【完結】フィクション

犀川稔

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49話 冬休みの幕開けと僕の計画

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 長かったようであっという間だった二学期を終え、遂に冬休みを迎えた。
 今学期最後の学校を終えて僕は心を躍らせながら帰りの支度をしていた。
「芦野どうした?めっちゃご機嫌じゃん。」
「あ、仲川!あのね今日この後...」
「話し中悪い。恋、今日バイト休みだよね?俺今日バイトなんだけど、前の人が当欠でいなくて早出になったから先帰るけど心配だから家帰るまでちょいちょいL◯NE残しといて。ごめんね、また夜電話する。じゃーね。」
「分かった!早出大変だね...頑張って来てね!うん、L◯NEもしておく!」
 明るい声で恋が返すと赤城は恋の頭を撫でてから急いで教室を出て行った。
 一連の流れを見ていた仲川は赤城が去っていった後、恋に話しかけた。
「...で、今日この後なに?」
「あ、そうそう!今日このあと赤城の誕生日プレゼント買いに行くんよね。仲川にも色々相談乗ってもらったから一応報告!因みにあげるものはね...」
 恋は耳当てで仲川にプレゼントの中身を話した。それを聞いた仲川は優しく微笑んで「いいじゃん。めっちゃいい。」と言った。
「ほんと!?よかった~...悩んだ甲斐あったよ。」
「うん、それは買った後に言う台詞な?いいからはよ買い行け。」
 茶化すようにそう話す仲川がまっすぐ家に帰ると言うので駅まで一緒に行くことにした。

「そういやお前の姉ちゃんから赤城のことで母親と盛り上がってたらお前に嫉妬されたってL◯NEきたんだけど何事?」
「おい...芦野家の内情めちゃ筒抜けじゃんか~、しかも僕の忘れたい過去に話を...。」
 恋が恥ずかしそうに顔を背けると仲川は呆れたように笑った。
「...ってか話変わるけど、いつもお前らって家で遊ぶ時何してんの?」
 突然の仲川の話題の振りに驚いて恋はあたふたした。その後少し考え込んだ顔をした後、口を開いた。
「ん~...ゲームしたり赤城が勧めてくれた本読んだり一緒に映画観たり...とかかな。あと極たまにリビングで過ごす時あるんだけど、その時はご家族の人と話したりもしてる!」
「そういやこの前ゲームがどうのこうのって話してたなー。そんな感じなんだ。」
「うん。仲川は?彼女とどんなことしてんの?」
 恋が不思議そうに聞くと仲川は「俺の話はいいよ。」と言ったあと嬉しそうに話を待つ恋を見て面倒くさそうに答えた。
「...あんま家では遊ばないよ、向こうがアウトドア派だからカフェ行ったり買い物したりが主流かなー。」
「え、意外...仲川インドアじゃん。外でデートしてるの想像できないわ。」
「そりゃ向こうがそっちの方がいいって言うなら合わせるよ。俺はこう見えて利己主義な男じゃないんでね。」
 仲川はそう言って電車に乗り込むと、訝しげな面持ちの恋を見て首を傾げた。しばらくしてため息を吐くと、恋は仲川の肩を叩いた。
「なぁな、あのさ...どうやって誘えばいいの?......あ、ちょっとディープな話になるけどさ。」
「...うん、話す順逆な?いきなりすぎて心の準備ができてなかったわ。」
 そのタイミングで下車する駅に着いてしまい、恋は答えが聞けないまま仲川と別れて電車を降りた。「はぁ。」と肩を落とし、ショッピングモールの中を周回していると仲川からL◯NEが届いた。
「この前同じこと赤城にも相談されたけどあいつはど直球に誘われたいって言ってたぞ。」
 そのL◯NEを見て恋は安心したように微笑んだ。
 この前の赤城と仲川の会話を聞いて落ち込んでないって言ったら嘘になる。めちゃくちゃに悩んだしへこんだし、なんなら即寝が特技な僕なのに2日間くらいは夜の寝つきが悪かった。でもそんなことでしょげていたらキリがない。それに仲川は大切な友達だ、僕の悩みにだっていつもこうやって親身になって聞いてくれるしアドバイスまでくれちゃう......だからこそ、この前嫉妬して八つ当たりまでしてしまいそうになったことが申し訳ないし恥ずかしすぎて禿げてしまいそうだ。その罪滅ぼしとしてなんとしてもこの赤城の誕生日デートは成功させなくては...!
 恋はそう心に誓い仲川に返事を返すと、気持ちを切り替えてプレゼントを選びに回った。

「いいのが買えてよかった~!」
 プレゼントを買い終えてウキウキで駅に向かっている途中で夕立に襲われ、恋は急いで近くにあった薬局に行き雨宿りをした。
 薬局に売っていた傘を買おうとレジに並んでいるといきなり肩を叩かれた。
「芦野くんじゃん~。こんなとこで会うなんてすげぇ偶然だわ。」
 イヤホンを外しながら話しかける新山に恋は嬉しそうに笑って返した。
「え、新山くん!なんでこんなところにいるの!?家こっち方向じゃないよね?」
「うん、仲良い先輩んとこ遊びに来ててね。この後千隼と会うから先抜けて来たとこ。」
 そう言って傘を買った恋の後に新山も会計をした。何気なく下に目をやった恋は、レジに置かれた二箱のコンドームを見て困惑し顔を背けた。そして気まずそうに少し離れたところで新山を待つと「お待たせ。」と言って近づいてきた新山に赤くなった顔を向けた。
「待っててくれて嬉しい。帰るなら駅まで一緒に行こうぜ...ってどうしたの、その顔。」
「あ...えっとっ、なんでも...ないです。」
 恋が買った傘をさすと「俺も入れて。」と言って新山も恋の傘に入った。その後あたふたしつつも頑張って話をする恋を見てクスッと笑って新山は口を開いた。
「さっきから動揺してんのってもしかしてこれのせい...?」
 薬局の袋を見せながらそう話す新山に、恋は分かりやすく反応して首を縦に振った。
「あーやっぱり?ってか俺荷物これだけだし傘持つよ。気づくの遅くてごめんごめん。...芦野くんはこう言うことのするのってまだ抵抗ある感じ?」
「こう言うのって...その、えっちなこ...と、ですか?」
「そーそ。この前も赤城にカマかけられてたっしょ?職員室の帰りだっけか、確かそん時。あいつもわざとだろうけど芦野くんそっちの話だと思ったべ?」
 恋は少し戸惑ったように目を泳がすと、それを見た新山が「やっぱりなー!」と笑ったのに対して心を開きやがて口を開いた。
「て...抵抗はない...ただ、経験がないから...どう言う流れでそうなるのかがわからなくって、それに...初めてだと、み...身が重いらしいし......。」
「...その身が重いってなに情報?」
「この前赤城が仲川に話してて...。身が重い、流石にクるって。多分それ僕の話なんじゃないかな。」
 恋の話を呆然と聞いていた新山は「あー...」と身に覚えがあるような反応をした。
「あのさ、それ多分芦野くんの勘違いだと思うわ。...あー、このアホすぎる勘違いってやってんの俺らだけかと思ったけどやっぱ他でも起こることなのか。ヤバ、おもろいな。」
「...?新山くん、どう言うこと......?」
「んーなんでもない。こっちの話...いや多分ね、それ俺の経験談で言うと身が重いって言うのはつまり、相手の初めてを俺なんかがもらっちゃっていいのーやばー嬉しい超感動!ってことです。んでもってクるって言うのも、勃ちそうやべー興奮する!って言う意味だわ。これ全国共通の辞書の引用だから間違いない。」
「...っ、そ...うなんだ...。えっと...じゃ、安心してもいい...のかな、。」
 反応に困ったようにあたふたする恋を見て新山は声を出して笑って恋のことを優しく見つめた。
「うんこれは初心すぎて赤城じゃなくてもクるわ...今度いつ赤城と泊まりすんの?んでも親いるとそういうのする時色々気使うよなー。」
「あ...えっとね、来週末赤城の家に泊まりに行く!なんかその日家族みんな外出してるって言っ...て...て。...っ!?え...、あ。そういう意味で赤城......。」
 今になって赤城の意図を理解した恋はまた顔を赤くして控えめに佇んだ。
「へ~!あいつもその気ってことじゃん。いいね、また後日感想聞かしてよ!」
「かっ感想!?え...あ、な...なんか...し、下準備とか...した方がいいものなんでしょうか!?」
 慌てふためく恋に他人事のように笑って返すと新山は買ったコンドームのパッケージを開けて中から一つ取り出して恋に渡した。
「下準備って言うか知らんけどやっぱこういう備えは大事なんじゃない?それ一つあげる。一個で足りるかは微妙だけど...と言っても赤城はもう用意してんだろうけどね~。」
 新山からそれを受け取ると恋は恥ずかしくなり咄嗟にプレゼントの袋にしまった。

 駅に着くと「色々ありがとうございました!」と恋は頭を下げ改札を出ようとした。そんな恋の背中に「あ、ねぇ!」と新山が声をかけてまた近づいた。振り返った恋の耳を借りて新山は小さな声で伝えた。それを聞いた恋は安心したような顔をして嬉しそうに微笑んだ。
 別れて家に向かって歩いていると恋は思い出したように携帯を取り出して赤城に連絡を入れた。すっかり雨も止んで辺りが暗くなりかかる中、恋は軽い足取りで家に帰った。
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