【完結】フィクション

犀川稔

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67話 最高のプレゼント

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「は~い、そこの馬鹿供~!さっさと教室戻ってこい!」
 二人が向かい合わせで話をしていると勢いよくドアを開けて佐々木が入ってきた。
「お前タイミング悪すぎ。空気読めや。」
「あ、佐々木くん!ごめん、今戻る!ほら赤城...行こう?」
 恋から答えが聞けぬまま遮られ、不機嫌でいる赤城の手をあたふたしながら恋が引っ張り起こした。
「芦野くんは聞き分けのいい子だね~!...おい赤城。俺のおかげで仲直りできたんだろなんだその言い方は、敬え俺を!...で?なんの話してたん?」
 理科室前まで出てきた赤城にニヤニヤして聞いている佐々木くんと嫌そうにしている赤城。そんな二人がまだ中で立って立ち尽くす恋を見て「どうした?」と聞くとその瞬間、恋は赤城の元まで走って来てそのまま抱きついた。
「...えっと、恋さん?どうしましたかね。」
「......するっ、同棲...する!卒業しても一緒にいたい...。」
 そう言うと恋は赤城の顔を見て嬉しそうに笑った。そんな目元からは涙が溢れていて、赤城は「ありがとう。」と言いながらその涙を優しく拭った。

 時は過ぎ、高三の三月。
 僕と赤城は無事、志望していた大学に合格した。結局赤城とは別の大学を選択したけど、赤城は僕の大学の数駅先のキャンパスを選んでくれたおかげで通学は同じ電車で向かえることができるようになった。そしてなんと、僕は佐々木くんと同じ大学で赤城は仲川と同じ大学だった。ちなみに相馬と新山くんはそれぞれ就職組として三年の夏頃から面接練習によく励んでいた。
 今日は赤城たちの大学の合格発表の日で赤城から「合格した。」と言う連絡がきたその後に、仲川からも「無事。」とL◯NEが届き僕は飛んで喜んだ。そんな僕はと言うと、学校が短縮になってからはバイトをできるだけ増やし四月からの赤城との同棲に向けてお金を貯めていた。あの日同棲をする話を持ち出されてから話はとんとん拍子に進み、赤城は僕の家まで来て家族に同棲する許可を貰いにきた。家族からは「結婚の挨拶かと思った。」と冗談混じりに言われ「その時はまた来ます。」と本気に言うもんだから、その時僕は嬉しさと恥ずかしさで溢れかえっていた。佐々木くんとも大学のことでよく連絡を取るようにもなりたこ焼きパーティーの日を境に僕もよく家にお邪魔するようになった。

「恋...もう上がりだよね?迎え来た。」
 夕方、バイトの上がり時間に合わせてカフェに来た赤城に一言言って、僕はすぐに着替えに向かった。急いで支度をして戻ると赤城は姉ちゃんと話をしていた。
「赤城お待たせ!」
「あ、恋。おかえり~お疲れ様。じゃ、帰ろっか...じゃ、先に失礼します。」
「うん!れんれんと赤城くんまたねー!!」
 そう言って姉ちゃんに手を振ると僕らはカフェを出た。
「姉ちゃんと何話してたの?」
 家に向かう途中、僕が聞くと赤城は悪戯に笑って話した。
「恋は寝相悪すぎて、よく腹出して寝てるって話と味噌汁は赤味噌の方が好きって話。」
「なにそれ恥ずいって...!それに後のはいいとして寝相は前よりはよくなったよ!」
「前は相当酷かったんだ。」
「う、うぅ...否定できない......。」
 恋が分かりやすく外方を向くと赤城はそんな恋を見て笑った。
「あ、そういや八代、彼氏できたっぽいよ。」
「え!そうなの!?」
 驚いて赤城の方を見た恋に赤城が携帯を見せた。そこには彼氏と思われる人の後ろ姿と「俺もずっと一緒にいたいと思える人と両思いになれたよ。」と言うL◯NEが来ていた。
 あの一件の後、赤城は八代くんに一度だけ会って話をし自分の気持ちを全て話した。八代くんはそれを聞いた上で納得をして、もし好きな人ができたら恋愛相談でも受けてほしいと言われてそれからは本当に普通に友達としてお互い接するようになった。そして三年の夏頃好きな人ができたと連絡を受けそこから色々と赤城は相談を受けていた。もちろん赤城はその話を僕にも話してくれていてそれは八代くんにも許可を得ていた。
「八代くんよかったね!同じ高校の子だっけ?」
「違うらしい。...あと俺の勘違いかもなんだけど多分この後ろ姿さ、中田だと思うんだけど違うかな。」
「え!?中田くんって...あの中学の時の中田くん!?え、八代くん苦手なんじゃなかったの!?」
「いやわからんけど中田はあの性格だから言うこと聞くやつ好きみたいなところあるし、八代は自分で自分のことドMだって言ってたし責められると燃えるとか歪んだこと言ってたけど...もしかしてお互い惹かれあっちゃった感じかもね。」
 冷静に話をする赤城に恋が理解できないでいると「変わった癖の持ち主もいるんだよ。」と赤城が笑って言った。

 そして卒業式も無事終え、僕らは正式に高校を卒業した。
「この一年は特に早かった気する。」
「んだよなー!まぁ大学では芦野くんの保護者するから任せとけって!その代わり、月一の集まりはお前らんちな!新山と相馬もその日は予定空けとけよ~。」
 四月頭から仕事が始まるという新山と相馬は憂鬱そうに返事をした。

 そして外に出てみんなで集合写真を撮ろうとなり「卒業式」と書かれた看板のそばで僕が赤城を探していると佐々木が恋に話しかけた。
「あいつならあっちで女子共に引っ張りだこよ。周りも諦めないねぇ~。」
 ヘラヘラと笑いながらそう話す佐々木と「芦野にも言えるけどあいつのどこがいいんだかさっぱりだわ。」と言う仲川。
「仲川、大学で赤城の監視係お願いね!」
「へいへい~、女子といちゃついてたら即写真送るわ。バカップル崩壊万歳!」
「やべー、お前やっぱ最高だな!」
 盛り上がる仲川と佐々木とは他所に、赤城のことを眺めていると女子たちと写真を撮る赤城と目があった。そしてごめん、と手を合わせる赤城を見て恋は「佐々木くん。」と悪戯に笑って佐々木の方に顔を向け口を開いた。
「久しぶりに赤城が僕に飽きてないかわかる方法、あれやって。」
 それを聞いた佐々木は大笑いして「よし一丁派手にやるか!!」と気合いをいれた。そして恋の肩に腕を回すとこっちを向く恋に顔を近づけた。その瞬間赤城が飛んで帰って来て佐々木の事を蹴りかかった。
「...お前さ。」
「はい、検証終了~。俺無罪!」
 呆れたように三人を見る仲川は静かに新山と相馬の元に向かった。
「有罪だよ死刑。執行猶予なんてやれねーわ
 。今すぐに実刑するわ。」
 真顔で佐々木に話す赤城の後ろで恋は満足そうに佐々木に向かってニヤニヤ笑みを浮かべた。
「おいおい!お前の恋人まじで悪魔だって!光に速さで裏切るじゃん。まじで性格まで赤城に似てきてるって!」
「俺の愛しの恋人を貶すな。最高に天使で可愛らしい裏表のないピュアハートちゃんだろうが。」
「おい赤城、今すぐ後ろを見ろ!ニヤニヤほくそ笑んでるその悪魔どうにかしろまじで。」
 赤城がパッと後ろを見るとふわっと笑みを浮かべて「んー?」と恋が首を傾げると「やっぱ天使が居たわ。」と答えると赤城に「馬鹿共がよ!」と罵声をあげ、それに対し一部始終を見ていたみんなが笑った。

 そしてみんなが集まり写真を撮ると恋はみんなの方を見て感極まり涙を浮かべた。それに心配そうに全員が駆け寄って慰めると恋はハンカチで拭いながら口を開けた。
「みんなと出会えて本当によかった...仲良くしてくれて、友達になってくれてありがとう。」
 恋のその言葉を聞き赤城が恋の背中を摩ると、みんなが恋を抱きしめた。

 仲川も相馬も佐々木くんも新山くんもそしてもちろん赤城も...。本当に本当にありがとう。たくさん迷惑かけちゃったしお世話になってばかりだったけどみんなと過ごしたこの二年間が僕にとって最高のプレゼントだったよ。みんなに出会えて良かった、これはお世辞じゃなく本当に...本当に。
 卒業しても月に一回みんなで僕らの家で集まる約束を立てたけどずっとずっと定期的に会えるようなそんな友達でいたいな。
 そして仲川、小学校からずっとそばに居てくれてありがとう。これからもうざいほどL◯NEするし、今度は赤城の面倒を見てもらうから覚悟しておいてよ?佐々木くん、これから大学でもよろしくね。新山くんと相馬、二人は仕事で忙しくなるけどたまには僕に構ってくれると嬉しいな...忘れないでね。
そして赤城...、これからはもっと近くで長い時間一緒にいることになるけど変わらずにずっとずっと一緒にいようね。

ありがとう、これから先もずっと愛してます。



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次回、ついに最終回となります......。
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