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72. 移住のお知らせ
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全てのことが解決するまでさらに時間を要し、気付けば僕たちは十九歳の誕生日を迎えた。
今年は、領民たちが主催で宴を開いてくれると言うので、僕たちは楽しみにしていた。
街のあちこちで、趣向を凝らしたお店や催し物が並び、全てが心躍るものばかりだった。
近隣からも沢山の人が遊びに来てくれて、ハイネル領は一日中とても賑やかだった。
「今年は領民の皆さんが主体となって、私たちの誕生日の宴を開いてくれたと聞きました。こんなにたくさんの素敵な催し物はとても楽しい気持ちになります。そして、近隣の皆様にもたくさんお越しいただき、誠にありがとうございます。昨年は、この場で弟フィラットの当主就任をお知らせしましたが、今年は私からひとつお知らせをしてもよろしいでしょうか」
突然広場の中心で話し始めた僕に気付き、慌ててフィルはやってきた。
「え? ミッチ、急にどうしたの。ご挨拶は最後って言ったじゃないか」
「うん、ごめんね。ちょっと僕たちから報告があって」
僕はフィルにそう答えながら、近くで待機していたフレッドに向かって手招きをした。
その合図に気付いたフレッドは、僕のすぐ隣までやってきた。
「フレッドまで? なにするの?」
「まぁまぁ、フィルはここで聞いていてね」
声のトーンを落として小声で言うフィルに微笑みかけると、僕は再び広場にいるみんなに向かって話しだした。
「弟フィラットが正式に当主となってから、一年が経ちました。それ以前から、フィラットは前ハイネル伯爵であるお父様のそばで、たくさんのことを学んできました。この一年、彼の隣で見守ってきたから断言できます。私がずっとそばについていなくても、フィラットなら大丈夫です。みなさまにも、頑張りは十分伝わっていることと思います」
そこまで一気に言うと、僕は一息ついた。それに合わせ、領民たちのざわめきも大きくなる。
たしかにすべての人が納得するような、領地運営はまだまだ難しいかもしれない。けれど、今のフィルになら、このハイネル領を任せることができる。
「一年前に、フィルが大切なお知らせをしたように、私もみなさまに大切なお知らせをさせていただきます」
そう言うと、隣のフレッドに目で合図をした。
「私、ミッチェル・ハイネルは、本日の誕生日の宴をもちまして、ハイネル領から出て、アーホルン領へ向かうことにいたしました」
「えっ? どういうこと?」
「これからは、このフレドリック・アーホルンが、責任を持って彼を守り抜きますので、ご安心ください」
「ちょっと待って、だからどういうこと?」
ここがハイネル領の街のど真ん中で、皆の注目が一斉に集まっているのを忘れて、フィルが僕たちに詰め寄った。
けれど、フィルの混乱した様子は、街にいる人皆同じ気持ちだったようで、ざわめきがどんどん大きくなる。
「約二年前、私たちは結婚の約束を交わしました。けれど、ハイネル家が落ち着かない中、ここを離れることは出来ませんでした。そしてあれから二年。やっと落ち着きを取り戻し、フィラットの成長も実感しました。……それなら、もう完全にハイネル家を託してもよいのではないかと思ったのです」
「でも……」
「泣き虫だった頃のフィルは、もうどこにもいないよ。……大丈夫。フィルを支えてくれる人はたくさんいる。大丈夫、大丈夫だよ」
民衆に向かって話していたはずの僕は、いつしかフィルを抱きしめ、いつものように『大丈夫』と、魔法の言葉をかけた。
そしてフィルから体を離し、周りで聞き入ってる人々の顔をゆっくりと見渡した。
「私はアーホルン公爵家に入りますが、心はいつまでもハイネル伯爵家と共にあります。私の心のふるさとです。ハイネル伯爵家とアーホルン公爵家は固い絆で結ばれています。両家はこれからも安泰です」
僕がそう宣言すると、わーっと割れんばかりの歓声が上がった。
今年は、領民たちが主催で宴を開いてくれると言うので、僕たちは楽しみにしていた。
街のあちこちで、趣向を凝らしたお店や催し物が並び、全てが心躍るものばかりだった。
近隣からも沢山の人が遊びに来てくれて、ハイネル領は一日中とても賑やかだった。
「今年は領民の皆さんが主体となって、私たちの誕生日の宴を開いてくれたと聞きました。こんなにたくさんの素敵な催し物はとても楽しい気持ちになります。そして、近隣の皆様にもたくさんお越しいただき、誠にありがとうございます。昨年は、この場で弟フィラットの当主就任をお知らせしましたが、今年は私からひとつお知らせをしてもよろしいでしょうか」
突然広場の中心で話し始めた僕に気付き、慌ててフィルはやってきた。
「え? ミッチ、急にどうしたの。ご挨拶は最後って言ったじゃないか」
「うん、ごめんね。ちょっと僕たちから報告があって」
僕はフィルにそう答えながら、近くで待機していたフレッドに向かって手招きをした。
その合図に気付いたフレッドは、僕のすぐ隣までやってきた。
「フレッドまで? なにするの?」
「まぁまぁ、フィルはここで聞いていてね」
声のトーンを落として小声で言うフィルに微笑みかけると、僕は再び広場にいるみんなに向かって話しだした。
「弟フィラットが正式に当主となってから、一年が経ちました。それ以前から、フィラットは前ハイネル伯爵であるお父様のそばで、たくさんのことを学んできました。この一年、彼の隣で見守ってきたから断言できます。私がずっとそばについていなくても、フィラットなら大丈夫です。みなさまにも、頑張りは十分伝わっていることと思います」
そこまで一気に言うと、僕は一息ついた。それに合わせ、領民たちのざわめきも大きくなる。
たしかにすべての人が納得するような、領地運営はまだまだ難しいかもしれない。けれど、今のフィルになら、このハイネル領を任せることができる。
「一年前に、フィルが大切なお知らせをしたように、私もみなさまに大切なお知らせをさせていただきます」
そう言うと、隣のフレッドに目で合図をした。
「私、ミッチェル・ハイネルは、本日の誕生日の宴をもちまして、ハイネル領から出て、アーホルン領へ向かうことにいたしました」
「えっ? どういうこと?」
「これからは、このフレドリック・アーホルンが、責任を持って彼を守り抜きますので、ご安心ください」
「ちょっと待って、だからどういうこと?」
ここがハイネル領の街のど真ん中で、皆の注目が一斉に集まっているのを忘れて、フィルが僕たちに詰め寄った。
けれど、フィルの混乱した様子は、街にいる人皆同じ気持ちだったようで、ざわめきがどんどん大きくなる。
「約二年前、私たちは結婚の約束を交わしました。けれど、ハイネル家が落ち着かない中、ここを離れることは出来ませんでした。そしてあれから二年。やっと落ち着きを取り戻し、フィラットの成長も実感しました。……それなら、もう完全にハイネル家を託してもよいのではないかと思ったのです」
「でも……」
「泣き虫だった頃のフィルは、もうどこにもいないよ。……大丈夫。フィルを支えてくれる人はたくさんいる。大丈夫、大丈夫だよ」
民衆に向かって話していたはずの僕は、いつしかフィルを抱きしめ、いつものように『大丈夫』と、魔法の言葉をかけた。
そしてフィルから体を離し、周りで聞き入ってる人々の顔をゆっくりと見渡した。
「私はアーホルン公爵家に入りますが、心はいつまでもハイネル伯爵家と共にあります。私の心のふるさとです。ハイネル伯爵家とアーホルン公爵家は固い絆で結ばれています。両家はこれからも安泰です」
僕がそう宣言すると、わーっと割れんばかりの歓声が上がった。
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