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41話 白石との対決1
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出来る準備は全て行った。
あとは──
「このストーカー女。何しに来たのよ」
──白石さん、いや、白石が私に話しかけてくるだけだった。ようやく、準備は整った。
ここは某プロサッカーチームが本拠地にしているスタジアムの、隣にある一般に貸出しているサッカー場だ。
大きな公園にもなっていて、サッカー場以外にもバスケットゴールや子供の遊具などが置かれ、地元民の憩いの場でもあるようだ。
サッカー場の西側に、選手用のチームハウス(更衣室やトイレのある建物)と、サッカー場の北側にクラブハウス(ミーティングルームなど有料会議室がある建物)がある。
私はクラブハウス近くの観客席に座っていた。
この観客席は、散歩中の人が腰かけるなど、誰でも座れるようオープンスペースになっている。
練習試合が行われていた際は、それなりに観客がいたが、試合が終了した今は私しか座っていない。
そこに白石がやってきたのだ。
「あんたの居場所はどこにもないって言ったでしょ。迷惑だから帰りなさいよ」
以前会ったときは、もう少し余裕があったのに、今回はどこか性急な雰囲気を感じる。
まあ、当然だろう。
試合中、ゴールを決めた蓮が観客席に座っていた私に手を振り、私も振り返していた。
その蓮と私の姿を、白石が気がつかない訳がない。
白石にとっては、蓮と私が会い、自分の嘘が露見するのを恐れているはずだ。
早々に私を追い出したいのが本音だろう。
「どうして?私は蓮に友達として──」
「元カノが未練たらしくウロウロするのが迷惑だって、なんでわからないのよ」
私は手に持ったスマホを強く握り、うつむいた。
白石が見下したように鼻で笑う。
「前も言ったでしょ。蓮と私は結婚するのよ。目障りだから二度と来ないでちょうだい」
勝ち誇った声で、白石は得意気に言った。
私は落ち込んだ声で「ごめんなさい……」と呟いた。
「わかったらさっさと消──」
「だったら、蓮にお祝いの言葉を贈るわ。直接」
顔を上げて、白石の顔をまっすぐ見ながら言った。
一瞬、白石がたじろいだ。
「結構よ!蓮が言ってたわ。
『もう関わらないでほしい』って。結婚前なのに、変に誤解されるのは困るって言ってたわよ。それから、『勘違い女に付きまとわれて迷惑だ』とか、『7年前も、今も、立花が嫌いだ』ってね。そんなあなたから、お祝いの言葉をもらうなんて、蓮が可哀想よ。彼のことを思うなら、何も言わずに目の前から消えてあげるのが、優しさってものよ」
まるで、『あなたのために言ってるのよ』と言わんばかりに、こちらを諭す口調で嘘を並べるのは、ある意味見事だと思う。
あぁ、そうだ。
7年前も、彼女はこんな口調で私に嘘を吹き込み、まるで呪いを植え付けるよう囁いた。
白石。もう、私は7年前の地味で自信がない、惨めな女じゃないわ。
「ねえ。それ、本当に蓮が言ったの?」
冷静な口調で問いかける。
「ええ、本当よ」
「なら、なおさら蓮に会わないといけないわね」
「はあ?!」
「7年前、どんな気持ちで私に告白してきたのか、説明してもらうわ。それから、婚約者がいるくせに、私に練習試合を見に来いと誘った理由も問いたださなきゃ。もしも『結婚前に女遊びしたかった』なんて、最低な理由なら、女心を弄んだ報いを受けてもらうから」
席から立ち上がると、白石は明らかに動揺し始めた。
「なっ、何言ってるのよ……」
「白石さんも気になるわよね?蓮は『浮気男』なのかなんなのか。結婚する前にハッキリさせないと一生後悔するかも。さっ、白石さん。蓮のところに行きましょう。蓮はどこにいるの?更衣室?ならそこに行きましょう」
白石の手を握ると、「やめてよ!」と叫びながら、彼女は力一杯私の手を振り払った。
「あんた正気?!」
「ええ。女心を踏みにじるヤツは許さないわ」
「なにをマジになってるのよ。本当キモい」
「白石さんこそ、バカなの?」
「はあ?!」
「浮気する男とわかってて結婚するなんて。もっと自分のことを大切にしなよ」
「大きなお世話よ!これは蓮と私の問題なんだから、あなたには関係ないわ。余計なことをしないで」
「蓮は私と浮気しようとしたのよ。無関係じゃないわ」
「それは、あんたの勘違いでしょ。本当、勘違い女は痛々しいわね」
白石は苦し紛れに、私を嘲笑った。
昔の私なら、ここで引いてた。
だけど──。
「私の勘違いなら、ちゃんと蓮に説明してもらうわ」
「だから、迷惑だって言ってるでしょ!」
「迷惑なのはこっちよ。勘違いするようなことをされたんだもの。まぎらわしい行動をするなと文句を言わなくちゃ、こっちの気が済まないわ」
「ちょっと!本当にもうやめてよ。事を荒立てても、意味ないでしょ。蓮には私から言っておくから、ここは大人しく帰ったほうがいいわよ。ね?」
今度は諭してくるのね。
そんな手には乗らないわよ。
「ヤダ。文句は自分で言うわ」
白石の顔が引きつった。
「ヤダって……。子供じゃないんだから、もっと冷静に──」
「大人だから、言いたいことは自分で言うわ」
「ねえ、本当にやめてよ……」
今度は泣き声で白石は弱々しく言った。
同情を誘う作戦なのだろうか。コロコロ戦術を変えてくるのに、彼女の狡猾さを感じた。
そして、彼女が追い詰められていることも。
「私、蓮が好きなの。浮気されても、蓮と結婚したい。だからお願い。私の幸せを壊さないで……」
すごいセリフだ。
こちらに罪悪感を抱かせる言い回しに、某テレビ番組で聞く『あっぱれ!』をあげたい。
「こんなことで壊れるなら、壊した方がいいよ」
白石は泣き真似も忘れて、私を睨んだ。
「私は蓮と話をする。どんなに止めても無駄だよ」
私はチームハウスへ向かって歩き出した。
「ちょっ、待ちなさい!立花!」
白石が私の手を掴んだ。
どうやって私を止めようかと、思考をフル回転させているからか、白石の目の焦点が合わない。
私はこっそりと周りを見渡した。
まだ来ないな……。
「白石さ~ん!!」
チームハウスの方から、知らない女性が走ってきた。
白石と同じ『チームのロゴ入りTシャツ』を着ているから、関係者だろう。
「たっ、大変です~!」
その女性は無遠慮に白石の手を掴むと、チームハウスへ向かった。
私もあとを追う。
行ってビックリ!
チームハウス前に、結婚式の入口に置かれているような、豪華な祝花台が2つも置いてあった。
そして、花束の中心に──
『祝 橘蓮様 白石菜月様
ご結婚おめでとうございます
桜花グループより』
絶対、こはるちゃんの仕業だ……。
こんなの作戦になかったよね?!
あとは──
「このストーカー女。何しに来たのよ」
──白石さん、いや、白石が私に話しかけてくるだけだった。ようやく、準備は整った。
ここは某プロサッカーチームが本拠地にしているスタジアムの、隣にある一般に貸出しているサッカー場だ。
大きな公園にもなっていて、サッカー場以外にもバスケットゴールや子供の遊具などが置かれ、地元民の憩いの場でもあるようだ。
サッカー場の西側に、選手用のチームハウス(更衣室やトイレのある建物)と、サッカー場の北側にクラブハウス(ミーティングルームなど有料会議室がある建物)がある。
私はクラブハウス近くの観客席に座っていた。
この観客席は、散歩中の人が腰かけるなど、誰でも座れるようオープンスペースになっている。
練習試合が行われていた際は、それなりに観客がいたが、試合が終了した今は私しか座っていない。
そこに白石がやってきたのだ。
「あんたの居場所はどこにもないって言ったでしょ。迷惑だから帰りなさいよ」
以前会ったときは、もう少し余裕があったのに、今回はどこか性急な雰囲気を感じる。
まあ、当然だろう。
試合中、ゴールを決めた蓮が観客席に座っていた私に手を振り、私も振り返していた。
その蓮と私の姿を、白石が気がつかない訳がない。
白石にとっては、蓮と私が会い、自分の嘘が露見するのを恐れているはずだ。
早々に私を追い出したいのが本音だろう。
「どうして?私は蓮に友達として──」
「元カノが未練たらしくウロウロするのが迷惑だって、なんでわからないのよ」
私は手に持ったスマホを強く握り、うつむいた。
白石が見下したように鼻で笑う。
「前も言ったでしょ。蓮と私は結婚するのよ。目障りだから二度と来ないでちょうだい」
勝ち誇った声で、白石は得意気に言った。
私は落ち込んだ声で「ごめんなさい……」と呟いた。
「わかったらさっさと消──」
「だったら、蓮にお祝いの言葉を贈るわ。直接」
顔を上げて、白石の顔をまっすぐ見ながら言った。
一瞬、白石がたじろいだ。
「結構よ!蓮が言ってたわ。
『もう関わらないでほしい』って。結婚前なのに、変に誤解されるのは困るって言ってたわよ。それから、『勘違い女に付きまとわれて迷惑だ』とか、『7年前も、今も、立花が嫌いだ』ってね。そんなあなたから、お祝いの言葉をもらうなんて、蓮が可哀想よ。彼のことを思うなら、何も言わずに目の前から消えてあげるのが、優しさってものよ」
まるで、『あなたのために言ってるのよ』と言わんばかりに、こちらを諭す口調で嘘を並べるのは、ある意味見事だと思う。
あぁ、そうだ。
7年前も、彼女はこんな口調で私に嘘を吹き込み、まるで呪いを植え付けるよう囁いた。
白石。もう、私は7年前の地味で自信がない、惨めな女じゃないわ。
「ねえ。それ、本当に蓮が言ったの?」
冷静な口調で問いかける。
「ええ、本当よ」
「なら、なおさら蓮に会わないといけないわね」
「はあ?!」
「7年前、どんな気持ちで私に告白してきたのか、説明してもらうわ。それから、婚約者がいるくせに、私に練習試合を見に来いと誘った理由も問いたださなきゃ。もしも『結婚前に女遊びしたかった』なんて、最低な理由なら、女心を弄んだ報いを受けてもらうから」
席から立ち上がると、白石は明らかに動揺し始めた。
「なっ、何言ってるのよ……」
「白石さんも気になるわよね?蓮は『浮気男』なのかなんなのか。結婚する前にハッキリさせないと一生後悔するかも。さっ、白石さん。蓮のところに行きましょう。蓮はどこにいるの?更衣室?ならそこに行きましょう」
白石の手を握ると、「やめてよ!」と叫びながら、彼女は力一杯私の手を振り払った。
「あんた正気?!」
「ええ。女心を踏みにじるヤツは許さないわ」
「なにをマジになってるのよ。本当キモい」
「白石さんこそ、バカなの?」
「はあ?!」
「浮気する男とわかってて結婚するなんて。もっと自分のことを大切にしなよ」
「大きなお世話よ!これは蓮と私の問題なんだから、あなたには関係ないわ。余計なことをしないで」
「蓮は私と浮気しようとしたのよ。無関係じゃないわ」
「それは、あんたの勘違いでしょ。本当、勘違い女は痛々しいわね」
白石は苦し紛れに、私を嘲笑った。
昔の私なら、ここで引いてた。
だけど──。
「私の勘違いなら、ちゃんと蓮に説明してもらうわ」
「だから、迷惑だって言ってるでしょ!」
「迷惑なのはこっちよ。勘違いするようなことをされたんだもの。まぎらわしい行動をするなと文句を言わなくちゃ、こっちの気が済まないわ」
「ちょっと!本当にもうやめてよ。事を荒立てても、意味ないでしょ。蓮には私から言っておくから、ここは大人しく帰ったほうがいいわよ。ね?」
今度は諭してくるのね。
そんな手には乗らないわよ。
「ヤダ。文句は自分で言うわ」
白石の顔が引きつった。
「ヤダって……。子供じゃないんだから、もっと冷静に──」
「大人だから、言いたいことは自分で言うわ」
「ねえ、本当にやめてよ……」
今度は泣き声で白石は弱々しく言った。
同情を誘う作戦なのだろうか。コロコロ戦術を変えてくるのに、彼女の狡猾さを感じた。
そして、彼女が追い詰められていることも。
「私、蓮が好きなの。浮気されても、蓮と結婚したい。だからお願い。私の幸せを壊さないで……」
すごいセリフだ。
こちらに罪悪感を抱かせる言い回しに、某テレビ番組で聞く『あっぱれ!』をあげたい。
「こんなことで壊れるなら、壊した方がいいよ」
白石は泣き真似も忘れて、私を睨んだ。
「私は蓮と話をする。どんなに止めても無駄だよ」
私はチームハウスへ向かって歩き出した。
「ちょっ、待ちなさい!立花!」
白石が私の手を掴んだ。
どうやって私を止めようかと、思考をフル回転させているからか、白石の目の焦点が合わない。
私はこっそりと周りを見渡した。
まだ来ないな……。
「白石さ~ん!!」
チームハウスの方から、知らない女性が走ってきた。
白石と同じ『チームのロゴ入りTシャツ』を着ているから、関係者だろう。
「たっ、大変です~!」
その女性は無遠慮に白石の手を掴むと、チームハウスへ向かった。
私もあとを追う。
行ってビックリ!
チームハウス前に、結婚式の入口に置かれているような、豪華な祝花台が2つも置いてあった。
そして、花束の中心に──
『祝 橘蓮様 白石菜月様
ご結婚おめでとうございます
桜花グループより』
絶対、こはるちゃんの仕業だ……。
こんなの作戦になかったよね?!
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