灰かぶり君

渡里あずま

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だから、どうしてこうなった?3

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「あとは黙って、座っていて下さい。相手の方とは、僕が話しますから」
「解りました」

 答えた俺の声は、当たり前だけど男のソレで。だから副会長にそう言われたのに、俺は素直に頷いた。
 そんな俺達の前に、ホテルの従業員さんに連れられて来たお嬢様が現れる。
(……お人形さんみたいだな)
 お嬢様は高一、つまりは俺より一つ下だって聞いている。後ろでシンプルにまとめられ、両サイドに下ろされた黒髪。そして淡い緑の地に色彩々(いろとりどり)の花が描かれた振り袖が、白い肌を引き立ててる。さっき、紫子さんが「女の子より可愛い」って言ってたけど、やっぱり(チワワとか真白ならともかく)女の子は可愛いよな、うん。

「初めまして、神丘紫苑です」
相模原菖蒲さがみはらあやめと申します」

 そしてお嬢様は、声も可愛かった。あと、名前がゴージャスだった。
 お嬢様は、その大きな黒い目で副会長の隣に座ったままの俺を見た後――俺達の前、従業員の引いた椅子に腰掛け、別の従業員がお茶を置いて立ち去り、部屋に俺達三人だけになったところで口を開いた。

「その方は、神丘様の恋人ですか?」
「えっ……ええ、はい、そうです。ですから、今回の話は」
わたくしは、別に構いません」
「……えっ?」

 可愛いお嬢様は察しも良いんだと、そしてまあ、見合いの席に女がいればそうなるかと思った。
 だけど、続けられた言葉は予想外だった。
 声にこそ出さなかったけど、副会長同様に俺も驚いていた。そんな俺達の前で、お嬢様は更に言う。

「ですから、私は夫が男色家でも別に構いません。調べさせて頂きましたが、その方が神丘様が学校でお付き合いされている方ですか? 私が通う女子高でも、擬似恋愛はございますし……私は、神丘病院長の妻になれればそれで良ろしいので」

 続けられた話は、色々とツッコミどころ満載で。可愛いお嬢様は、見た目に似合わず肝の据わった性格らしい。
(大病院院長の奥方の座って、確かに魅力的だよな?)
 うん、でも、理解は出来るけど――心の中でお嬢様に合掌しながら、俺は口を開いた。

「俺は、良くないです」
「えっ?」
「俺の友達はもっと可愛いですし、そもそも副会長とはつき合ってません」
「そこですか、平凡!?」

 俺がそう言うとお嬢様は驚き、副会長はツッコミを入れてきた。いや、だって、大切なことだと思うぞ?

「あと、誰でも良いんなら……副会長様は、勘弁してあげて下さい」
「……何故ですの?」
「馬鹿で夢見がちな甘ちゃんですけど、この方なりに頑張ってるんです。外面が良すぎて、自分を見て貰えないって言うのは自業自得だと思いますけど、周りに応えようと一生懸命なんだと思います」

 だから、と俺は言葉を続けた。

「笑うのも頑張ってる副会長様には、好きな相手とだけは気を使わずに楽しく過ごして欲しいんです」
「「…………」」
「あ、お詫びにって言うのも何ですけど、副会長よりもっと良い相手探しますね。ホモでもOKってことですけど、せっかくそれだけ可愛いんですから勿体ないですよ? どうせならノーマルで、好条件な相手を」
「……お姉様」
「は?」
「お姉様は、男色家ではありませんの?」

 お嬢様はそう尋ねて、何故だかキラキラした目で俺を見てきた――って、お姉様ってもしかして俺のことか?

「えっと、はい、俺はホモじゃないです。ノーマルだけだと少ないかもしれませんが、両刀も合わせれば」
「お姉様!」
「は、はい?」
「菖蒲のお姉様になって下さいませ!」
「……はいぃ?」

 とんでもないことを言われたのに、俺はまた某刑事ドラマの警部どのみたいな声を上げてしまった。
そんな俺の体が、不意に横へと引き寄せ――いや、抱き寄せられる。

「駄目です、渡しません」
「…………えっ?」
「神丘様! お姉様は、男色家ではありませんのよ!?」
「解っています。ですが僕を理解してくれただけではなく、ありのままの僕を受け入れて幸福まで願ってくれたんです。こんな子は、他にいません」

 ……責任を、取って貰わないと。
 そう言ってギュッと抱きしめてくる副会長に対して、硬直した俺の代わりにお嬢様が反論する。

「お姉様が優しいのは、あなたにだけじゃありませんわっ!」
「でしょうね。ですがそもそも、彼は庶民です。あなたが求めるステータスはありませんよ?」
「そんなのっ、私がお姉様を養えば、何の問題もありませんわ!」
「だから、渡しませんと言っているでしょう? 解らない人ですね」

(……だから、どうしてこうなった?)

 って言うが、前言撤回する。気は合ってるみたいだから、二人で結婚すれば良いよ――言い合う二人に、俺は声にならないツッコミを入れた。
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