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播種
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まず、現在の四大公爵家に令嬢は二人しかいない。ジャンヌは死んだとされているのでカウントされない為、ラウラとソフィアだけだ。
そして、この異世界では女性でも家や爵位を継げる。だから一人娘であるソフィアも、公爵家の後継ぎとして教育を受けており。一人前になるまでは、と王立学園に入るまで高位貴族には珍しく、婚約者がいなかった。
そんな中、ウナム国からハリドが留学してきて──ラウラの、取り巻きになった。そして、思いがけないことを言い出した。
「私はこの国で、微力ながらウナム王族としてユージン達の力になりたい」
名指しこそしなかったが、ハリドの目的はラウラの傍にいることだ。
流石に、王太子であるユージンからラウラを奪うことは出来ないと理解している。
しかし小国とは言え、長男ではないが正妃の生んだ王子であり、末っ子の彼は家族から可愛がられていたので、ハリドがいることでウナム国からの香辛料や布製品などの輸入が更に増やせることが期待出来た。
……それ故、エスカーダ王家はもう一人の公爵家令嬢であるソフィアに目をつけた。
それから王命を出し、他の女に心を奪われた男と婚約させたのだ。
(それでも……ソフィアは、少しでも良好な関係を築こうとしたが)
ハリドはと言うと、王立学園を卒業してもセルシウス家の婿になることで、エスカーダにいられると確定したらもう、ソフィアとは最低限のお茶会やプレゼント、エスコートしかしなくなった。むしろ、ソフィアという婚約者を得たことで『友人』として、堂々とラウラ達と行動を共にするようになった。
(まあ、それはハリドだけじゃなく、生徒会の面々……騎士団長や官僚の息子達なんかもだがな)
婚約者がいることを隠れ蓑として、ラウラに侍っている。流石に虐げるまではしていないが──いや、ハリド同様に最低限の交流しかせず、蔑ろにしているだけで十分、虐げているとクロエは思う。
(ラウラの方が悪いのに、婚約者に蔑ろにされてるってことで見下されるなんて)
ソフィアの友人達は、ソフィア同様にラウラの取り巻きの婚約者だ。しかし、高位貴族の令嬢を面と向かって馬鹿にはしないが、視線や態度から軽んじられているのは伝わる。それを使用人達に見せない為、彼女達は高位貴族の令嬢なのに使用人を連れず、自分達でランチを取りに行って一緒に食事しているのである。
「同じクラスですが、こうしてお話するのは初めてですね。失礼致しました」
「あ……こちらこそ。運んでくれて、ありがとう。私は、ソフィア・ド・セルシウスと申します」
「存じておりますよ。そうではなく……養女とは言え、私達は平民ですので」
「……こちらこそ、気配りが足りなかったわ。私達から話しかけないと、あなた方からは無理よね。これからは挨拶など、私達から声をかけて良いかしら?」
「勿論です。ありがとうございます」
よし、言質が取れた。
倒れたから助けた。それは事実だが、ソフィア達高位貴族の令嬢達との繋ぎが欲しかったのも本当だ。しかし、元平民という触れ込みのクロエやレーヴでは、自分達からは挨拶などの声がけすら出来なかったのである。
もっとも余裕がなく、クロエ達に気を配る余裕がなかったソフィア達に対して、いきなり距離を詰めたら警戒される可能性があるので慎重に。
「……ノアイユ商会では、ウナム国の珍しい果物のシロップ漬けが手に入るのです。あと、リブレ国のお茶も……よければ今度、ソフィア様に差し上げても?」
「まあ、良いの? 嬉しいわ、ありがとう」
だが、せっかくの好機なのでクロエは種を蒔くことにする──仮にハリドがいなくても、ウナム国やリブレ国に対して、他にも伝手はあるのだという種を。
そして、この異世界では女性でも家や爵位を継げる。だから一人娘であるソフィアも、公爵家の後継ぎとして教育を受けており。一人前になるまでは、と王立学園に入るまで高位貴族には珍しく、婚約者がいなかった。
そんな中、ウナム国からハリドが留学してきて──ラウラの、取り巻きになった。そして、思いがけないことを言い出した。
「私はこの国で、微力ながらウナム王族としてユージン達の力になりたい」
名指しこそしなかったが、ハリドの目的はラウラの傍にいることだ。
流石に、王太子であるユージンからラウラを奪うことは出来ないと理解している。
しかし小国とは言え、長男ではないが正妃の生んだ王子であり、末っ子の彼は家族から可愛がられていたので、ハリドがいることでウナム国からの香辛料や布製品などの輸入が更に増やせることが期待出来た。
……それ故、エスカーダ王家はもう一人の公爵家令嬢であるソフィアに目をつけた。
それから王命を出し、他の女に心を奪われた男と婚約させたのだ。
(それでも……ソフィアは、少しでも良好な関係を築こうとしたが)
ハリドはと言うと、王立学園を卒業してもセルシウス家の婿になることで、エスカーダにいられると確定したらもう、ソフィアとは最低限のお茶会やプレゼント、エスコートしかしなくなった。むしろ、ソフィアという婚約者を得たことで『友人』として、堂々とラウラ達と行動を共にするようになった。
(まあ、それはハリドだけじゃなく、生徒会の面々……騎士団長や官僚の息子達なんかもだがな)
婚約者がいることを隠れ蓑として、ラウラに侍っている。流石に虐げるまではしていないが──いや、ハリド同様に最低限の交流しかせず、蔑ろにしているだけで十分、虐げているとクロエは思う。
(ラウラの方が悪いのに、婚約者に蔑ろにされてるってことで見下されるなんて)
ソフィアの友人達は、ソフィア同様にラウラの取り巻きの婚約者だ。しかし、高位貴族の令嬢を面と向かって馬鹿にはしないが、視線や態度から軽んじられているのは伝わる。それを使用人達に見せない為、彼女達は高位貴族の令嬢なのに使用人を連れず、自分達でランチを取りに行って一緒に食事しているのである。
「同じクラスですが、こうしてお話するのは初めてですね。失礼致しました」
「あ……こちらこそ。運んでくれて、ありがとう。私は、ソフィア・ド・セルシウスと申します」
「存じておりますよ。そうではなく……養女とは言え、私達は平民ですので」
「……こちらこそ、気配りが足りなかったわ。私達から話しかけないと、あなた方からは無理よね。これからは挨拶など、私達から声をかけて良いかしら?」
「勿論です。ありがとうございます」
よし、言質が取れた。
倒れたから助けた。それは事実だが、ソフィア達高位貴族の令嬢達との繋ぎが欲しかったのも本当だ。しかし、元平民という触れ込みのクロエやレーヴでは、自分達からは挨拶などの声がけすら出来なかったのである。
もっとも余裕がなく、クロエ達に気を配る余裕がなかったソフィア達に対して、いきなり距離を詰めたら警戒される可能性があるので慎重に。
「……ノアイユ商会では、ウナム国の珍しい果物のシロップ漬けが手に入るのです。あと、リブレ国のお茶も……よければ今度、ソフィア様に差し上げても?」
「まあ、良いの? 嬉しいわ、ありがとう」
だが、せっかくの好機なのでクロエは種を蒔くことにする──仮にハリドがいなくても、ウナム国やリブレ国に対して、他にも伝手はあるのだという種を。
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