【完結】フィクション

犀川稔

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51話 僕らのクリスマス①

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 目を覚ますと部屋には僕以外誰も居ないはずなのに寝息が聞こえた。携帯を見ると赤城との電話が繋がっていて、僕は動揺した。しばらくするとガサゴソとした音がしたあと、寝起きの赤城の声で「おはよう。」と声をかけられた。
「あ...電話。繋がってた!」
「うん...、もし朝まで繋がってたら恋がどんな反応するかなって思って。先に起きようと思ってたのにやらかしたわ。」
 好きな人の声を朝一から聞けるなんてどんなご褒美なんだ...。
 赤城の声を聞いてうっとりしている恋に、さっきから黙っている恋が気がかりになった赤城が「恋?」と聞いた。
「...あっ、ごめん!嬉しかったから...余韻に浸ってた。もし赤城の気が向いたらでいいからまた朝まで繋いでてほしい...かも。なんか赤城が隣にいるみたいで、いいな...って。」
 震えた声で話す恋に赤城はクスッと笑った。
「じゃ、同棲でもする?」
「...へっ!?」
「冗談だよ。まだ俺ら高校生だからできないし...そのうち、ね。」
 悪戯にそう話す赤城に恋は恥ずかしそうに「する...。」と答えた。
 その後、シャワーを浴びるからと赤城から言われて電話を切った。
「また後で迎え行くね、会えるの楽しみにしてる。」
 そう優しい声で話す赤城の言葉が電話を切ったあと何度も脳内でリピートされ、僕は謎にキュンとした。

 支度を済ませて携帯を見ていると、広告が出て来て「カップルにおすすめイルミネーション」の記事が流れてきた。何気なく進んでページを見ていると通り全体、綺麗にライトアップされた素敵な場所とクリスマスツリーが流れてきた。今日の行き先を教えられていなかった為その場所が今日行くところの近くなのかもわからなかった。一度でもそういうカップルで行くような素敵なところに行ってみたいと憧れは持っていたけど、あの格好良い赤城が僕とクリスマスを過ごしてくれるだけでも奇跡なんだからそんなわがままは言ってられない。それに僕らは男同士だし......。
 恋はそう思ってため息を吐いた。と、同時に赤城からL◯NEが入った。
「恋、××駅まできたけど人身事故で電車止まってる。恋の最寄り何時に着くかわからないから見込み立つまで寒いし家で待ってて。本当ごめん。」
 そのL◯NEからでも申し訳ない赤城の気持ちが伝わってくる。
「大丈夫だよ!わかった!またわかったら連絡して!」
 恋は最大限の気持ちを込めて赤城が罪悪感が出ないように返した。
 1時間以上経っても連絡が返って来ずにどうしたのか心配していると家のインターホンが押された。恋が出るとそこには赤城が立っていた。
 驚いて急いで表に出ると顔を見て安心したように赤城が笑った。
「!?なんでなんで!ネットで運行情報見たらまだ動いてないって...。」
 恋は走って駆け寄り赤城の袖を掴んで真剣に話すと赤城は恋の頭を撫でた。
「うん、だからタクシーで来た。やっぱ早めの判断大事だわな、俺の後の列えげつなかったべ。」
 笑ってそう話す赤城を見て恋は嬉しそうに微笑んだ。
「そんな...そこまでして急いでくれなくてもよかったのに......。連絡なかったから心配した...でも早く会えてすごく嬉しい。」
「先に言ったら恋絶対そこまでしなくていいよって言うと思ったからさ、だから言わないでここまで来てみたよ。」
 ...ほら!そう言うところ...いちいちキュンキュンしちゃうし心臓がもたないよ。しかもなんかいつもより赤城が輝いて見えるし服もセットアップって...カッコ良すぎる。
 固まって動かない恋に首を傾げて赤城が「恋?」と声をかけた。
「あ...、大丈夫。ちょっと意識失いかけてた。」
「今日朝の電話の時からぼーっとしてるけどなんかあった?」
「なんもない!ただ赤城かっこ良すぎて思考回路停止してただけだし今すぐ抱きしめてほしいって思ってただけだから気にしないで!」
 早口でそう話す恋を見て赤城は愛おしそうに見つめた後腰に手を回し抱きしめた。恋は嬉しそうに微笑むと同じように手を背中に回して抱きしめ返した。

「ってことで見た感じまだ電車見合わせまくってるから、バスでここまで行ってそっから電車に替えて~って感じで回避して行こうと思います。」
「はい!了解です!」
 駅前のバス停に向かいながら歩いている時、赤城から携帯を見せられながら恋は説明を受けた。行き先の場所を見るとそこは今日見ていたイルミネーションの最寄りの駅だった。
 それを見た恋が咄嗟に「あっ...。」と声を出すと赤城からどうしたのか聞かれた。
「あ...えっと、そこの近く...イルミネーションやってるって今日ネットで見て......それで。」
「うん...それで?」
「えっと...だから、い...行ってみたいなぁ~......って。」
 ぎこちなく話す恋を見て赤城は声を出して笑った。
「...恋さん可愛すぎね?欲出すの下手すぎてそこがえぐいかわいい。...行くよ。予約してるディナーの場所もそこからそのイルミネーション見えるし...外寒いから恋が嫌ならそこから見るだけにしようって思ってたけど、一緒に行ってくれるなら写真撮り行こうよ。」
 そう話しながら僕を見る赤城は優しく微笑んだ。
 行きたいと思っていたイルミネーションに行けるだけで嬉しいのに、夜ご飯の予約までしてくれてたなんて...。
「ありがと...イルミネーション行ったことなくて...赤城と行ってみたかったからすごく嬉しい。夜ご飯も決めてくれてたの知らなくて......全部任せっきりでごめんね...。」
「全然いーよ。クリスマスはどこも予約しないと入れなかったりするからさ。俺が勝手にやったことだから謝んなくていいんだよ。それに...」
 赤城は恋を落ち込ませないよう、そう答えながら顔をあげると呆然とこっちを見て悲しそうな顔をする恋の表情が視界に入った。びっくりしてなんと声をかけようと考えていると、恋が別の話題を振って来てそのまま話が逸れてしまった。

 普段より遠回りになり、時間もかかってしまったけどなんとか昼過ぎに目的地に到着した。予定していた水族館までの時間も時間だったので食事というよりかは休憩を兼ねてカフェに入った。
 店内はカップルが多くて僕は少し恐縮してしまった。ふと赤城の方をみると周りを特に気にすることなく何気なくソファ席に僕を座らせるとをメニューを手に取り僕に渡してくれた。店員さんが持って来てくれた水がメニューを見ていた僕の手に引っかかりそうになるとすかさず赤城は手を伸ばして遠くに除けてくれた。普段はそこまで気にしていなかったけど来る途中の話がひっかかり、そこから赤城の細かな気遣いにまで目が行き届いた。
 そして多分、僕が今こうして気にしていると言う事も赤城は気づいてると思う。僕はよく周りが見えているって赤城は褒めてくれるけどそれは赤城もで、僕の少しの変化にも気が付いてくれるから、きっと今も僕が話し出すのを待ってくれているんだ。
「嫌な事あったり気になることあったらその場で言ってほしい。」
 赤城に言われた言葉を思い出した。口に出すのは恥ずかしいけど言わないと約束を破ることになっちゃうから...。
 僕がキャラメルラテとココアラテで悩んでいると、赤城が店員さんを呼んでその二つ注文してくれた。
「どっちも飲んでみて気に入った方飲みなよ。俺はどっちでもいいから。」
 笑ってそう言うと昨日の佐々木くんたちと出かけた時に撮った動画を僕に見せてくれた。
 そんな赤城を見て僕は決心し、赤城の携帯を持つ手に自分の手を被せた。

「あ...あのさ赤城。さっきの話なんだけど......。」
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