生涯年収

コユメ

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上田稔は上機嫌に鼻歌を歌いながら、ゆっくりと目的地まで歩いた。
そこは綺麗に整備された広い土地を目の前に笑いが込み上げて来た。

「アハハ!」

数ヶ月前まで建ってたスーパースズキは見る影すら無くなっていた。
ひとしきり笑っているとスマホが鳴った。
画面の番号を見てニヤリと笑い

「ハイハイ俺ですよー?」

軽い口調で答えるとハスキーな女の声で

「進捗はどうなっているのかしら?」

女の声に

「あれは相当キテるなー、嫁の両親が死んだって言ったら顔色が変わってたし、ありゃー絶対に俺が殺ったと思っている顔だったなー。マジ受けたわ!あれは本当に事故だったのになぁ」

馬鹿にしたように笑っていると電話の女が

「フフフ!そうね?おめでたくて、ありがたいわね?」

楽しそうに笑っている。
その言葉に多少の引っ掛かりを覚えたが女は

「それはそうと約束はちゃんと守ってね?こちらとしてはあまり待てないわよ?」

「大丈夫だろ、あんなに俺の事ビビってるんだし今回の事で結構金使っただろうよ」

「そうだと良いのだけれど?」

女の言葉にムッとしながら疑問に思っていた事を聞いてみた。

「なぁ何で、あんたはアイツに人を殺させたいんだ?」

女は、しばらくの沈黙の後

「…何故そんな事知りたいの?…もっとお金が欲しいって事なのかしら?」

その質問は、どうやら地雷だったようだ。内心ヒヤッとしたが、おくびにも出さず

「怒るなよ、ただの好奇心だよ」

「……そう、でも余計な好奇心は身を滅ぼしてしまうわよ、気を付けた方がいいわ?貴方とは、長くお付き合いしたいと思っているから」

釘を刺してきた。
内心イラッとしたが

「あー、悪かった。余計な事だったみたいだな?」

「フフ、分かってくれて嬉しいわ、その調子でお願いね、では…また連絡するわ、次には良いお知らせを待っているわ」

電話が切れた。
舌打ちし

「チッ!面倒くせーな、この女」

月村は元々俺のターゲットだった。
深夜に、うちの店に来ている時から目をつけていた。
買っていく物を見ても1人分だったから、これ幸いに後をつけて殺そうとしたのだがアパートが特定出来たのに今度はどの部屋に住んでるのか特定が大変だった。
そもそも

「本当に、ここ人居んのか?」

アパート全体に明かりも点いて無くて廃墟見たいな雰囲気だった。
そして何故かどの部屋の明かりもついてない何でだ?
俺は確かにあの大学生の後を付けた筈なのに
仕方無く2階に上がって角の部屋の前で、どうするか悩んだが、ふとドアについている郵便受けを見て、ここから覗く事にした。
ゆっくり音がしないように開けて見ると、暗くて良くは見えないが部屋の中には何も無かった。
ここは空き部屋らしく誰も住んでない…俺はこの部屋を諦めて次の部屋の郵便受けから部屋を覗くと、ここの部屋には家具は有るが住民は不在なのか居ない。
改めて表札を探したが、それらしいものも無かった。

「チッ、外れか…」

しょうがない次に行くかと腰をあげ次の部屋を覗くと、ここも家具は有るが最低限の家具しかないし人も見えない…じゃあアイツは下の階か?
なんにせよ、このアパートはそんなに人が住んで居ないみたいだ。
だったら尚にやり易くていいなと思いながら階段を降りた。
そして1階の角の部屋から

「ここも、外れ」

だんだんイライラしてきた。
アイツ本当にここに住んでんのか?
イヤでもこのアパートに入って行くのを見たが、なんせこのアパート自体玄関口が裏側で見えなかったせいで全然わかんねー。
何で、この俺がこんな無駄な事してるのか?
イライラとアイツを絶対に殺してやろうと心に決め最後の部屋を覗くと中年の男がテレビを付けっぱなしでイビキをかいて寝ていた。
近くにはビールの缶がいくつも転がっていた。
どう見てもアイツじゃないが
まぁ…コイツでも良いか、どうせ今むしゃくしゃしてるし何でも良いかとインターフォンを連打してやった。
すると男のイビキが止まり起きたようだ。部屋から怒鳴り声が聞こえる俺はポケットのナイフを持って住民の男を待った。

「今何時だと思ってる!何度も鳴らしやがって殺すぞ!」

大声で怒鳴りながらドアが開いて俺は男を確認すると、すぐさま男の首を狙って切った。

「アガ!」

男は咄嗟の事に言葉も無くうずくまった。俺の服や顔に血渋きが掛かったが…そんな事を気にせず男の髪を掴み部屋の中迄引きずり、そして身を屈め男に囁くように

「まだ…死ぬなよ?いいな?」

男は真っ青な顔で流れる血を手で押さえながらガタガタと震えていた。
俺はこの瞬間が好きだ。
後もう少しで死ぬ人間は見ていて楽しい
だが早くコイツの名前をスマホに登録しないとゲームオーバーになってしまう、このスリルが堪らないんだよなー!
おっと、そろそろまずいか?男が白目剥いて来ているし俺は急いで男の名前が分かる物を探した。
するとテーブルの上に財布を見つけ中を見るとお目当ての免許証があった。

「おーこれこれ!」

スマホを取り出し「生涯年収」起動させて登録すると直ぐに承認された。

「よし、じゃー殺るかー」

すると男は絶望した顔で逃げようとしていたのを俺は足で勢い良く踏んで手に持っていた血の付いたナイフを何度も何度も男に振り下ろした。

「ぐ!」

そして最後深くナイフを突き刺すと男は動かなくなりスマホから

「乙部昭信の生涯年収が上田稔様の口座に入金されました。」

刺していたナイフを抜きナイフをポケットに仕舞いスマホを確認して部屋から出た。

「良い小遣い稼ぎだよな全く、それにしてもあの大学生ここじゃないのか?アイツにしようと思ったのに、でもま良いか代わりが居たし」

ため息を付き改めてアパートを見ても、どの部屋にも明かりがない、まだ帰って無いという事か?
するとスマホが鳴った。
画面を見ると斉藤直美と最近入れ込んで遊んでやってる女だ。
出ると女の甘えた声で

「あー稔?私だけどー最近可愛いバック見つけたのー!今度一緒に見に行かない?」

「いーよ、分かったよ今度の時な?」

そう言うと直美は機嫌良く

「うん!分かった!予定決まったら連絡してね?待ってる!愛してる!」

そう言い電話が切れた。

「ウゼー!この女飽きて来たし次はコイツにするか」

俺は帰り道、南公園に入りトイレで血の付いた顔を洗った。
そしてマスクと帽子とナイフをゴミ箱に捨てて家に帰った。
それから何度かあのアパートを探ったが、やっぱり月村らしい住民は見当たらず終いには月村をスーパーでも見なくなり俺は仕方無く諦めたのだが、ある日偶然大学で会った。
月村は俺を見て酷くビックリしていた。
それから俺はそれとなく月村の家を探ると、お金がない学生らしく友達とのルームシェアの話でもう無理だと諦めた。
リスクを追って迄する事じゃないしと月村の事を諦めたのだった。



あの朝
美憂が真っ青な顔で俺の服を握りしめ

「稔、どうしよう…お父さんとお母さんが…今事故で…死んだって…電話が…!」

美憂は錯乱して俺にすがり付き泣いていた。
泣いている美憂を冷めた目で見ながら、そう言えばアイツ等旅行に行くとか言ってた様な?
なんだ死んだのか?
だったら…

「可哀想にな…美憂」

美憂は首を振りながら

「私…どうしたら?」

「ああ、そうだよな美憂が折角チケット用意したのに…そのせいで死んじゃったな?可哀想になぁ?お義父さんとお義母さん」

「え…私の…せい?」

「そうだよ?チケット用意したのは美優だろ?」

美憂は、両親にサプライズと称して俺からチケット代金を出させた。
そして自分が出したかの口調で両親に旅行をプレゼントしたのだ。
正直腹が立ったがこうなる為だったなら良いか

「私が?…」

「そうだよ?美優が殺したんだよ?」

「私が…お父さんとお母さん殺したの…?殺した…殺しちゃった!あー!」

それ以来美優は、独り言を言う様になり

「私が殺した。殺した…の」

と言い少しづつ壊れていった。
もう笑いが止まらなかった。
俺は、早速邪魔な店を閉めて売ってやった。
近所のババアからは辞めないで欲しいとか言われたが美優の事が心配だからと言うと近所のババアはしぶしぶ納得した様だったが、そもそもスーパースズキは言う程儲かって無かった。
自転車操業でいつもカツカツだったのだ。どうして、そうなっていたのかは直ぐ分かった。
美憂の両親に莫大な借金が見つかったのだ。
美優でさえ知らなかった借金だった。
調べて分かったのは美憂の両親は店を俺に任せ自分等は毎日毎日ギャンブルにハマっていたらしく店と土地を売っても足りないぐらいだった。
俺は仕方なく自分の金まで出して補填してやったのだ。
あのまま両親が生きていればもっと借金が増えていたかと思うとゾッした。
まぁでも、それはそれで殺したかもしれないが今の俺は日々充実していた。
もう美優が男遊びする事もなく家で茫然自失としている美憂をじっと見て楽しんでいたが、それでも借金は一向に減る様子も無く返済に追われていた。
ある日スマホに見知らぬ番号から着信が合った。
なんだと出ると聞いた事が無い女の声だった。

「こんにちは?」

「誰だ?」

「フフ、警戒しないで?私は貴方の見方よ?」

「何言ってんだ?」

「お金困っているのでしょう?」

「…誰から、聞いた?」

「私のお願いを聞いてくれたのならば、貴方の借金無しにしてあげる」

「一体どこから、そんなガセを聞いたか知らないが、金に困ってない、他を当たれ!」

言うと女は

「良いのかしら?私のお願いを聞いてくれるだけで借金無くなるのに?」

「嘘言ってんなよ?」

「嘘ではないわ試しにいかがかしら?貴方にとってデメリットは無い筈よ?」

「…本当なんだろうな?」

「それは、了解と取っても良いかしら?」

「ああ、あんたが言って事が本当なら借金がチャラになるんだろう?ならやってやるよ」

「そう?少し待って頂戴手続きをするわ……今完了したわ確認して頂戴?」

俺が電話を切って弁護士に連絡すると弁護士は

「良かったです!今連絡しようと思ていたんです。上田さん貴方の借金なんですが、いきなり相手様が返済済みとの連絡が来たんですよ!何が合ったんですか?」

電話口で弁護士が興奮して何か言っていたが、もうそれどころじゃないと電話を切ると、直ぐにまた女から電話が鳴った。
ゴクリと唾を飲み込み通話を押して

「信じて貰えて嬉しいわ、それで貴方へのお願いは」

「誰を殺せば良いんだ?」

食いぎみに聞くと女は

「貴方は誰も殺さなくて良いの」

「俺は?」

「ええ、こちらから指定する人に人を殺させて欲しいの」

「それだけで良いのか?」

「それだけよ月村圭と言う人物に人を殺させて頂戴」

「そんな事で良いのか?いいぜやってやるよ」

「フフ!ありがとう、やり方は貴方にお任せするわ」

「ああ、分かった」

安請け合いしたが、これが中々大変だった。
そもそも月村圭って誰だよと思っていたら良く店に来る大学生と知った時はビックリしたが気の弱そうな性格に見えたから押せばどうにかなるか?と高を括っていたが月村圭はとても警戒心が強くて正直殺す事より大変だった。
俺が考えたのが今アイツは最初に殺した奴の金を持っている
だったらその金を減らせば次を殺るんじゃ無いかと考え俺がアイツを狙っいる呈で、怯えさせてもっとセキュリティの高い所に住まわせる案の定月村は学生では到底無理なマンションに引っ越した。
こんなまどろっこしいやり方しかできないが仕方無い。
イライラとこんな事安請け合いするんじゃなかったと後悔した。





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