19 / 27
初撃
しおりを挟む
クロエは、無事に学年首席になれた。
もっとも自分で言うのも何だが、簡単に出来ることではない。クロエは、前世の奨学生生活で勉強すること自体に抵抗がなく、更に現世ではジャンヌの地頭が良かったのだ。王太子妃教育は最低限しか教えられなかったが、教わったこと自体はほぼ覚えていたからである。おかげで他国であっても、淑女教育の下地があったので元男のクロエとしては助かった。
だから、と言うのも何だが恋愛に対してはお花畑だが、今まで学年首席だったユージンについては、全くの馬鹿でもないと思うようになった。
(そんなジャンヌを見捨てて、ラウラを選んだのは……可愛いからだけじゃなく、打算もあるよな。ラウラは『真実の愛』の証だから)
今までは、ラウラ以上の令嬢はいなかった。
しかし、クロエ達も呆れたようにラウラの交流は偏っている。令嬢として、そして学生としてなら今のままでも良いだろうが、王太子妃としてはどうだろうか?
……クロエはこの一か月、口にこそ出さないがラウラと真逆のことをすることで、ユージンに問いかけていた。
クロエの見込み違いだったら、またラウラが思い込んでいるように女性が才を見せることを嫌がる男なら、むしろユージンはクロエのような女は嫌がるだろう。
しかし、クロエの予想通りなら──彼女を、己の相手となる天秤に乗せる。そう、こうして笑顔で手を差し出して。
「喜んで、殿下」
そう答えて、クロエはユージンと握手をした。流石に、いきなり色めいた雰囲気は出してこない。多分、口実である勉強会とやらでも、二人きりで真面目に勉強をするだろう。その間も、頭の中では色々と思い巡らせると思うが──それは、クロエとラウラを比較する為だ。
(全員とは言わないが、追われるより追う方が好きって男もいるんだよな……こうして、俺に興味を持ったところを見るとユージンはそのタイプなんだろうな)
とは言え、ユージンは一度、ジャンヌと婚約破棄している。そんなに何度も出来ることではないので、今回は慎重になるだろう。クロエはそう思ったが、ラウラにとっては十分、脅威になったようだ。
「ユージン、様……何故? 伯爵家の養女でこそありますが、ローランさんはへい」
「ラウラ」
「も、申し訳ありません」
動揺のあまり、クロエを『平民』と言おうとしたラウラを止めたのはユージンだった。微笑みでの制止で我に返り、クロエにではなくユージンに対してだった。
そんなラウラにやれやれ、というように笑みを深め、ユージンは幼子を宥めるように言った。
「君『が』言っては駄目だろう?」
「っ!?」
そう、公爵令嬢であるラウラも母親は平民である。生まれながらの貴族令嬢ならともかく、ラウラがクロエのことを平民だと貶めるのは、自分で自分の首を絞めることになる。
王族であるユージンとしては、ラウラが平民の血を引くことは理解しているし、だからこそ出た言葉だろうか──自分を公爵令嬢だと思っているラウラからすれば、突き放されたように感じたようだ。青を通り越し、真っ白になった顔色を見る限り間違いない。
(俺からは、勉強会の話を広げないでやろう……これだけで婚約破棄はないだろうが、ラウラは思ったより打たれ弱いみたいだからな)
そうじゃなければこれくらいで、失言しかける下手は打たない。もっとも、煽ってここで自滅させないのは優しさではない。ジャンヌの復讐の為には、もっともっと苦しめなければ。
「ごきげんよう」
場の空気を変えるように、クロエは微笑んでユージンに挨拶すると──レーヴ達と、少し離れていたところで控えていたオーベル達を連れて教室へと向かった。
もっとも自分で言うのも何だが、簡単に出来ることではない。クロエは、前世の奨学生生活で勉強すること自体に抵抗がなく、更に現世ではジャンヌの地頭が良かったのだ。王太子妃教育は最低限しか教えられなかったが、教わったこと自体はほぼ覚えていたからである。おかげで他国であっても、淑女教育の下地があったので元男のクロエとしては助かった。
だから、と言うのも何だが恋愛に対してはお花畑だが、今まで学年首席だったユージンについては、全くの馬鹿でもないと思うようになった。
(そんなジャンヌを見捨てて、ラウラを選んだのは……可愛いからだけじゃなく、打算もあるよな。ラウラは『真実の愛』の証だから)
今までは、ラウラ以上の令嬢はいなかった。
しかし、クロエ達も呆れたようにラウラの交流は偏っている。令嬢として、そして学生としてなら今のままでも良いだろうが、王太子妃としてはどうだろうか?
……クロエはこの一か月、口にこそ出さないがラウラと真逆のことをすることで、ユージンに問いかけていた。
クロエの見込み違いだったら、またラウラが思い込んでいるように女性が才を見せることを嫌がる男なら、むしろユージンはクロエのような女は嫌がるだろう。
しかし、クロエの予想通りなら──彼女を、己の相手となる天秤に乗せる。そう、こうして笑顔で手を差し出して。
「喜んで、殿下」
そう答えて、クロエはユージンと握手をした。流石に、いきなり色めいた雰囲気は出してこない。多分、口実である勉強会とやらでも、二人きりで真面目に勉強をするだろう。その間も、頭の中では色々と思い巡らせると思うが──それは、クロエとラウラを比較する為だ。
(全員とは言わないが、追われるより追う方が好きって男もいるんだよな……こうして、俺に興味を持ったところを見るとユージンはそのタイプなんだろうな)
とは言え、ユージンは一度、ジャンヌと婚約破棄している。そんなに何度も出来ることではないので、今回は慎重になるだろう。クロエはそう思ったが、ラウラにとっては十分、脅威になったようだ。
「ユージン、様……何故? 伯爵家の養女でこそありますが、ローランさんはへい」
「ラウラ」
「も、申し訳ありません」
動揺のあまり、クロエを『平民』と言おうとしたラウラを止めたのはユージンだった。微笑みでの制止で我に返り、クロエにではなくユージンに対してだった。
そんなラウラにやれやれ、というように笑みを深め、ユージンは幼子を宥めるように言った。
「君『が』言っては駄目だろう?」
「っ!?」
そう、公爵令嬢であるラウラも母親は平民である。生まれながらの貴族令嬢ならともかく、ラウラがクロエのことを平民だと貶めるのは、自分で自分の首を絞めることになる。
王族であるユージンとしては、ラウラが平民の血を引くことは理解しているし、だからこそ出た言葉だろうか──自分を公爵令嬢だと思っているラウラからすれば、突き放されたように感じたようだ。青を通り越し、真っ白になった顔色を見る限り間違いない。
(俺からは、勉強会の話を広げないでやろう……これだけで婚約破棄はないだろうが、ラウラは思ったより打たれ弱いみたいだからな)
そうじゃなければこれくらいで、失言しかける下手は打たない。もっとも、煽ってここで自滅させないのは優しさではない。ジャンヌの復讐の為には、もっともっと苦しめなければ。
「ごきげんよう」
場の空気を変えるように、クロエは微笑んでユージンに挨拶すると──レーヴ達と、少し離れていたところで控えていたオーベル達を連れて教室へと向かった。
4
あなたにおすすめの小説
死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」
公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。
死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」
目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。
「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」
隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。
そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……?
「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」
資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。
悪役令嬢を陥れようとして失敗したヒロインのその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
女伯グリゼルダはもう不惑の歳だが、過去に起こしたスキャンダルが原因で異性から敬遠され未だに独身だった。
二十二年前、グリゼルダは恋仲になった王太子と結託して彼の婚約者である公爵令嬢を陥れようとした。
けれど、返り討ちに遭ってしまい、結局恋人である王太子とも破局してしまったのだ。
ある時、グリゼルダは王都で開かれた仮面舞踏会に参加する。そこで、トラヴィスという年下の青年と知り合ったグリゼルダは彼と恋仲になった。そして、どんどん彼に夢中になっていく。
だが、ある日。トラヴィスは、突然グリゼルダの前から姿を消してしまう。グリゼルダはショックのあまり倒れてしまい、気づいた時には病院のベッドの上にいた。
グリゼルダは、心配そうに自分の顔を覗き込む執事にトラヴィスと連絡が取れなくなってしまったことを伝える。すると、執事は首を傾げた。
そして、困惑した様子でグリゼルダに尋ねたのだ。「トラヴィスって、一体誰ですか? そんな方、この世に存在しませんよね?」と──。
愛に代えて鮮やかな花を
ono
恋愛
公爵令嬢エリシア・グローヴナーは、舞踏会の場で王太子アリステアより婚約破棄を言い渡される。
彼の隣には無垢な平民の娘、エヴァンジェリンがいた。
王太子の真実の愛を前にしてエリシアの苦い復讐が叶うまで。
※ハッピーエンドですが、スカッとはしません。
夫が運命の番と出会いました
重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。
だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。
しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?
【完結】婚約破棄される未来見えてるので最初から婚約しないルートを選びます
22時完結
恋愛
レイリーナ・フォン・アーデルバルトは、美しく品格高い公爵令嬢。しかし、彼女はこの世界が乙女ゲームの世界であり、自分がその悪役令嬢であることを知っている。ある日、夢で見た記憶が現実となり、レイリーナとしての人生が始まる。彼女の使命は、悲惨な結末を避けて幸せを掴むこと。
エドウィン王子との婚約を避けるため、レイリーナは彼との接触を避けようとするが、彼の深い愛情に次第に心を開いていく。エドウィン王子から婚約を申し込まれるも、レイリーナは即答を避け、未来を築くために時間を求める。
悪役令嬢としての運命を変えるため、レイリーナはエドウィンとの関係を慎重に築きながら、新しい道を模索する。運命を超えて真実の愛を掴むため、彼女は一人の女性として成長し、幸せな未来を目指して歩み続ける。
遊び人の令嬢が目を付けたのは、私の真面目な婚約者でした
おいどん
恋愛
子爵家の令嬢エリーネと伯爵家の次男のノルトが婚約を結んだのは、半年前だった。
真面目で優秀なノルトに相応しい婚約者であろうとするものの、エリーネには自信がなかった。
ある日、遊び人と噂の令嬢べルティーナとノルトが共にいるところを見てしまう。
「真面目クンは壁さえ破っちゃえばこっちのもんだからね〜」
「きっと、彼女の美しさに嫉妬しているのだわ…」
「…今度は、ちゃんと言葉にするから」
実家を没落させられ恋人も奪われたので呪っていたのですが、記憶喪失になって呪わなくなった途端、相手が自滅していきました
麻宮デコ@SS短編
恋愛
「どうぞ、あの人たちに罰を与えてください。この身はどうなっても構いません」
ラルド侯爵家のドリィに自分の婚約者フィンセントを奪われ、実家すらも没落においやられてしまった伯爵家令嬢のシャナ。
毎日のように呪っていたところ、ラルド家の馬車が起こした事故に巻き込まれて記憶を失ってしまった。
しかし恨んでいる事実を忘れてしまったため、抵抗なく相手の懐に入りこむことができてしまい、そして別に恨みを晴らそうと思っているわけでもないのに、なぜか呪っていた相手たちは勝手に自滅していってしまうことになっていった。
全6話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる