灰かぶり君

渡里あずま

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オンリーワン?3

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 ……そんな俺の手が、再び引っ張られる。

「怒らないんですか?」
「はい?」
「僕なら、あれだけ失礼なことを言われたら怒ります。何が目的ですか?」

 目的って言えば、まあ、俺は新作の取材だけど――これだけのことで疑ってかかるとか、苦労してんだなこの人。
(金持ちって、大変だな……ただ、ここで「副会長の性格は解ってる」とか言うと、変なフラグ立ちそうだし)
 厳密に言うと、解ってるのは王道学園物の副会長で『この人』じゃない。
 ただ、解らないながらも何かしら答えを返さないと、不安だろうなとは思う。とは言え、新作云々は言えないし俺、恋の応援ってキャラじゃないし……あ。

「世界が違うからです」
「は?」
「たまたま同じ学校になりましたけど、庶民の俺とお……王子様みたいな皆さんとでは、世界が違います。でしょ?」

 危ない危ない。もうちょっとで『王道』って言うとこだった。
 とにかくそんな訳で怒ったり、ましてや喧嘩したりなんてありえない。世の中ってそう言うものだろ? まあ、媚びを売るって選択肢もあるけど面倒だし。
 後半は口に出さなかったけど、何となくは通じたみたいだ。妙な顔をしながらも、副会長は手を離してくれた。
 そんな副会長に頭を下げて、俺は真白と教室に戻った。
(これで月曜に新歓が終われば、ちょっとは落ち着くかな?)
 さっきも言ったけど、これでもう生徒会と会うことはないだろう。俺は、そう思っていた。

「……変な子ですね」

 だからぽつり、と副会長がそんなことを呟いていたことには気がつかなかった。



 その日の放課後、俺はコンビニと言う名のスーパーに行った。明日は安来さんと出かけるし、日曜は小説の修正をしたいんで、今日の夜のうちに作り置きしておこうと思ったからだ。

「谷! オレ、ハンバーグ食いたいっ」
「えっ、リクエストいいの? デザートもOK?」
「……モヤシのナムル、また食べたいな」

 もう十分、目立ってるんで一茶達にも荷物持ちでついて来て貰った。貰ったけど――高校生の筈だが子供か、お前ら。

「真白、ハンバーグの挽き肉でロールキャベツも作るからキャベツ取ってこい。一茶は、迷わないようについてってやれ。ちなみにデザートは、凝ったものは作らない。奏水はありがとな、辛いの結構好きか?」
「うん、見かけに合わないって言われるけど」
「見た目で飯食う訳じゃないのにな?」

 真白と迷子防止の為に一茶へと指示を出し、奏水の言葉にそう言うとクスクスと言う笑い声が返された。うーん、可愛いのが笑うとますます可愛くなるな。

「ん?」

 不意に、制服のポケットに入れていた携帯が震える。見ると、桃香さんからのメールだった。
(何だ?)
 仕事関係のメールは夜、原稿とかを送った後に来ることが多い。何だろう、と思って中を読むと。

『今日、Lasahラサさんとグッズの打ち合わせしたんだけど……出灰君の新作の表紙も、描いてくれるって!』

(…………は?)
 Lashaさんって言うのは、デリ☆で活動してる絵師様で、俺の小説の表紙を描いてくれた人だ。サイトだけじゃなく、書籍化された本のイラストも担当してくれている。
 ちなみに、Lashaって言うのはクリエーター名(ペンネームみたいなもの)で直接、会って話したことはない。年とか性別も公表されてないけど、サイト内のメッセージでやり取りした感じだと、穏やかで優しそうな人だった。
(イラストも繊細で、可愛くて綺麗で……そんな人に、BLのイラストを描かせる、だと?)

『駄目ですよ。何、パワハラしてるんですか桃香さん! 恩を仇で十倍、いや、百倍返しになっちゃうじゃないですか!?』

 俺は慌てて、桃香さんにメールを送った。本音を言うと電話したいが、今は真白達がいる。
 桃香さんの暴走に内心、頭を抱えていると俺の携帯がまた震えた。

『大丈夫大丈夫。Lashaさん、腐属性ガッツリあるから。むしろ喜んでたわよ?』

(……へぇ……)
 ちょっと、いや、かなり知りたくなかった情報を聞かされて、俺は何とも言えない気持ちになった。そりゃあ、俺もこうだからさ? 作品と本人は違うって解ってるけどさ?

「ちょっ、大丈夫か!?」
「奏水……谷君、どうしたの?」
「いや、何か……メール読んでから、急に……大丈夫かな?」
「谷君? 架空請求のメールは、返信しなけりゃ問題ないから安心して?」
「谷! 悪い奴は、オレが追っ払うからっ」
「あー、うん……ありがとな」

 どうやら俺は、傍から見て相当落ち込んでいたらしく――三人に、随分と心配(多少、的外れだけど)をかけてしまった。うん、反省しよう。
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