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第二章
職員室にて
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校舎に入った後、エマ達は自分達の教室へ。私は、職員室へと向かった。そしてノックをし、中に入ると修道服姿の暴風雨が笑顔で出迎えてくれた。彼もまた、神学や魔法を教える為の講師としてこの学園に通っているのだ。
「聖女様、よく来てくれた!」
「アルス様……よろし」
「……え、誰だ!?」
「愛想こそあるけど、いっつも取り澄ましているアルス先生が!?」
それに、私が返事をすると――言い終わる前に、他の教師らしい男女がどよめいて驚いた。現世の私が動揺し、声を震わせながら聞いてくるくらいだ。
(カナさん? ど、どうしたのかしら?)
(大丈夫。エマが「ゲームのアルス様は、ケイン様みたいにツンデレではないけど、喜怒哀楽が薄い」って言ってたから、他の先生達が知っているのと違うからだと思う)
(そう言えば……でも、薄い?)
エマから聞いた話なので、ルームシェア状態の現世の私も聞いているのだが――私達の知っているアルスは『暴風雨』とあだ名をつけているくらい喜怒哀楽が激しい。だから、どうしても結びつかないのだろう。
するとざわつく職員室内にバンッと手を叩く音が響き渡り、一同は口をつぐんだ。
「皆さん、落ち着いて……聖女様、よくいらしてくれました。校長のルイス・アスベルです」
「初めまして、イザベルです。こちらは、護衛のラウルさんです。アスベル様、よろしくお願いします」
「ええ、よろしくお願いします……ああ、この学園は平民も通うので様付けではなく、名前に役職や先生を付けるようお願いします」
「かしこまりました、ルイス校長」
校長は、初老で小柄な男性だった。見た目や語り口は穏やかだが皆を黙らせ、暴風雨も反論しないところを見ると素晴らしい人格者か、実は腹黒なのかもしれない。
そして、言われてみると平民で苗字のなかった暴風雨も名前と先生付けで呼ばれていた。それ故、頷いて言い直すと別の人物から声をかけられた。
「本当に失礼致しました、聖女様。私は、養護教諭のナタリー・テナです。よろしくお願いします」
そう言って、頭を下げていたのは二十歳くらいの、ワンピースに白衣を着た栗色の髪の女性だった。ちなみに先程「愛想こそあるけど、いっつも取り澄ましているアルス先生が!?」と言っていた人物である。
ちなみに、私はアントワーヌ様の指示で貴族名鑑に目を通している。確かアスベル家は伯爵で、テナ家は男爵だ。実家の方が爵位は上だが、修道院に入ることで私はほぼ平民になった為、身分を黙認して貰えるのはありがたい。
「こちらこそ……イザベルと申します。ナタリー先生、これからお世話になりますがよろしくお願いします」
「いえ! むしろ、寄り添いを間近で見られるなんて! 神官や修道女になることも考えていたので、光栄ですっ」
「え」
「……って、重ねて失礼しましたっ」
「いえ」
明るく優しそうな女性だが、勢いよく言われてちょっと引いてしまう。確かに今のところ、寄り添いは神殿や修道院関係者にしか教えていないが、ここまで食いつかれるとは。
そんな私に気づいて慌てて謝罪してくる辺り、悪気はないのだろうが裏表のない反面、思ったことがすぐ口から出るタイプのようだ。
(とは言え、三年間週一で場所を借りるし……むしろ寄り添いって、学生にも必要だと思うから。私の任期が終わった後の為にも、覚えて貰うのは良いことよね)
内心うんうんと頷いて、私は相手からの重ねての謝罪を受け入れた。
「聖女様、よく来てくれた!」
「アルス様……よろし」
「……え、誰だ!?」
「愛想こそあるけど、いっつも取り澄ましているアルス先生が!?」
それに、私が返事をすると――言い終わる前に、他の教師らしい男女がどよめいて驚いた。現世の私が動揺し、声を震わせながら聞いてくるくらいだ。
(カナさん? ど、どうしたのかしら?)
(大丈夫。エマが「ゲームのアルス様は、ケイン様みたいにツンデレではないけど、喜怒哀楽が薄い」って言ってたから、他の先生達が知っているのと違うからだと思う)
(そう言えば……でも、薄い?)
エマから聞いた話なので、ルームシェア状態の現世の私も聞いているのだが――私達の知っているアルスは『暴風雨』とあだ名をつけているくらい喜怒哀楽が激しい。だから、どうしても結びつかないのだろう。
するとざわつく職員室内にバンッと手を叩く音が響き渡り、一同は口をつぐんだ。
「皆さん、落ち着いて……聖女様、よくいらしてくれました。校長のルイス・アスベルです」
「初めまして、イザベルです。こちらは、護衛のラウルさんです。アスベル様、よろしくお願いします」
「ええ、よろしくお願いします……ああ、この学園は平民も通うので様付けではなく、名前に役職や先生を付けるようお願いします」
「かしこまりました、ルイス校長」
校長は、初老で小柄な男性だった。見た目や語り口は穏やかだが皆を黙らせ、暴風雨も反論しないところを見ると素晴らしい人格者か、実は腹黒なのかもしれない。
そして、言われてみると平民で苗字のなかった暴風雨も名前と先生付けで呼ばれていた。それ故、頷いて言い直すと別の人物から声をかけられた。
「本当に失礼致しました、聖女様。私は、養護教諭のナタリー・テナです。よろしくお願いします」
そう言って、頭を下げていたのは二十歳くらいの、ワンピースに白衣を着た栗色の髪の女性だった。ちなみに先程「愛想こそあるけど、いっつも取り澄ましているアルス先生が!?」と言っていた人物である。
ちなみに、私はアントワーヌ様の指示で貴族名鑑に目を通している。確かアスベル家は伯爵で、テナ家は男爵だ。実家の方が爵位は上だが、修道院に入ることで私はほぼ平民になった為、身分を黙認して貰えるのはありがたい。
「こちらこそ……イザベルと申します。ナタリー先生、これからお世話になりますがよろしくお願いします」
「いえ! むしろ、寄り添いを間近で見られるなんて! 神官や修道女になることも考えていたので、光栄ですっ」
「え」
「……って、重ねて失礼しましたっ」
「いえ」
明るく優しそうな女性だが、勢いよく言われてちょっと引いてしまう。確かに今のところ、寄り添いは神殿や修道院関係者にしか教えていないが、ここまで食いつかれるとは。
そんな私に気づいて慌てて謝罪してくる辺り、悪気はないのだろうが裏表のない反面、思ったことがすぐ口から出るタイプのようだ。
(とは言え、三年間週一で場所を借りるし……むしろ寄り添いって、学生にも必要だと思うから。私の任期が終わった後の為にも、覚えて貰うのは良いことよね)
内心うんうんと頷いて、私は相手からの重ねての謝罪を受け入れた。
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