灰かぶり君

渡里あずま

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好きな人に自分の好きなものを3

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 その夜、会長の親衛隊とのやり取りを話すと一茶は万歳三唱をし、奏水に「食事中にうるさいよ」と叱られていた。

「……また明日も、そいつらのところに行くのか?」

 一方、真白はって言うとショボンとした口調で聞いてきた。見えないけど、耳と尻尾があったら可哀想なくらいへたれてるだろう。

「いや? 話は聞いたし……次に行くのは、来週の月曜日かな」

 目的は果たしたんだけど、何か成り行きで俺のファンクラブになってくれたし、今日は色々ご馳走になったし。人数多いから、お返しはクッキーかな。
 そう思って答えると、途端に真白が目を輝かせた。

「ホントかっ?」
「あぁ、会長の話は聞かせて貰ったし。お返しは来週、持ってくとして……あとは、誰に聞けばいいかな」
「オレはっ!?」
「えっ?」

 意気揚々と手を挙げる真白に、俺は軽く目を見張った。まあ、確かに真白は生徒会メンバーに呼ばれて半日一緒にいたけど。
(……キス奪った相手の話とか、当事者に聞いていいのか?)
 悩む俺の前で、真白はニコニコ笑ってる。あれ、俺の考えすぎか?

「出灰は、真白が会長にキスされたから気を使ったんだよ」

 解禁して以来、一茶や奏水も俺を名前で呼ぶようになった。そんな一茶の補足に、真白が首を傾げる。

「それだとオレ、紫苑も嫌わないといけなくなるぞ?」
「……そうだな」
「そりゃあ、最初はムカついたけど……アイツら、バカだからな!」
「えっ?」

 そう言えば真白、副会長とも普通に話してたか。成程なって思ってたら、真白の口から予想外の、しかも笑顔での『バカ』発言が飛び出した。

「だってアイツら、自分達がキスしたら相手が喜ぶって思ってんだぜ!? ま、オレは嬉しくないってシッカリ怒ってやったけどな!」
「何それ、俺様会長だけじゃなく副会長も!?」
「おう。まっ、紫苑は『僕は安売りしません』って言ってたけどな」
「確かに、最上財閥と神丘病院の御曹司な上、あの見た目だからね……逆に、あの見た目じゃなきゃ相当、痛い発言だけど」

 真白の話に、一茶と奏水が口々に言う。そして俺はもう一度、成程って思った。

「会長も、プレゼント感覚なのか」
「「「……えっ?」」」

 チワワ達みたいな健気さは全くないけど、相手が欲しがるものをやるのもプレゼントだ。日本屈指の名門と大病院の跡取りとくれば、欲しがる輩も多いだろう。
 共感は全く出来ないけど、ちょっとは理解出来た気がする。

「ありがとな、真白……だけど、押しつけたら本当に迷惑だよな。真白が怒ってやったんなら、ちょっとは反省したかな?」
「いっ……出灰も、迷惑か!?」
「えっ?」
「紅河とか紫苑に、そ、その、キスとかされんのっ」
「当然」

 そもそも、外国みたいにキスが挨拶って習慣ないから必要ないし。いくら金持ちで美形でも、男だしな。
(抵抗がないなら、かー君とキス出来てるだろうし)
 イケメンで幼なじみだけど、阻止したからな。これ言うと、また真白が気にするだろうから言わないけど。
 だから俺は、別の話題を口にした。

「そもそも俺、副会長とか会長がお前にキスするの見て『変質者』だと思ったし」
「へっ!?」
「だっていきなり、しかも人前でとかって普通、犯罪だろ?」

 まあ、副会長は俺とか岡田さんに見られてるって知らなかったけど。そう考えると、会長の方が重症だな。

「あ、真白は被害者だから何とも思ってない。交通事故にあったようなものだから、気にするなよ?」
「う……うん」
「お、王道会長と副会長がへ、変質者って!」
「…………っ」

『変質者』がショックだったのか、真白は呆然としながら頷き――一茶は大爆笑、そして奏水は堪えようとしながらも肩が震えていた。
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