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第六話 奴隷の証でございます
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シーモスを待つ間、イリスに家族の写真を見せた。
「タイキの家族は、みんな人間なんだねえ。わあ! 小さい子たちかわいいねえ!」
そんな感想を漏らしたイリスに、泰樹はニコニコと相好を崩した。
「そーなんだよ! チビたちはどっちもかわいい盛りでさ! どっちも詠美――カミさんに似てるんだよ。俺に似なくてホントに良かったなー」
「そうかな? こっちのコはお眼々がタイキに似てるし、こっちのコはお鼻が似てるよ!」
「へへへ……そうか?」
似ていると言われて、素直に喜ぶ。全く親バカである。泰樹はスマホに入れてある家族の写真を、全てイリスに見せた。それでもまだ、シーモスは戻ってこない。
「家族の絵、見せてくれて有り難う! それは魔具? そんなに小さいのにいっぱい絵が入ってて便利だね!」
「ああ、これはスマホって言って、魔具じゃ無くてただの機械だ。写真入れとくだけじゃ無くて、新しく撮ることも出来るんだ。そこでじっとしててくれ」
キョトンとした表情のイリスを、写真に収める。それを見せてやると、イリスは嬉しそうに声を上げた。
「わあ! これ、僕だ! 僕の絵だ! こんなに早く描けちゃうなんて!」
「これは絵じゃ無くて、写真って言うんだ。仕組みは良く解らねえけど、現実にある風景をこうやって撮しとることができるんだ」
「へえー! これ、シーモスにも見せて良い? こんな面白い物、きっと喜ぶと思うんだ!」
イリスは瞳を輝かせて笑った。その表情は、純粋な子供のようにめまぐるしく動く。
見た目の割に表情が幼いのは、彼がドラゴンだからなのだろうか。
「ああ、構わねえ。でも、電池が切れたらただの板なんだよな。これ」
「電池?」
当然のように、イリスは電池を知らない。やっぱりここは別の世界、なんだな。改めて泰樹はそう思った。
「これを動かすのに電気がいるんだよ。それを溜めてるのが電池。電池が切れたら充電し無きゃならないけど、でもここにはコンセントなんてねえしなー」
「うーん。何だか良く解んないけど、それもシーモスなら何とかしてくれるかも!」
シーモスに対して、イリスが大きな信頼を寄せているのが解る。泰樹も期待してしまう。古文書の記述が、『地球』へ帰るヒントになることを。
「お待たせいたしました」
体感で小一時間ほど。ようやくシーモスが戻ってきた。
「遅かったね」
「目当ての古文書を探すのに、手間取りました。それから、タイキ様にこれを」
そう言ってシーモスが差し出したのは、直径30cmくらいの金属の輪っかだった。
「なんだ、これ?」
「奴隷の証でございます。これを、頭からかぶって首に巻いて置いて下さいませ」
奴隷。唐突な単語に、泰樹は固まってしまった。
「……はあ?! ど、奴隷?!」
――この『島』には奴隷制なんて物があるのか。ファンタジー世界ってヤツは物騒だな。
こんな物を、どうして身に着けろというのか。いぶかしげにシーモスを見ると、彼は唇に薄く笑みを浮かべていた。
「はい。左様でございます。この輪は元々、逃亡した奴隷を見つけるための魔具なのでございます。これを身に着けていればタイキ様がこの島のどこにいらっしゃるかが解ります。念の為の……用心でございます」
「ああ、GPSみたいなもんか? でもなんで、用心しなきゃならないんだ?」
受け取った奴隷の証を眺めてみる。それは一見、ただの金属で出来た、つなぎ目のない輪っかのように見える。GPSのような、そんな機能があるようにはとても思えない。
「それは、タイキ様が『マレビト』でらっしゃるから、でございます。『ソトビト』がこの島にやって来ることすら珍しいことですのに、『マレビト』が『島』にいると解れば、皆こぞって貴方を手に入れようと奔走するでしょう。中には、手荒な真似をしてくるような輩もおりますかと。不意を突かれて、タイキ様を誘拐された時、それが役に立ちます。それに、タイキ様もこのお屋敷に篭もりきりになるのもお嫌でしょうし」
シーモスが言いたい事は何となくわかる。要するに、泰樹が迷子にならないようにGPSを持たせたいのだ。それにしても、誘拐とは。やっぱりファンタジー世界ってヤツは物騒だ。
「……これ、腕とか足用のヤツじゃ駄目か? 首に巻いとくのは何かイヤだ」
「安全を考えると、首が一番なのでございますが……それでは、腕でもよろしゅうございますよ。そのまま腕にその証を通して下さいませ」
泰樹が奴隷の証を手首にかけると、シーモスは何やら呟いた。すると、奴隷の証はしゅるりと縮まって、手首にぴったりのサイズになる。
「おお! これも魔法か?!」
「はい。左様でございます。それを外すときは私にお声掛けくださいませ。出来るだけ外さないでいただいた方がよろしいですが」
「解った」
腕時計か、ブレスレットをしているような物だ。手首に違和感は無い。
――首輪ってのはちょっとなー
親切にGPS?をくれた事には感謝するが、奴隷の証と言うのは少々引っかかる。
「なあ、これしてたら、俺も奴隷って事になるのか?」
「タイキの家族は、みんな人間なんだねえ。わあ! 小さい子たちかわいいねえ!」
そんな感想を漏らしたイリスに、泰樹はニコニコと相好を崩した。
「そーなんだよ! チビたちはどっちもかわいい盛りでさ! どっちも詠美――カミさんに似てるんだよ。俺に似なくてホントに良かったなー」
「そうかな? こっちのコはお眼々がタイキに似てるし、こっちのコはお鼻が似てるよ!」
「へへへ……そうか?」
似ていると言われて、素直に喜ぶ。全く親バカである。泰樹はスマホに入れてある家族の写真を、全てイリスに見せた。それでもまだ、シーモスは戻ってこない。
「家族の絵、見せてくれて有り難う! それは魔具? そんなに小さいのにいっぱい絵が入ってて便利だね!」
「ああ、これはスマホって言って、魔具じゃ無くてただの機械だ。写真入れとくだけじゃ無くて、新しく撮ることも出来るんだ。そこでじっとしててくれ」
キョトンとした表情のイリスを、写真に収める。それを見せてやると、イリスは嬉しそうに声を上げた。
「わあ! これ、僕だ! 僕の絵だ! こんなに早く描けちゃうなんて!」
「これは絵じゃ無くて、写真って言うんだ。仕組みは良く解らねえけど、現実にある風景をこうやって撮しとることができるんだ」
「へえー! これ、シーモスにも見せて良い? こんな面白い物、きっと喜ぶと思うんだ!」
イリスは瞳を輝かせて笑った。その表情は、純粋な子供のようにめまぐるしく動く。
見た目の割に表情が幼いのは、彼がドラゴンだからなのだろうか。
「ああ、構わねえ。でも、電池が切れたらただの板なんだよな。これ」
「電池?」
当然のように、イリスは電池を知らない。やっぱりここは別の世界、なんだな。改めて泰樹はそう思った。
「これを動かすのに電気がいるんだよ。それを溜めてるのが電池。電池が切れたら充電し無きゃならないけど、でもここにはコンセントなんてねえしなー」
「うーん。何だか良く解んないけど、それもシーモスなら何とかしてくれるかも!」
シーモスに対して、イリスが大きな信頼を寄せているのが解る。泰樹も期待してしまう。古文書の記述が、『地球』へ帰るヒントになることを。
「お待たせいたしました」
体感で小一時間ほど。ようやくシーモスが戻ってきた。
「遅かったね」
「目当ての古文書を探すのに、手間取りました。それから、タイキ様にこれを」
そう言ってシーモスが差し出したのは、直径30cmくらいの金属の輪っかだった。
「なんだ、これ?」
「奴隷の証でございます。これを、頭からかぶって首に巻いて置いて下さいませ」
奴隷。唐突な単語に、泰樹は固まってしまった。
「……はあ?! ど、奴隷?!」
――この『島』には奴隷制なんて物があるのか。ファンタジー世界ってヤツは物騒だな。
こんな物を、どうして身に着けろというのか。いぶかしげにシーモスを見ると、彼は唇に薄く笑みを浮かべていた。
「はい。左様でございます。この輪は元々、逃亡した奴隷を見つけるための魔具なのでございます。これを身に着けていればタイキ様がこの島のどこにいらっしゃるかが解ります。念の為の……用心でございます」
「ああ、GPSみたいなもんか? でもなんで、用心しなきゃならないんだ?」
受け取った奴隷の証を眺めてみる。それは一見、ただの金属で出来た、つなぎ目のない輪っかのように見える。GPSのような、そんな機能があるようにはとても思えない。
「それは、タイキ様が『マレビト』でらっしゃるから、でございます。『ソトビト』がこの島にやって来ることすら珍しいことですのに、『マレビト』が『島』にいると解れば、皆こぞって貴方を手に入れようと奔走するでしょう。中には、手荒な真似をしてくるような輩もおりますかと。不意を突かれて、タイキ様を誘拐された時、それが役に立ちます。それに、タイキ様もこのお屋敷に篭もりきりになるのもお嫌でしょうし」
シーモスが言いたい事は何となくわかる。要するに、泰樹が迷子にならないようにGPSを持たせたいのだ。それにしても、誘拐とは。やっぱりファンタジー世界ってヤツは物騒だ。
「……これ、腕とか足用のヤツじゃ駄目か? 首に巻いとくのは何かイヤだ」
「安全を考えると、首が一番なのでございますが……それでは、腕でもよろしゅうございますよ。そのまま腕にその証を通して下さいませ」
泰樹が奴隷の証を手首にかけると、シーモスは何やら呟いた。すると、奴隷の証はしゅるりと縮まって、手首にぴったりのサイズになる。
「おお! これも魔法か?!」
「はい。左様でございます。それを外すときは私にお声掛けくださいませ。出来るだけ外さないでいただいた方がよろしいですが」
「解った」
腕時計か、ブレスレットをしているような物だ。手首に違和感は無い。
――首輪ってのはちょっとなー
親切にGPS?をくれた事には感謝するが、奴隷の証と言うのは少々引っかかる。
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