生涯年収

コユメ

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飲み始めて大分時間が経った頃
今まで騒いでいた岩崎が急に静かになり見るとテーブルに突っ伏して岩崎が眠ってしまっていた。
あれだけ物凄い勢いで飲んでいたら潰れるのも仕方無いなと僕は、ため息をつき岩崎を起こそうとすると

「このまま寝かしといてあげよう?月村君と私だけじゃ岩崎君を上まで連れて行くのは大変だし」

そう言われそれもそうかと、でも岩崎をこのまま放置も良くない古い建物だから少し寒い

「分かった。でも風邪引きそうだからソファで寝かせるか」

「そうだね、ソファだったら大丈夫そうだね、じゃ私ちょっと掛ける物部屋から取って来るね」

そう言うと、夢子がパタパタと走って部屋に行ってしまった。
僕は岩崎を乱暴に揺すり

「岩崎?起きろ!」

「…うん?何だ?」

むにゃむにゃと酔っぱらいながらも起きた岩崎に

「取り合えずソファ迄でいいから歩いてくれよ」

「歩く?何で?」

「いいから…」

まだ酔っぱらっている岩崎を無理に歩かせソファまで連れてきて

「ほら!ここなら寝ても良いから!」

岩崎をソファに寝かせると岩崎は途端イビキをかき寝てしまった。
僕は飽きれながら岩崎を見ていると夢子が丁度よくブランケットを手に戻って来て寝ている岩崎に掛けてくれた。

「よし!これで大丈夫だね」

「うん、有り難う夢子」

言うと夢子は首を振り

「岩崎君も寝ちゃったし、今日はもうお開きだね」

「だな、さて僕も寝る前に喉渇いたから水飲んでくるよ」

そう言い水を飲もうとキッチンに行きコップに水を注ぎ飲んだ。

「はぁ、疲れた…」

すると、後ろから

「月村君…ちょっとだけ話しても良いかな?」

内心ギクリとしたが、振り向き

「うん、何の話?」

取り敢えず僕と夢子は岩崎が寝ている部屋に戻りイビキをかいて寝ている岩崎を横目で見て、僕は一人掛けのソファに座ると夢子も僕の向かいに座った。
そしてしばらく沈黙が続いたが夢子が僕から目線を外しながらポツリとし喋りだした。

「…月村君、私の事避けてるよね?」

咄嗟に言葉が出て来なかった。
何か言わないと焦り僕は持っていた水を飲み干し

「いや?避けていないよ?」

夢子は僕を探るように見てきたが僕は何食わない顔で夢子に笑い掛けると

「…私の勘違いだった?…ごめんね」

コップをテーブルに置き内心焦りながら

「…何で、そう思ったの?」

夢子は持っていたバックを開けたり閉めたりしながら

「だって私…月村君がやりたくないって言ってる生涯年収やってるし…そうなのかなって思って…」

「別に嫌って訳じゃないよ、ただ僕は人を殺すのが怖いんだ…」

それは本当の事だ人を殺しでお金を稼ぐ事に恐ろしさを感じていた。
それが平気にはなりたくない

「でも、この前…」

言っても良いのか躊躇っている夢子に正直に

「ああ、うん本当は、やるつもりは全然無かったんだけど、…色々あって…結果ああなって」

僕の言葉に不思議そうに

「色々?不本意だったの?だったら私相談乗ったのに」

…あの事を夢子に相談したら少しでも未来は変わっていたのだろうか?
店長と奥さんは死ななかったのだろうか?分からない…

「月村君?大丈夫?疲れた?」

「え!大丈夫だよ。そっか、そうだよね…夢子に相談すれば良かったんだね…。」

そうなのか?
夢子に相談すれば?
解決出来たのだろうか、そんな簡単の話だったか?
とてもそう思えない
ふと視線を感じ夢子を見ると
夢子は悲しいような苦しそうな顔をして

「…出来なかった理由ってもしかして…私が何かするとか思った?」

「…ごめん」

違うとも言え無かった。
僕は夢子を信じる事が出来なかった。
夢子から視線を外すと

「やっぱり、そうだよね月村君は私を疑ってる…私が何もしないと言っても月村君は私を信じないよね?…だって私いっぱい殺しちゃってるもんね…?」

夢子はうつむきソファから立ち上がり部屋から走って出て行ってしまった。

「待って!」

僕は咄嗟に夢子を追いかけた。
階段を上がり夢子の部屋をノックして

「夢子?きちんと話をしょう!」

何度もドアに向かって話すと、しばらくしてカチャリとドアが開く音がして、隙間から夢子が目線を合わせずに

「一体何を話すの?」

僕は黙ってしまった。
確かに何を話せば良いのか…するとドアが開き出てきた夢子は感情の無い目で僕を見た。
この目は何処かで見た。
あれは何処だったか?
そうだ…あれは確か公園だった。
その時もこんな目で、ひたすら持っていた石で倒れている女性を殴打していた。
あの時と同じ目を夢子はしていた。
僕は思わず後ずさると夢子はじっと僕を見つめ、グニャリと笑った。

「ごめんね…月村君…?」

夢子はポケットからナイフを取り出し

「大丈夫、大丈夫だよ、寂しくないから」

意味不明な事を言いながら近付いて来る
僕は後退りながら夢子を刺激しないように

「大丈夫夢子落ち着こう?な?」

そう言っても無表情の夢子が、ゆっくりとナイフを手に近いて来る

「大丈夫だよ月村君?ね?一瞬だから…」

何か無いかと辺りを見渡すが何もない!どうする?いつも間にか階段の所まで押されていたのか階段の手すりにドンと体が当たった。
不味い!夢子が両手にナイフを持ち血走った目で僕めがけて走ってきた。

「もう、これしかないの!」

僕は咄嗟に階段の手すりの方に体を捻り避けると夢子は顔を真っ赤にして

「何で!いつも私ばっかりなの!何で?何で!」

「夢子?落ち着いて話そう?な?」

興奮している夢子をなだめていると急に夢子が

「そうだ!そうだよ最初からこうしてれば良かったんだ!」

夢子はポケットからスマホを取り出して、そして画面に何か打ち込んで、そのスマホを勢い良く階段の下に投げた。

「!」

僕は投げられたスマホを見て愕然とした。あれは僕のスマホだ…僕はスマホを取りに行こうとすると、夢子がニヤリと

「これで…月村君は私の事をずっと忘れない!」

言うなり笑った。
そしてナイフを持ち直し僕目掛けて来た。僕は必死に夢子からナイフを取り上げようとしたが、上手く行かず思わず夢子の体を押してしまった。

「トン…」

すると夢子の体は階段の手すりを乗り越えて落ちて行く、まるでスローモーションを見ているかのような光景だった。
落ちて行く夢子と目が合った瞬間夢子が嬉しそうに笑った。

「フフ」

今まで見た事が無い顔で笑った顔に僕はゾッとした。
落ちて行く夢子は僕から目線を外さずに最後まで僕を見ていた。
そして

「ゴキッ!」

階段の下から嫌な音がした。

「!」

僕は震える体で恐る恐る階段を降りると手と首が互い違いになっている夢子が倒れていた。
すると夢子の近くから

「小宮山夢子の生涯年収が月村様の口座に振り込まれました。確認をお願いします。」

「!」

その言葉にビックリして夢子の体を動かすと僕のスマホがあった。
手にとって見るとやっぱり生涯年収だった。
一体どいう事なのか?
さっぱり分からなかったがさっきの夢子の行動からして夢子が僕のスマホを操作しのだろうと

「…今の音は何だ?どうしたんだ!」

「!」

その声に振り返ると岩崎が立っていた。
僕は咄嗟にスマホをポケット仕舞い

「岩崎…これは」

「夢子!大丈夫か!」

岩崎はフラフラと死んでいる夢子を抱き抱え

「夢子……。圭さっき言ってた生涯年収って何の事だ?これは…お前がやったのか?」

分からなくて黙っていると岩崎は

「お前なんだな?夢子を殺したのは!」

岩崎は夢子の死体を抱きしめ僕を睨んだ

「岩崎、違うんだ!」

弁解しようとすると、岩崎が僕の胸ぐらを掴み撲られた。

「痛!」

僕は

「岩崎……」

「何で夢子を殺した!」

夢子の死体を抱きしめ泣きながら叫んだ。僕は焦りながら

「違うんだ岩崎!これは…!」

言ったが岩崎は聞く耳持たず憎悪の顔で

「この人殺しが!」

僕を睨みながら

「お前…最近金回りが良くなったのは、その生涯年収って言うやつのせいか?金の為に夢子を殺したのか?」

もう何を言っても信じて貰えない…すると岩崎は自分のスマホを取り出し

「今から警察に通報してやる!この人殺し!」

僕は咄嗟に逃げた。
後ろから岩崎の怒鳴り声が聞こえたが僕はスマホだけ手に持ち逃げた。








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