38 / 113
第一章
あ、これもネット小説で読んだやつ
しおりを挟む
家畜小屋から畑に向かうところに、ベンチが一つある――気候と、幼女(つまりは私)のコンパスによっては目的地に到着出来ず、一休みする場合があるからだ。ちなみに、同じ理由で修道院敷地内には数か所、ベンチがある。
そのベンチに、私とエマは並んで腰かけた。
……そして、彼女のドレスの汚れを気にしなくて良くなったところで、私は口を開いた。
「あの、エマ……『ゲーム』って、何のこと?」
「えっ!? イザ……お姉さま、心読めるんですか!?」
「いえ……さっき、口に出していたわよ?」
「……そんな」
相手がバラした(と言うか自爆した)からと言って、自分がバラす義務はない。
だからとぼけて尋ねると、エマはギョッとして尋ねてきた後、私の言葉に呆然と呟いた。いや、まあ、私も確かにネット小説で読んだ『考えていることを無意識に口に出す主人公』を地で行くのには驚いたけどね?
そんな私の視線の先で、エマが人形のように可愛い顔を顰めつつ、何をどう説明しようか葛藤している。
下手に誘導すると、藪蛇になりそうなので黙って待つと――どれくらい経っただろうか?考えがまとまったのか、キッと顔を上げてエマは私に言った
「あのっ、いきなりで驚かれると思いますが……わたしには前世の、こことは違う世界で暮らしていた記憶があって!」
「……えっ?」
「まあ、気になるとは思いますが、そこは置いといて! その世界には、この世界で言う物語のような『ゲーム』という娯楽があるんですっ」
馬鹿正直にバラしたことに驚いて声を上げたが、いっぱいいっばいなのか疑問の声だと思ってくれたらしい。それから、私が質問した『ゲーム』について説明し話の先を続けた。
「そんなゲームの中に、この世界を……わたし達を描いたような乙女ゲー……物語、がありまして」
乙女ゲー、まで言った。完全にアウトだ。そんなの『乙女ゲーム』に決まっている。
顔面偏差値が高かったこと。それから、感じていたご都合主義の理由は判明した。そりゃあ、実際の中世と違って過ごしやすい訳である。
それにしても、婚約者候補になるくらいなので、基本の令嬢教育は受けていると思うが――二人きりと言うのを差し引いても、あまりにも直球で体当たり過ぎる。
「その物語だとわたしが主人公で、十六歳の時にイケ……高貴な方々と、魔法学園に進学して恋に落ちるのですが。その時、登場する悪や……ライバル、いえ、未熟なわたしを高みへと導くのがイザ……お姉さまなのです」
「…………」
再び、口を滑らせたのにこちらの方がヒヤヒヤしてしまう。
それにしても先程の早口な呟きで、私、と言うか現世の私に並々ならぬ思い入れを感じた。とは言え、その熱量を差し引いて解ったことがある。
(闇魔法とか、悪役っぽいなと思ったけど……実際、私、悪役令嬢だったんだ)
(……悪役? な令嬢?)
(あ、いや、ゲー……物語の話! 私がこれからも絶対、イザベルを守るからね!)
不安そうな現世の私の声に、脳内でフォローを入れつつも、私は相手の言葉を待った。
……知らなかったとは言え、いや、知らなかったからこそ早々に悪役令嬢をフェードアウトした私に、エマはどうして会いに来たんだろうか?
そのベンチに、私とエマは並んで腰かけた。
……そして、彼女のドレスの汚れを気にしなくて良くなったところで、私は口を開いた。
「あの、エマ……『ゲーム』って、何のこと?」
「えっ!? イザ……お姉さま、心読めるんですか!?」
「いえ……さっき、口に出していたわよ?」
「……そんな」
相手がバラした(と言うか自爆した)からと言って、自分がバラす義務はない。
だからとぼけて尋ねると、エマはギョッとして尋ねてきた後、私の言葉に呆然と呟いた。いや、まあ、私も確かにネット小説で読んだ『考えていることを無意識に口に出す主人公』を地で行くのには驚いたけどね?
そんな私の視線の先で、エマが人形のように可愛い顔を顰めつつ、何をどう説明しようか葛藤している。
下手に誘導すると、藪蛇になりそうなので黙って待つと――どれくらい経っただろうか?考えがまとまったのか、キッと顔を上げてエマは私に言った
「あのっ、いきなりで驚かれると思いますが……わたしには前世の、こことは違う世界で暮らしていた記憶があって!」
「……えっ?」
「まあ、気になるとは思いますが、そこは置いといて! その世界には、この世界で言う物語のような『ゲーム』という娯楽があるんですっ」
馬鹿正直にバラしたことに驚いて声を上げたが、いっぱいいっばいなのか疑問の声だと思ってくれたらしい。それから、私が質問した『ゲーム』について説明し話の先を続けた。
「そんなゲームの中に、この世界を……わたし達を描いたような乙女ゲー……物語、がありまして」
乙女ゲー、まで言った。完全にアウトだ。そんなの『乙女ゲーム』に決まっている。
顔面偏差値が高かったこと。それから、感じていたご都合主義の理由は判明した。そりゃあ、実際の中世と違って過ごしやすい訳である。
それにしても、婚約者候補になるくらいなので、基本の令嬢教育は受けていると思うが――二人きりと言うのを差し引いても、あまりにも直球で体当たり過ぎる。
「その物語だとわたしが主人公で、十六歳の時にイケ……高貴な方々と、魔法学園に進学して恋に落ちるのですが。その時、登場する悪や……ライバル、いえ、未熟なわたしを高みへと導くのがイザ……お姉さまなのです」
「…………」
再び、口を滑らせたのにこちらの方がヒヤヒヤしてしまう。
それにしても先程の早口な呟きで、私、と言うか現世の私に並々ならぬ思い入れを感じた。とは言え、その熱量を差し引いて解ったことがある。
(闇魔法とか、悪役っぽいなと思ったけど……実際、私、悪役令嬢だったんだ)
(……悪役? な令嬢?)
(あ、いや、ゲー……物語の話! 私がこれからも絶対、イザベルを守るからね!)
不安そうな現世の私の声に、脳内でフォローを入れつつも、私は相手の言葉を待った。
……知らなかったとは言え、いや、知らなかったからこそ早々に悪役令嬢をフェードアウトした私に、エマはどうして会いに来たんだろうか?
41
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで。
倉桐ぱきぽ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私は、ざまぁ回避のため、まじめに生きていた。
でも、ヒロイン(転生者)がひどい!
彼女の嘘を信じた推しから嫌われるし。無実の罪を着せられるし。そのうえ「ちゃんと悪役やりなさい」⁉
シナリオ通りに進めたいヒロインからのハラスメントは、もう、うんざり!
私は私の望むままに生きます!!
本編+番外編3作で、40000文字くらいです。
⚠途中、視点が変わります。サブタイトルをご覧下さい。
モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します
みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが……
余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。
皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。
作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨
あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。
やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。
この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。
死に戻りの元王妃なので婚約破棄して穏やかな生活を――って、なぜか帝国の第二王子に求愛されています!?
神崎 ルナ
恋愛
アレクシアはこの一国の王妃である。だが伴侶であるはずの王には執務を全て押し付けられ、王妃としてのパーティ参加もほとんど側妃のオリビアに任されていた。
(私って一体何なの)
朝から食事を摂っていないアレクシアが厨房へ向かおうとした昼下がり、その日の内に起きた革命に巻き込まれ、『王政を傾けた怠け者の王妃』として処刑されてしまう。
そして――
「ここにいたのか」
目の前には記憶より若い伴侶の姿。
(……もしかして巻き戻った?)
今度こそ間違えません!! 私は王妃にはなりませんからっ!!
だが二度目の生では不可思議なことばかりが起きる。
学生時代に戻ったが、そこにはまだ会うはずのないオリビアが生徒として在籍していた。
そして居るはずのない人物がもう一人。
……帝国の第二王子殿下?
彼とは外交で数回顔を会わせたくらいなのになぜか親し気に話しかけて来る。
一体何が起こっているの!?
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。
なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。
本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない
魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。
そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。
ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。
イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。
ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。
いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。
離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。
「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」
予想外の溺愛が始まってしまう!
(世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる