13 / 24
気合いと潤いをチャージ
しおりを挟む
こうして、舞は無事に魔国へ到着した。
悪目立ちするので控えていたが商隊の面子が一同、こっそり「おぉ」「やった」と声を上げていたので、今回の旅は本当に幸運だったし嬉しかったんだろう。お役に立てて何よりである。
「ここまでありがとうございました」
「こちらこそ……さて、無事に魔国に着きました。落ち着き先が決まるまで、これから我らが行く魔国支店に泊まることも出来ますが?」
「売り上げが出なかったら、甘えますね……ご迷惑でなければ、宿を教えて貰えませんか? あと、明日から露店を出すんで皇国に帰る前にでも寄って下さいね」
「……ええ、解りました」
恩に感じたのか、セバエがそんな提案をしてくるが――そこまでお世話になるのは申し訳ないし、これからやることがどう転ぶか解らない。だから舞は、ひとまず宿に泊まって様子を見ることにしたのである。
こうして舞はセバエに宿と、あと魔国で露店を出す為の商人ギルドを教えて貰った。そして市場の一角を借りる手続きをし、宿泊の手続きを取ると舞は露店用の折り畳み机や特製竈、そして鍋を部屋に持ち込んだ。
それから安全だったとは言え、旅の疲れを取る為に風呂に行くことにした。何とこの魔国、公衆浴場があるのである。
皇国では貴族宅や高級宿じゃないと風呂はなく、盥にお湯を入れて髪や体を洗うくらいのものだ。実は、ミゲルの家がそうだったので大きいお風呂に入れるのは嬉しい。
日本の銭湯のように、お金を払う時に体を洗う用の小さい石鹸と、シャンプーもどき(これも皇国にはなかった。両方、同じ石鹸を使った)で全身を洗った後、舞は大浴場に入った。
「あー……」
途端にお湯の熱さが染み渡り、疲れがお湯に溶けるような感覚に思わず声が出てしまう。
(とりあえず、三日分露店の場所と部屋を取ったけど……どれくらい目立てば、魔王から声がかかるかしら?)
正直、売り上げが読めないので今のところだと三日が限界だ。売り上げが出ず、惨敗したらセバエに甘えることにしよう。一週間くらいは、魔国にいるのだと聞いている。
聖女ということを王宮に連絡しようかとセバエに言われたが、それだとただ利用される可能性がある。対等とまで言わなくても利用、いや、悪用されないようにするにはこちらの価値を出来るだけ示すべきだと思う。
(まあ、風呂に入れるのは解ったし、頑張ろう……大樹さん、たっくん。絶対に、帰るからね)
誓うように、祈るように夫と息子に声に出さずに語りかけた。そしてお湯を掬い、舞は不安から浮かんだ涙を洗い流した。
こうして気合いと潤いをチャージした舞は、宿にあった食事処でパンとスープ、あとローストポークを美味しく頂き、ベッドで爆睡したのだった。
悪目立ちするので控えていたが商隊の面子が一同、こっそり「おぉ」「やった」と声を上げていたので、今回の旅は本当に幸運だったし嬉しかったんだろう。お役に立てて何よりである。
「ここまでありがとうございました」
「こちらこそ……さて、無事に魔国に着きました。落ち着き先が決まるまで、これから我らが行く魔国支店に泊まることも出来ますが?」
「売り上げが出なかったら、甘えますね……ご迷惑でなければ、宿を教えて貰えませんか? あと、明日から露店を出すんで皇国に帰る前にでも寄って下さいね」
「……ええ、解りました」
恩に感じたのか、セバエがそんな提案をしてくるが――そこまでお世話になるのは申し訳ないし、これからやることがどう転ぶか解らない。だから舞は、ひとまず宿に泊まって様子を見ることにしたのである。
こうして舞はセバエに宿と、あと魔国で露店を出す為の商人ギルドを教えて貰った。そして市場の一角を借りる手続きをし、宿泊の手続きを取ると舞は露店用の折り畳み机や特製竈、そして鍋を部屋に持ち込んだ。
それから安全だったとは言え、旅の疲れを取る為に風呂に行くことにした。何とこの魔国、公衆浴場があるのである。
皇国では貴族宅や高級宿じゃないと風呂はなく、盥にお湯を入れて髪や体を洗うくらいのものだ。実は、ミゲルの家がそうだったので大きいお風呂に入れるのは嬉しい。
日本の銭湯のように、お金を払う時に体を洗う用の小さい石鹸と、シャンプーもどき(これも皇国にはなかった。両方、同じ石鹸を使った)で全身を洗った後、舞は大浴場に入った。
「あー……」
途端にお湯の熱さが染み渡り、疲れがお湯に溶けるような感覚に思わず声が出てしまう。
(とりあえず、三日分露店の場所と部屋を取ったけど……どれくらい目立てば、魔王から声がかかるかしら?)
正直、売り上げが読めないので今のところだと三日が限界だ。売り上げが出ず、惨敗したらセバエに甘えることにしよう。一週間くらいは、魔国にいるのだと聞いている。
聖女ということを王宮に連絡しようかとセバエに言われたが、それだとただ利用される可能性がある。対等とまで言わなくても利用、いや、悪用されないようにするにはこちらの価値を出来るだけ示すべきだと思う。
(まあ、風呂に入れるのは解ったし、頑張ろう……大樹さん、たっくん。絶対に、帰るからね)
誓うように、祈るように夫と息子に声に出さずに語りかけた。そしてお湯を掬い、舞は不安から浮かんだ涙を洗い流した。
こうして気合いと潤いをチャージした舞は、宿にあった食事処でパンとスープ、あとローストポークを美味しく頂き、ベッドで爆睡したのだった。
138
あなたにおすすめの小説
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。
聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!
さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ
祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き!
も……もう嫌だぁ!
半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける!
時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ!
大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。
色んなキャラ出しまくりぃ!
カクヨムでも掲載チュッ
⚠︎この物語は全てフィクションです。
⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!
異世界召喚された巫女は異世界と引き換えに日本に帰還する
白雪の雫
ファンタジー
何となく思い付いた話なので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合展開です。
聖女として召喚された巫女にして退魔師なヒロインが、今回の召喚に関わった人間を除いた命を使って元の世界へと戻る話です。
【完結】追放された転生聖女は、無手ですべてを粉砕する
ゆきむらちひろ
ファンタジー
「祈るより、殴る方が早いので」
ひとりの脳筋聖女が、本人にまったくその気がないまま、緻密に練られたシリアスな陰謀を片っ端から台無しにしていく痛快無比なアクションコメディ。
■あらすじ
聖女セレスティアは、その類稀なる聖なる力(物理)ゆえに王都から追放された。
実は彼女には前世の記憶があって、平和な日本で暮らしていたしがないOLだった。
そして今世にて、神に祈りを捧げる乙女として王国に奉仕する聖女に転生。
だがなぜかその身に宿ったのは治癒の奇跡ではなく、岩をも砕く超人的な筋力だった。
儀式はすっぽかす。祈りの言葉は覚えられない。挙句の果てには、神殿に押し入った魔物を祈祷ではなくラリアットで撃退する始末。
そんな彼女に愛想を尽かした王国は、新たに現れた完璧な治癒能力を持つ聖女リリアナを迎え入れ、セレスティアを「偽りの聖女」として追放する。
「まあ、田舎でスローライフも悪くないか」
追放された本人はいたって能天気。行く先も分からぬまま彼女は新天地を求めて旅に出る。
しかし、彼女の行く手には、王国転覆を狙う宰相が仕組んだシリアスな陰謀の影が渦巻いていた。
「お嬢さん、命が惜しければこの密書を……」
「話が長い! 要点は!? ……もういい、面倒だから全員まとめてかかってこい!」
刺客の脅しも、古代遺跡の難解な謎も、国家を揺るがす秘密の会合も、セレスティアはすべてを「考えるのが面倒くさい」の一言で片付け、その剛腕で粉砕していく。
果たしてセレスティアはスローライフを手にすることができるのか……。
※「小説家になろう」、「カクヨム」、「アルファポリス」に同内容のものを投稿しています。
※この作品以外にもいろいろと小説を投稿しています。よろしければそちらもご覧ください。
桜の花の咲く頃に
月樹《つき》
ファンタジー
私がこの世界に召喚されたのは、丁度桜の花の咲く頃だった。
私が召喚されたのは、この世界の魔王を倒すため。
この世界の人達のために命を掛けて闘ってくれと彼等は言う。それが召喚された聖女の役目だからと、当然であるかの如く…。
何のために?この世界には、私の愛する人達もいないのに…。
【 完 結 】言祝ぎの聖女
しずもり
ファンタジー
聖女ミーシェは断罪された。
『言祝ぎの聖女』の座を聖女ラヴィーナから不当に奪ったとして、聖女の資格を剥奪され国外追放の罰を受けたのだ。
だが、隣国との国境へ向かう馬車は、同乗していた聖騎士ウィルと共に崖から落ちた。
誤字脱字があると思います。見つけ次第、修正を入れています。
恋愛要素は完結までほぼありませんが、ハッピーエンド予定です。
女神に頼まれましたけど
実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。
その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。
「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」
ドンガラガッシャーン!
「ひぃぃっ!?」
情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。
※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった……
※ざまぁ要素は後日談にする予定……
私、魅了魔法なんて使ってません! なのに冷徹魔道士様の視線が熱すぎるんですけど
紗幸
恋愛
社畜女子だったユイは、気づけば異世界に召喚されていた。
慣れない魔法の世界と貴族社会の中で右往左往しながらも、なんとか穏やかに暮らし始めたある日。
なぜか王立魔道士団の団長カイルが、やたらと家に顔を出すようになる。
氷のように冷静で、美しく、周囲の誰もが一目置く男。
そんな彼が、ある日突然ユイの前で言い放った。
「……俺にかけた魅了魔法を解け」
私、そんな魔法かけてないんですけど!?
穏やかなはずの日々に彼の存在が、ユイの心を少しずつ波立たせていく。
まったりとした日常の中に、時折起こる小さな事件。
人との絆、魔法の力、そして胸の奥に芽生え始めた“想い”
異世界で、ユイは少しずつ——この世界で生きる力と、誰かを想う心を知っていく。
※タイトルのシーンは7話辺りからになります。
ゆったりと話が進みますが、よろしければお付き合いください。
※カクヨム様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる