【完結】フィクション

犀川稔

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49.5話 バイトに行った赤城

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減っていた商品を取りに裏に行くと赤城は黙々と作業をした。普段は適当に行う業務を赤城がいつになく丁寧にこなしていると、それを見ていたシフトが一緒になったフリーターの女性が声をかけた。
「赤城くん...今日はこの時間から来てくれてありがとう~!一人になるかもって店長に言われてたからすごく助かった!それに赤城くんの仕事丁寧だし...あっ、予定とか大丈夫だったの?」
「あ、はい。明日から休み入るんで学校も短縮日課で。特に支障はないっすね。」
慣れない人との会話にぎこちなく返す赤城とは裏腹に、女性は嬉しそうにしていた。
「あ、名前...私有沙ありさって言うから...好きに呼んでもらって大丈夫だからね!年齢も赤城くんの2個上だから近いしタメ口で全然OKだから...!」
上目遣いで話をする彼女の胸元についた「吉田」と書かれた名札を見て赤城は口を開いた。
「いやでも一応吉田さんの方が歳もここ始めたのも先輩なんで...敬語のままで大丈夫っす。それよりこの在庫って...。」
まだプライベートな話をしたそうな彼女に気を止めることなく仕事の話を始める赤城に不満そうな顔をして用を済ますと女性は離れていった。その後だんだんといつもの出勤時間に近づいてくると若い年代のお客さんが増えてきた。
「店員さんイケメン~!ここ何曜日居るんですか?」
「あー...固定シフトじゃないんでわかんないっすね。」
会計中に制服を着た学生に絡まれるも赤城は素っ気なく返した。
「連絡先とか...教えてもらえますか?」
「そう言うのうち禁止なんですみません。」
「え~...バレなければよくないですか~!?多分他の人とかみんなやってますよ!」
なかなか引かない客にイライラしていると、普段同じ時間一緒に働く佐藤が出勤して来てレジにいる赤城に近づいてきた。
「バイト中のナンパはダメっすよー!それにこいつめちゃ溺愛してる恋人いるんで絶対靡かないっすよ!そんなやつよりは置いといて俺にしときましょうよ!」
ヘラヘラ笑って助け船を出す佐藤にその客が離れていってから「いいやつ風だな。」と、赤城が薄く笑みを浮かべて言った。
そんな二人に時間になって先に上がった吉田が話しかけた。
「赤城くん、ほんと今日はありがとう!今度お礼がしたいんだけど一緒にご飯でもどうかな。」
「店長から早く来た分の時給は上げるって言われてるんで大丈夫っすよ。それに飯も、恋人がそう言うの嫌がるんですみません。」
赤城はモジモジしながら話しかける彼女を切り捨てるように冷たいトーンで言い放った。その言葉を聞いて吉田は悲しそうに「そっか。」と言い、走って店を出ていった。二人にやり取りを見ていた佐藤は頭を抱えて赤城の肩をポンッと叩いた。
「お前さ、もっとこう...上手に断れよ。そんなはっきり言ったら有沙ちゃんのメンタルズタボロよ?」
「思わせぶりは余計傷つくだろ。話し早い方が傷も浅いし恋人にも変な誤解されずに済むわ。」
冷静に話をする赤城の話を理解できていないように首を傾げるとぶつぶつ言いながら佐藤も作業を始めた。

「いいなーモテメンは。いるだけでそんなホイホイ声かけられるんだもんなー。」
「...そんな声かけられてねぇだろ。それにそう言うのいいから仕事しろ。」
「前に悩んでた恋人とはまだ別れてねぇの?」
全然話を聞かずに話を切り出す佐藤にため息を吐いて「付き合ってるよ。」と面倒くさそうに赤城は返した。その時、外で大雨が降って来たことに気づきガラスに近づいた。
「うわー、これはすげぇな。帰る時は止むか~?」
「ただの夕立だろ。通るだけだからすぐ止むと思うよ。」
佐藤の話にそう返すと赤城はトイレと称し個室に入るとL◯NEを確認した。まだ恋からは帰ったと連絡が入っていなかった。無事に帰れているのか不安になり「今どの辺?」とメッセージを入れ、バイトに戻った。
「そういやあれからもう抱いた?」
突拍子もなく突然話を振ってくる佐藤を呆れたように赤城が睨んで見ると佐藤は笑って「でどうなの?」と追い討ちをかけるように聞いた。
「...まだだけど。」
「いや遅ぇな!まだ進展ねぇのかよ。つまんねー!!」
馬鹿にしたように笑った後、裏に物を取りに行こうとする佐藤の背中に向かって赤城が「触ってはもらったけど。」とサラッと言うとそれを聞き逃さなかった佐藤が赤城に詰め寄った。
「おいおいおい!そういうおいしそうな話は先にしろってことよ!なになに、それ詳しく!」
急に食いついてくる佐藤を怠そうに適当に遇らうと赤城は品出しを始めた。
...今日どっか寄るとか言ってなかったよな...?単に連絡忘れてるだけ説?いや、今まで駅着いたってL◯NEから、家着くまで教えてくれてたしなんなら着いてからも何してるとかのメッセージちょくちょく来てたよな?え、飽きたとか?この前もう気持ちの整理ついたとか言ってたけど、いつからついてたんだ...?もしかしてついてたのに俺が手出さないから萎えたとかそんな感じ?まじか、えー...なにこの虚無感。
迷想しながら黙って作業をしているとたまたま通りかかった佐藤が赤城の姿を見て驚いて声をかけた。
「何してんの!そんな同じ商品ばっかアホみたいに並べんなよ。混ぜろ他のやつも。どうした、そんな死んだ魚みたいな目して...。」
佐藤の呼びかけでハッとして棚を見ると、他の商品の列まで無意識に同じ物を並べていた。ため息を吐いて回収していると心配した佐藤が「話なら聞いてやってもいいぞ。」と励ますように言った。それに対してお前じゃ役不足だ、と言わんばかりの顔をした後赤城は佐藤や周りから言われたことで頭をめぐらした。そして一つ結論を出したように佐藤の手を取ると握手をした。
「佐藤サンキュ。俺決めた...来週会った時抱くわ。」
「お、おう!......ん?...は?まじ?お前ほんとどうした?」
赤城は佐藤の返事を聞かぬまま作業を終わらすと他の業務をこなした。

上がりの時間になり着替えを済ますとさっさと携帯を手に取り帰路に着いた。恋からは5件来ていて、学校帰りに買い物に行っていた事と大雨が降って雨宿りしていたこととその時に新山にあった事。そして家に帰った事と数日後に控えるクリスマスデートを楽しみにしていることが書かれていた。
安心したように息を吐くと赤城は恋に電話をかけた。待っていたようにワンコールで電話に出る恋に赤城は電話越しに微笑みかけ、バイトの話やたわいもない話をした。家に着いてもしばらく電話を繋いでいると眠くなったのか恋の寝息が聞こえて来た。その声に「好きだよ、おやすみ。」と声をかけると静かに電話を切った。
お風呂から上がり自分の部屋に戻るとただひたすらに来週の泊まりのことを考えた。
「...そこまではまだいかないだろうし必要ないかもだけど...念のため......うん一応、ね。」
そして思い立ったようにオンラインで来週の土曜に間に合うよう、ローションとコンドームを購入した。
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