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真実
雑音
しおりを挟む寂しい、何度も何度も脳内で叫ぶ自分がいる。しかし同時に「どうしようもないのだ。これ以上、グレイとはいられない……かもしれない」という諦めの感情がシエラの心の大半を占めていた。
(心のどこかで……分かっていたことじゃないの。少なくとも、グレイが私のこと、本当は愛してないんじゃないかって……疑ったことが何度もあるじゃない)
多くの女性に囲まれているグレイを見て「彼は優しいから」と自分に言い聞かせていた。でもそれはただ単に逃げているだけだったのだ。グレイが誰よりシエラを優先してくれない事実から目を背けようとしていた。時折冷たくされる理由を考えないようにしていた。
(だけどもう……こんなにもはっきりと告げられてしまったのだから、事実から目を背けるわけにもいかなくなってしまったわ)
ここで、逃げてしまったら……グレイがディアナと幸せになる未来を奪っている自分から目を背けることになる。そんなことをしたら、一生後悔に苛まれながら生きていかなければならなくなる。それだけは嫌だった。
「カーティス殿下、今回のことお教えくださいましてありがとうございました。帰って、夫と話し合いたいと思います」
シエラはゆっくりと頭を下げて、庭園を後にした。幸いにもカーティス王子に呼び止められることはなく、シエラは王妃の茶会に戻った。
同時に、不安げな表情でアマリアが駆けつけてくる。優しく肩に回された手に安堵して、シエラは無意識に入っていた肩の力を抜いた。
「シエラ!……大丈夫だった?……顔色が悪いわ」
「ええ、大丈夫。……あまり外に出ないせいで、少し疲れただけよ」
「違うわね。カーティス様に何か言われたんでしょう?」
相変わらず、アマリアは鋭い。シエラは苦笑してコクリと静かに頷いた。
「お願い、おば様。今は何も話したくないの……。少し時間を頂戴」
「……ええ、分かったわ」
頭の中は自分の思考する内なる言葉で溢れ、他の視覚や聴覚からもたらされる情報を完全に絶とうとしていた。このままでは王妃様にも無礼な態度を取ってしまうかもしれない。短い滞在となってしまったが、シエラは何とか王妃の元へ行き挨拶してから、アマリアに付き添われてサロン室を去る。その際周囲の令嬢達から「まあ、王妃様から招待された茶会にさえほんの少ししか滞在しないなんて……無礼にもほどがあるわね」「カーティス様からお誘いを受けていい気になっているんじゃない?」と嘲笑するような声音が聞こえてくる。それがまた雑音となって、シエラの脳を揺さぶって、いよいよシエラの顔色は紙のように白くなってしまった。
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