、布団に顔を擦り付けた。そんな僕のそばに、寄り添うように立ったままのフレッドは安堵の声をあげた。
「あ、そうだ! さっき名乗ってた、フレドリック・アーホルンって?」
僕は、ふと聞きたいことを思い出して、がばっと起き上がった。そしてベッドの縁に腰掛けると、フレッドを見上げて言った。
僕たちの婚約の報告の時に、フレッドが名乗っていた名前。初めて聞く名前だったから、あれ? って思ったけど、あの場で話を止められるわけがない。
気になるけど、あとで聞こうと思っていたんだ。
「ああ、あれは俺の今の名前」
「今の名前?」
「その事も含めて、順を追って話していくよ」
フレッドは「隣、良いかな?」そう言って、僕のとなりに静かに腰を下ろした。
「怪我をしてしまったあとのことなんだけど……」
あの日のことを話し出したのを聞いて、僕は一気に顔を曇らせた。
「フレッド、ごめんね……。僕をかばったから……」
「大丈夫。ミッチは悪くないから」
「でも」
「俺は、ミッチが無傷だったとあとから聞いて、自分が誇らしかったよ。……好きな人を守れたんだから」
フレッドは、僕を安心させるように頭をポンポンっと撫でて言った。
「あの時、前世の記憶を取り戻したんだ」
「あの時に?」
「そう。でも、俺たちは容姿も違っていたし、ミッチが生まれ変わりとは分からなかった」
「前世の記憶を持って生まれ変わった僕でも、フレッドがまさかリクだとは思わなかったよ」
生まれ変わってまた出会いたいなんて前世で約束していたけど、同じ容姿なわけがない。
しかも別人として生まれ変わるのだから、たとえ前世の記憶を持って生まれ変わったとしても、お互いに認識するのは難しいだろう。
「ミッチに初めて会ったときから、何か懐かしいような不思議な感覚に陥ることが何度もあったんだ」
「フレッドも!?」
僕は驚いて声を上げた。僕もフレッドと同じだったからだ。
初めて会ったときから、初めてじゃないような、何か特別な気持ちになった。でもそれが何なのかわからないまま、どんどんフレッドに惹かれていった。
「俺はミッチの存在がとても気になるようになった。そして一緒に過ごすうちに、ミッチに抱く感情が特別なものだと気付いたんだ。だから、ミッチが生まれ変わりなら良いのにって、何度も思った。でもミッチは、時々指輪を眺めていただろう? とても大切そうだったから、誰かにもらったものなのだろうって。俺は、その誰かに嫉妬していた」
「ふふふ。それが自分だったんだね」
「俺の持っている指輪は、俺を産んだ人が置いていったものだと思っていたから、ペアリングだなんて気付かなかったし」
フレッドはそう言うと、指にはめている指輪を、愛おしそうな目で見つめた。
「だから、ミッチは責任を感じているかもしれないけど、あのことがきっかけで記憶が戻って、再び思いを通わせることが出来た。そう考えると、あの事故も必然だったんじゃないかとさえ思うよ」
「そう……なの、かな……」
フレッドはそう言ってくれるけど、フレッドが僕をかばって怪我をしてしまったことは事実。
僕は自分を無理やり納得させるようにそう言ったけど、どうも煮えきらない思いを抱えたまま、フレッドの話の続きを待った。
まるで自分の部屋かのように言ってるけど、ここはお母様の書斎。でも、僕の部屋のように使っていいとお母様も言ってたし、ちょっとくらい羽根を伸ばしても良いよね。
「旦那様の承諾も得られたし、俺たちの婚約も家族みんなに伝えられてよかった」
ベッドにダイブするように飛び込んだ僕は、布団に顔を擦り付けた。そんな僕のそばに、寄り添うように立ったままのフレッドは安堵の声をあげた。
「あ、そうだ! さっき名乗ってた、フレドリック・アーホルンって?」
僕は、ふと聞きたいことを思い出して、がばっと起き上がった。そしてベッドの縁に腰掛けると、フレッドを見上げて言った。
僕たちの婚約の報告の時に、フレッドが名乗っていた名前。初めて聞く名前だったから、あれ? って思ったけど、あの場で話を止められるわけがない。
気になるけど、あとで聞こうと思っていたんだ。
「ああ、あれは俺の今の名前」
「今の名前?」
「その事も含めて、順を追って話していくよ」
フレッドは「隣、良いかな?」そう言って、僕のとなりに静かに腰を下ろした。
「怪我をしてしまったあとのことなんだけど……」
あの日のことを話し出したのを聞いて、僕は一気に顔を曇らせた。
「フレッド、ごめんね……。僕をかばったから……」
「大丈夫。ミッチは悪くないから」
「でも」
「俺は、ミッチが無傷だったとあとから聞いて、自分が誇らしかったよ。……好きな人を守れたんだから」
フレッドは、僕を安心させるように頭をポンポンっと撫でて言った。
「あの時、前世の記憶を取り戻したんだ」
「あの時に?」
「そう。でも、俺たちは容姿も違っていたし、ミッチが生まれ変わりとは分からなかった」
「前世の記憶を持って生まれ変わった僕でも、フレッドがまさかリクだとは思わなかったよ」
生まれ変わってまた出会いたいなんて前世で約束していたけど、同じ容姿なわけがない。
しかも別人として生まれ変わるのだから、たとえ前世の記憶を持って生まれ変わったとしても、お互いに認識するのは難しいだろう。
「ミッチに初めて会ったときから、何か懐かしいような不思議な感覚に陥ることが何度もあったんだ」
「フレッドも!?」
僕は驚いて声を上げた。僕もフレッドと同じだったからだ。
初めて会ったときから、初めてじゃないような、何か特別な気持ちになった。でもそれが何なのかわからないまま、どんどんフレッドに惹かれていった。
「俺はミッチの存在がとても気になるようになった。そして一緒に過ごすうちに、ミッチに抱く感情が特別なものだと気付いたんだ。だから、ミッチが生まれ変わりなら良いのにって、何度も思った。でもミッチは、時々指輪を眺めていただろう? とても大切そうだったから、誰かにもらったものなのだろうって。俺は、その誰かに嫉妬していた」
「ふふふ。それが自分だったんだね」
「俺の持っている指輪は、俺を産んだ人が置いていったものだと思っていたから、ペアリングだなんて気付かなかったし」
フレッドはそう言うと、指にはめている指輪を、愛おしそうな目で見つめた。
「だから、ミッチは責任を感じているかもしれないけど、あのことがきっかけで記憶が戻って、再び思いを通わせることが出来た。そう考えると、あの事故も必然だったんじゃないかとさえ思うよ」
「そう……なの、かな……」
フレッドはそう言ってくれるけど、フレッドが僕をかばって怪我をしてしまったことは事実。
僕は自分を無理やり納得させるようにそう言ったけど、どうも煮えきらない思いを抱えたまま、フレッドの話の続きを待った。
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