令嬢の復讐代行者

渡里あずま

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統括

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 クロエが王立学園に留学生として通い出してから、およそ一か月が経った。その間、クロエとレーヴはまずはソフィアと、その後はソフィア経由で生徒会役員達の婚約者達と話すようになった。
 一方、王太子であるユージンや生徒会メンバーなどのラウラの取り巻き、そして他の男子生徒とは挨拶程度で自分からは近づかなかった。
 そんなクロエを、しばしラウラは観察していたが──男子生徒達に近づかないことで、自分の地位を脅かすライバルだと思われなくなったようだ。流石に面と向かっては言われないが、馬鹿だと見下された視線や嗤いを向けられることがあった。それは婚約者と最低限の交流しか出来ていない、ソフィア達に他の生徒達が向けるものと同じだった。おそらくだが最初はラウラが始め、彼女におもねる生徒達が続いたのだろう。ラウラの真似とは言え、ソフィアも公爵令嬢だというのに馬鹿なことをするものである。

(成程……ラウラにとっては男に媚びを売らない俺や、男に相手にされないソフィア達は恐れるに足りない訳だ)

 確かに貴族社会は男社会なので、男性に気に入られるべきという考えも、間違いではない。
 しかし、そんな男性達を支えているのは妻や娘である。そして彼女達はお茶会やパーティーを開いて、情報収集して夫や婚約者に伝えているのだが──ラウラは、その辺りを疎かにしているようだ。
 元平民の母親は、今の王妃と仲良くなったようなので、同性との交流や情報網もしっかり押さえていたようである。しかし物心つく頃には引き取られて、公爵令嬢として育ったラウラにはそういう強かさはないらしい。

(ジャンヌがいないしソフィアも婚約している今、公爵家の令嬢は自分だけだし、同年代の高位貴族の令嬢達には婚約者がいる。だから養女とは言え、伯爵令嬢の俺を警戒したんだろうが)

 クロエが積極的にユージンに関わらないのを見て、安心した訳だ。もっともクロエからすると、ラウラと同じことをするつもりはなかった。



 恋愛についてはお花畑脳だが、学業に対してはユージンは優秀だ。年に数回行われる試験では、常に学年首席だった。
 ……しかし、三年に進級して初めての試験で。
 クロエが全教科満点を叩き出し、二位のユージンを上回って学年主席の座についたのである。

「おめでとうございます、ミューズ!」
「おめでとう、クロエ」
「ありがとう」

 朝の登校時。廊下に貼り出された結果を見て、レーヴとソフィアが祝ってくれた。それに淑女の微笑みで応えていると、一緒に登校してきたらしいユージンとラウラがやってきた。
 ちなみに、ラウラの順位は七位である。今回、クロエ達はクラスメイトの令嬢達と勉強会をしたので成績を上げ、ソフィアは八位。レーヴは十位だった。そんな中、ラウラは相変わらずクロエ以外のクラスの女生徒の中では一番なので、やはり順位を調整していると思われる。

(もっとも、ああやって隠してはいるが、俺のことを嘲笑う辺りは馬鹿だよな)

 これでクロエは完全に、ユージンに見限られると思ったのだろう。
 しかしユージンは爽やかな笑顔で、クロエに右手を差し出してきて言ったのだ。

「おめでとう、ローラン嬢。満点なんて、素晴らしいな! 良ければ今度、私と勉強会をしてくれないか?」
「「「「は?」」」」

 ユージンの言葉に、居合わせた生徒達が声を上げたので──ラウラが表情を消し、低い声を上げたことに気づいたのはクロエくらいだった。
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