【完結】フィクション

犀川稔

文字の大きさ
68 / 93

47話 明るい友達の隠された過去

しおりを挟む
 教室に戻った僕らは自然と恋と相馬の席の周りに集まった。先に教室に帰っていた相馬はスースー寝息を立てて机で寝ていた。明るい話をして場を盛り上げようと佐々木に気遣い、恋は少し笑って見せた。そんな恋の事を不安そうに新山と仲川は横から見ていた。
 少しすると携帯が鳴り、佐々木は顔を曇らせて「ちょっと出てくる。」と言って教室から出ていった。その表情を見逃す事なく見ていた恋は「僕もちょっとトイレ!」と言って場を抜け出した。
 廊下に出るとふらふら携帯を耳に当てて屋上へ向かう佐々木の姿を見つけて恋は後を追った。

「......うん、わかった。じゃ...またその日に、うん。家族にもそう伝えておいて。」
 無表情で佐々木はそう話して電話を切るとドアの隙間からこっちを見ている恋の方に顔を向けて笑って「こっちおいでよ!」と恋を呼んだ。
「わっ...!」
 覗いていたのがバレていたのに驚いた恋は大きな声を出して申し訳なさそうにベンチに近づき佐々木の隣に座った。
「ごめん...立ち聞きしたかったわけじゃなくて、暗い?内容そうだったから声かけていいものか悩んで......。」
「...うーん......なんでそう思ったのー?」
「電話の相手見た時の佐々木くんの表情もそうだしさっき話してる時の佐々木くん...いつもとは全然違ってたから。でも話は聞いてないから安心してほしい...プライバシー保護は保たれてます!」
 恋の話に佐々木は明るく笑って頭を撫でた。
「俺のこと心配になって来てくれたんでしょ?ありがと、よく見てんねぇ~...やっぱいい子だわ芦野くんって。あいつと別れたらそん時は俺と付き合おうぜ!」
 冗談混じりに話す佐々木に恋はあたふたしながらも「何言ってるんだ~!」と軽く肩を叩いて笑った。
「元カノの妹からの電話だよ。」
 佐々木は苦く笑って呟くと驚いて顔を上げた恋にゆっくり話を続けた。
「中学ん時、入学してすぐ仲良くなった奴で気づいたら一緒にいるのが当たり前になっててさ。一年の終わりに俺が告白して付き合ったんだ。二年の途中くらいからだんだん喧嘩が増えてきたタイミングで俺ちょうど進路のことで悩んでてさ。ストレス溜まってた俺は八つ当たりで彼女にキレてもうお前とは話したくないって言っちゃったんだ。」
「そ...うなんだ......。」
「......で、そのまま本当に話ができなくなっちゃったよ。」
「...え、別れちゃったの?」
 不思議そうな顔をして佐々木に聞く恋に首を振って苦しそうな顔で佐々木はポケットに入っていた紅いシミのついた古そうなお守りを恋に見せた。
「その喧嘩した日、彼女が車に轢かれて。目を覚ますことなく眠ったよ。...その轢かれた時一緒に居たんだ、俺。言い合いになってキレて先に行こうとした俺を追いかけた彼女に信号無視の車が突っ込んだんだ。」
 佐々木の言葉に言葉を失い呆然とする恋を見て佐々木は繕うように笑った。
「なんかすげぇ暗いになったな!わりぃわりぃ!......これは彼女がまだ意識ある時に俺にくれたお守りなんだよ。これ渡して最後にごめんって言い残してそのまま眠りについた...これ後ろに俺の名前書いてあるんだよ..馬鹿だよな、。こんな奴のためにこんなの手作りしてさ。......本当はさ、そん時俺も謝りたかったのにそんな時まで変なプライドが邪魔して最後まで素直にごめんもありがとうも言えなかった。後からこんな後悔しても届かねぇのにな。」
 そう言って辛そうに下を向く佐々木のお守りを持つ手に恋は自分の手を被せた。
「......佐々木くんは素敵な人だよ。それにその彼女さんも...時が経ってるのに今もこうしてそのお守りずっと肌身離さず持ってることだってきっと喜んでると思う。...言葉って思ってるだけじゃ伝わらないって言うけど、僕は違うと思うなぁ。時には感じ取ることも大切だと思う...彼女さんも佐々木くんの表情とか仕草できっと感じ取ってくれてたと思うよ?じゃなかったら息引き取る前にそんなお守りなんて渡してないよ...。」
 自分のことのように泣きながら笑って話す恋を見て驚きつつ佐々木も一掬の涙を流した。
「佐々木くんはとても格好良くて優しくて人を思いやることができる素敵な人です。それは僕が保証します...お前が何を言ってるんだって思うかもだけど、佐々木くんが自分を責めるなら僕はその度に何十回だって佐々木くんのいいところを話すよ。頼りないかもだけど、僕は何度も佐々木くんに救われたから...僕も佐々木くんが助けてほしいって時は絶対に助けるよ。」
 ボロボロ涙を溢しながら話す恋に「なんで芦野くんがそんな泣いてんの~」と言い佐々木は恋の頭を撫でそのあと恋を強く抱きしめると、大きく息を吐いて「ありがとう。」笑みを浮かべた。

「お見苦しいところをお見せしてすみません。」
 落ち着きを取り戻し、恋が佐々木に言うと佐々木は恋を抱きしめていた手を離した。
「やべ~、俺絶対あとで赤城に刺されるわこれ...めっちゃ芦野くんの抱きしめちゃってたし。」
「いや...僕が泣いちゃったせいなのでその時はもう盛大に僕にせいにしてください......。」
「盛大にしていいの?!めっちゃおもろいな!あ~...赤城が芦野くんのこと好きな理由めっちゃわかっちゃったなー...芦野くんの安心感えぐいわ。」
 佐々木の言葉に理解していないようで恋が首を傾げると佐々木は「その鈍感さもまたクるわ。」といつものように笑った。
「うん...やっぱり佐々木くんはそうやって笑ってる方が似合ってるよ!格好いい!」
 キラキラした瞳でそう話す恋の背後に立つ赤城を見て佐々木はニヤニヤして「じゃ、俺と赤城ならどっちが格好いい?」と聞いた。
「あっ...えっと、どっちも格好いいと思う......でも佐々木くんは男の僕でも憧れるって意味の格好良さで、赤城の方は...恋愛的な方で好きって意味の格好いい、かな。って...なんで僕こんな真面目に答えてるんだろ恥ずかし...」
「もっと詳しく俺の格好良さについて話してよ。」
 突然後ろから声をかける赤城に驚いて恋はビクッとして後ろを振り返った。そんな恋と赤城を見て佐々木は笑って立ち上がった。
「じゃ、赤城も帰って来たことだし俺はお先に退散しときますわ~!芦野くんマジでありがとね、また教室でねー!...あ、赤城。芦野くんの抱き心地って最高だな!!」
「......は!?おい待てお前。」
 最後に爆弾を投下した佐々木に赤城は声をかけるも、佐々木は無視して上機嫌で降りていった。赤城はため息をついて恋のそばによると恋を抱き寄せた。
「......うん、確かにあいつの匂いするわ。君は誰のモノなんですかねぇ~?」
「んっ...僕はあ...かしの...。」
「じゃ、そう易々と抱きしめられちゃダメでしょ?...って言ってもきっとなんか理由あったんでしょ。俺も今日は恋に嫌な思いさせちゃったんで、ここはおあいことしましょう。」
 優しく包まれる腕の中で赤城の話に頷いて恋は顔をあげた。そして顔を近づけると自分からキスをした。唇が離れると同時に赤城からもう一度キスをされて拒むことなく恋はそれを受け入れた。

「僕らも教室戻...る?」
「うん、戻ろっか。」
 そう言ってしばらく屋上で抱き合った後、思い出したように二人は屋上を出た。屋上からの階段を降りている時に恋がハッとして赤城の手を掴んだ。驚いて立ち止まり、「どうしたの。」と言う赤城に向かって恋は顔を赤くし辿々しく口を開いた。
「あ、あのさ...さっき職員室から帰ってる時に言おうとしたことなんだけどタイミング的に言えなかったから今言おうかなって思ったんだけど...。」
「うん、なになに。」
「......あの...僕ね、あ...かしが言ってた気持ちの整理ってやつ。...もうちゃんとついてる...ます......。だからその...えっと、赤城のタイミングに合わせるので...、きっ...キスのその先まで教えてもらえたら...うれし......いです。」
 恋は勇気を出し、最後まで言い切ると不安そうに目を開けて赤城を見た。そんな赤城は魂が抜けたようにどこか遠くを見つめていた。
「え...っと、赤城......?」
「...あ、ごめん。ぼーっとしてた。うん、その先ね。また今度教える。」
「うん!ありがとう!」
 赤城から返事をもらい、安心したように恋は肩を撫で下ろすと満足そうに微笑んでまた歩き始めた。その隣で赤城は、何か思い詰めたような表情をしながら恋と一緒に教室に戻った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夜が明けなければいいのに(洋風)

万里
BL
大国の第三皇子・ルシアンは、幼い頃から「王位には縁のない皇子」として育てられてきた。輝く金髪と碧眼を持つその美貌は、まるで人形のように完璧だが、どこか冷ややかで近寄りがたい。 しかしその裏には、誰よりも繊細で、愛されたいと願う幼い心が隠されている。 そんなルシアンに、ある日突然、国の命運を背負う役目が降りかかる。 長年対立してきた隣国との和平の証として、敵国の大公令嬢への婿入り――実質的な“人質”としての政略結婚が正式に決まったのだ。 「名誉ある生贄」。 それが自分に与えられた役割だと、ルシアンは理解していた。 部屋に戻ると、いつものように従者のカイルが静かに迎える。 黒髪の護衛騎士――幼い頃からずっと傍にいてくれた唯一の存在。 本当は、別れが怖くてたまらない。 けれど、その弱さを見せることができない。 「やっとこの退屈な城から出られる。せいせいする」 心にもない言葉を吐き捨てる。 カイルが引き止めてくれることを、どこかで期待しながら。 だがカイルは、いつもと変わらぬ落ち着いた声で告げる。 「……おめでとうございます、殿下」 恭しく頭を下げるその姿は、あまりにも遠い。 その淡々とした態度が、ルシアンの胸に鋭く突き刺さる。 ――おめでとうなんて、言わないでほしかった。 ――本当は、行きたくなんてないのに。 和風と洋風はどちらも大筋は同じようにしようかと。ところどころ違うかもしれませんが。 お楽しみいただければ幸いです。

【完結】毎日きみに恋してる

藤吉めぐみ
BL
青春BLカップ1次選考通過しておりました! 応援ありがとうございました! ******************* その日、澤下壱月は王子様に恋をした―― 高校の頃、王子と異名をとっていた楽(がく)に恋した壱月(いづき)。 見ているだけでいいと思っていたのに、ちょっとしたきっかけから友人になり、大学進学と同時にルームメイトになる。 けれど、恋愛模様が派手な楽の傍で暮らすのは、あまりにも辛い。 けれど離れられない。傍にいたい。特別でありたい。たくさんの行きずりの一人にはなりたくない。けれど―― このまま親友でいるか、勇気を持つかで揺れる壱月の切ない同居ライフ。

【完結】俺とあの人の青い春

月城雪華
BL
 高校一年の夏、龍冴(りょうが)は二つ上の先輩である椰一(やいち)と付き合った。  けれど、告白してくれたにしては制限があまりに多過ぎると思っていた。  ぼんやりとした不信感を抱いていたある日、見知らぬ相手と椰一がキスをしている場面を目撃してしまう。  けれど友人らと話しているうちに、心のどこかで『椰一はずっと前から裏切っていた』と理解していた。  それでも悲しさで熱い雫が溢れてきて、ひと気のない物陰に座り込んで泣いていると、ふと目の前に影が差す。 「大丈夫か?」  涙に濡れた瞳で見上げると、月曜日の朝──その数日前にも件の二人を見掛け、書籍を落としたのだがわざわざ教室まで届けてくれたのだ──にも会った、一学年上の大和(やまと)という男だった。

恋の闇路の向こう側

七賀ごふん
BL
学校一の優等生として過ごす川音深白には、大切な幼馴染がいる。 家庭の事情で離れ離れになった幼馴染、貴島月仁が転校してくることを知った深白は、今こそ昔守られていた恩を返そうと意気込むが…。 ──────── クールで過保護な攻め×完璧でいたいけど本当は甘えたい受け

君が僕を好きなことを知ってる

大天使ミコエル
BL
【完結】 ある日、亮太が友人から聞かされたのは、話したこともないクラスメイトの礼央が亮太を嫌っているという話だった。 けど、話してみると違和感がある。 これは、嫌っているっていうより……。 どうやら、れおくんは、俺のことが好きらしい。 ほのぼの青春BLです。 ◇◇◇◇◇ 全100話+あとがき ◇◇◇◇◇

猫と王子と恋ちぐら

真霜ナオ
BL
高校一年生の橙(かぶち)は、とある理由から過呼吸になることを防ぐために、無音のヘッドホンを装着して過ごしていた。 ある時、電車内で音漏れ警察と呼ばれる中年男性に絡まれた橙は、過呼吸を起こしてしまう。 パニック状態の橙を助けてくれたのは、クラスで王子と呼ばれている千蔵(ちくら)だった。 『そうやっておまえが俺を甘やかしたりするから』 小さな秘密を持つ黒髪王子×過呼吸持ち金髪の高校生BLです。

そばにいられるだけで十分だから僕の気持ちに気付かないでいて

千環
BL
大学生の先輩×後輩。両片想い。 本編完結済みで、番外編をのんびり更新します。

ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる

cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。 「付き合おうって言ったのは凪だよね」 あの流れで本気だとは思わないだろおおお。 凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?

処理中です...