灰かぶり君

渡里あずま

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残念だな1

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 今日は、安来さんと出かけます。昨日、メールで正門で待ち合わせと連絡がありました。
 ……どうしてこんな、作文みたいな語りになっているかって言うと。

「何だよ、嫉妬か? Fクラスのボスのくせに、心狭いな」
「狭くて結構。こいつは、おれと出かけるんだよ」

 笑顔の岡田さんと、後ろから抱き着いてくる安来さんに挟まれてるからです……ヲイ、どうしてこうなった?



「おう、谷。おはようさん、出かけるんか?」
「はい、おはようございます」

 寮を出ようとした時に、三毛猫を膝に乗せた寮長から声をかけられた。
 頷いて挨拶した俺に、足元の黒猫用にねこじゃらしを振っていた寮長が首を傾げた。

「って、今からだと昼までバスないやろ? 迎えが来るんか?」
「そうなるん……ですかね?」
「いや、俺に聞かれても」
「ですよね」

 当然、寮長に笑いながら言われたけど、時間と待ち合わせ場所しか聞かされていない俺としては、これ以上は答えられない。

「行って来ます」
「あぁ、気ぃつけて」

 だからそれだけ言って、俺は寮を出た。そう、約束の時間は十時半で、場所は通用門(休みなんで、バスの時間以外は正門は閉まってる)だ。

「おはよう」
「……おはようございます」

 出かける生徒には会わなかったけど、守衛の岡田さんは今日もいた。相変わらずの男前だけど、副会長にバラされた恨みがあるんで、挨拶にちょっと間が空いた。

「何だ、もうバレたか」
「そもそも、最初から話さないで下さいよ……まぁ、面倒にはならなかったですけど」
「そうか、良かったな」

 そう言って、岡田さんが俺の頭にポンッと手を置いてきた。おそらく変装中の真白も含めて、美形って他人に近づくのにあんまり抵抗ないみたいだよな。まあ、痴漢とかには間違われないだろうけど。

「いきなりそういうことすると、勘違いされません?」
「お前は、勘違いしないだろう?」
「はい」

 まあ、平凡な外部生なんで。何でもソッチの方向には持ってかないけどさ?
 即答すると、岡田さんが笑ってクシャクシャ頭を撫でてきた――うん、勘違いをしないんで『気を使わなくて良い相手』って認定されたらしい。
(平凡には縁のない苦労だな)
 そう思ってたら、不意に後ろから引っ張られた。
 ……そして安来さんの腕の中に収まり、話は冒頭に戻る。



「岡田さん、俺達で遊ばないで下さいよ……安来さん、おはようございます」

 挟まれたまま睨み合われるのも何なんで、俺は岡田さんにそう言って安来さんを見上げた。そんな俺に、安来さんが軽く目を見張る。

「……おう」

 と思ったら、安来さんはその目をフッと細めて笑った――これも、ツンデレって言うのかな? いや、でもツンは周りにでデレは俺にだから、ただのデレか?
 そんなことを考えてたら、俺と向き直った安来さんがコツン、と額を俺の額に当ててきた。

「何、考えてんだ?」
「……何も?」

 安来さんがツンデレかどうかって、わざわざ本人に言うことじゃない。だからそう答えると、しばしジッと見つめられた――何だ、動揺とか意識とかしないと駄目か? しないけど。

「行くぞ」

 平然としたままの俺に、安来さんが観念したみたいに言う。どうやってか聞こうとした俺は、今更ながらに安来さんの後ろにある物に気づいた――黒い、バイクだ。

「乗ったことあるか?」
「いいえ」
「じゃあ、あんまりスピード出さないようにする。曲がる時は、おれに体預けろ。逆に動いたらお互い危ないからな」

 ヘルメットを渡されながらそう言われたのに、俺は頷いた。頷きながら内心、感心してた。
(何て言うか、カッコイイな……これも一種の、エスコート?)
 バイクに乗るのも気に入った相手に甘いのも、安来さんはいちいちカッコイイ。唯一、本当に残念なのはその相手が俺ってことだ。

「岡田さんも安来さんも、どうせなら真白を構って下さいよ」
「いや、どうせならの意味が解らないぞ……もしかしてお前、柏原の同類か?」
「お前の頼みでも、それは却下」

 駄目元で言ってみたら、やっぱり駄目だった。そして一茶が腐ってるのは、岡田さんも知ってるらしい。
(いつもの調子で、岡田さんに突撃したのかな……頼むから今日は、真白と大人しくしててくれよ?)
 まあ、バイクだと追っかけてくるのは無理だろう。ちゃんと土産、買ってくからな?

「……行きましょうか」

 朝から拗ねてた真白と、宥めて?た一茶と奏水に心の中で声をかけ――いつまでも立ち話も何なんで、俺はヘルメットを手に通用門から外へ出た。
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