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愛しき夫
解ける誤解
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再び、沈黙が落ちた。曇天の空に晴れ間が差したらしい。雨はまだ僅かながらに降っているが、木々の葉の隙間から陽の光が零れ始め、2人の顔を明るく照らす。
「……君は、私のことが好きなのか?」
改めて問われて、シエラは僅かに首を傾げた。その問い方はまるでシエラがグレイのことを嫌っていると彼が思っていたみたいではないか。シエラはグレイに対して嫌うような素振りを見せた覚えはない。一体、どうしてそんな誤解をさせてしまったのか。訳が分からないまでもシエラは「好きよ」と照れ臭そうに答える。
「じゃあ、どうして笑ってくれないんだ?」
「どうしてって……」
「君と出会った頃は、あんなに笑ってくれたのに……結婚してからは全然笑わないじゃないか。だからてっきり君は私のことが大嫌いなのだと……」
「ええ!?」
グレイと出会った頃、そんなに自分は笑っていただろうか。思い出そうとしても、自分に関することは全く思い出せない。思い出せるのはグレイの輝くような笑顔ばかりだ。そんな彼の笑顔につられるように、あるいはそんな彼の表情を学んで、シエラは笑っていたのだと思うのだが……まさか、グレイがそんなことを覚えているとは。
衝撃に固まるシエラに、グレイは不安になったのか「そこで固まらないでくれ」と懇願してくる。
「違うの。笑わないんじゃなくて……ずっと、笑うことが出来なかったの。あなたと出会って以来、しばらくあなたに会えなかったでしょう?」
「ああ……」
「幼い頃は、あなた以外に笑顔を教えてくれる人がいなかったから……しばらく会えない間に忘れてしまって……おじい様が亡くなっておば様に引き取られてからはもう……感情が表に出せないようになっていたのよ」
「……じゃあ、私が嫌なわけじゃないのかい」
「うん」
シエラが頷くと、グレイは「はあぁぁああ」と深く溜息を吐いて、その場にしゃがみ込む。
「君が、私を嫌っていないのなら……離縁する必要ないじゃないか」
「どうして?私があなたのことを好きでも……あなたはディアナ様が好きなんじゃないの?」
「それを言っていたのは、カーティスだろう?」
「うん」
「……あのね、あいつは」
と、そこまで言いかけて、グレイは言葉を止めた。あいつは?あいつは一体何だというのか。シエラがじっとグレイを見つめると、彼は「心底面白くない」というふうな顔をしながら、溜息まじりに教えてくれる。
「君のことが好きなんだよ。昔からね」
「……それは、今日知ったわ」
「……なんだって?」
グレイは片方の眉を吊り上げて、眼光を鋭く光らせた。
「……君は、私のことが好きなのか?」
改めて問われて、シエラは僅かに首を傾げた。その問い方はまるでシエラがグレイのことを嫌っていると彼が思っていたみたいではないか。シエラはグレイに対して嫌うような素振りを見せた覚えはない。一体、どうしてそんな誤解をさせてしまったのか。訳が分からないまでもシエラは「好きよ」と照れ臭そうに答える。
「じゃあ、どうして笑ってくれないんだ?」
「どうしてって……」
「君と出会った頃は、あんなに笑ってくれたのに……結婚してからは全然笑わないじゃないか。だからてっきり君は私のことが大嫌いなのだと……」
「ええ!?」
グレイと出会った頃、そんなに自分は笑っていただろうか。思い出そうとしても、自分に関することは全く思い出せない。思い出せるのはグレイの輝くような笑顔ばかりだ。そんな彼の笑顔につられるように、あるいはそんな彼の表情を学んで、シエラは笑っていたのだと思うのだが……まさか、グレイがそんなことを覚えているとは。
衝撃に固まるシエラに、グレイは不安になったのか「そこで固まらないでくれ」と懇願してくる。
「違うの。笑わないんじゃなくて……ずっと、笑うことが出来なかったの。あなたと出会って以来、しばらくあなたに会えなかったでしょう?」
「ああ……」
「幼い頃は、あなた以外に笑顔を教えてくれる人がいなかったから……しばらく会えない間に忘れてしまって……おじい様が亡くなっておば様に引き取られてからはもう……感情が表に出せないようになっていたのよ」
「……じゃあ、私が嫌なわけじゃないのかい」
「うん」
シエラが頷くと、グレイは「はあぁぁああ」と深く溜息を吐いて、その場にしゃがみ込む。
「君が、私を嫌っていないのなら……離縁する必要ないじゃないか」
「どうして?私があなたのことを好きでも……あなたはディアナ様が好きなんじゃないの?」
「それを言っていたのは、カーティスだろう?」
「うん」
「……あのね、あいつは」
と、そこまで言いかけて、グレイは言葉を止めた。あいつは?あいつは一体何だというのか。シエラがじっとグレイを見つめると、彼は「心底面白くない」というふうな顔をしながら、溜息まじりに教えてくれる。
「君のことが好きなんだよ。昔からね」
「……それは、今日知ったわ」
「……なんだって?」
グレイは片方の眉を吊り上げて、眼光を鋭く光らせた。
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