スキル素潜り ~はずれスキルで成りあがる

葉月ゆな

文字の大きさ
26 / 62

第26話 準備

しおりを挟む
翌日からは、新設された桟橋近くに難破船を移動させるため、ハンスの舟でセドと一緒に島に戻る。

難破船移動途中で、大物と遭遇したらマジックバッグに入れてもらうためセドにも同行してもらっているというか、セドが退屈だから一緒に行くといったのだ。


「もう戻ってきたのか?早くないか?」

ブレナンがからかい半分で私たちに声を掛けてきた。

「難破船の移動だよ」

私は1日1隻の移動になるから、何か必要な物があれば買ってくると尋ねると、アグネスさんに聞いてくれとのこと。


「あら、どうしたの?早い戻りね」

アグネスさんに説明をして買い物があるか尋ねた。

「最終日にお肉とお魚をお願いします」

私はアグネスの希望を了承した。

アグネスからお菓子を食べて少し休憩をしてはと誘われ、お茶とクッキーをごちそうになった。

はやり、料理人がいてくれるのはいいな。


3日間、毎日1隻ずつ移動させて終わると、難破船を移動させた場所周辺で魚を獲ってから子爵領へ戻るを繰り返した。

難破船の移動が終わると、マナーの練習をするくらいで、ゆっくりと過ごすことができた。

ずっと働き詰めだったから、休みはいい気分転換になった、ブレナンたちにも休暇を取ってもらおう。




ナビア王国と我が国の両王太子殿下は、今日子爵領に到着予定だ。

はじめは我が国の王太子殿下が前日入りの予定だったが、途中で一緒に来ると連絡があった。父上いわく、同じ条件で難破船を見たいのだろうとのことだった。

我が国の王太子殿下と他国の王太子殿下も一緒に子爵領に来るなんて、最初で最後だろうな。


侍女が呼びに来たのでセドと一緒に玄関へ向かう。

「正直俺は、おまけだと思うが緊張する」

「セドにも話を振られると思うよ」

セドと雑談していたが、父上が来たので黙って両殿下たちが来られるのを待つ。


しばらくすると先頭の護衛たちが見えてきた。

玄関前に豪華な馬車が2台止まり、ドアが開くと我が国の王太子殿下が、後ろの馬車からはナビア王国の王太子殿下と思われる方が降りてこられた。


我が国のレヴァンス・アレクシオ王太子殿下は28歳、今年第二王子が生まれたため、近いうちに王様が譲位され、王になるのではないかと噂されている。

いつも冷静沈着な方で、我が国は新しい王になっても安泰だと評判も高い方だ。藍色の長い髪を後ろに括っている。


一方、ナビア王国のルパート・フォルティス王太子殿下は25歳、金色の短い髪で体格がよく、体を鍛えていることが服の上からでもわかる。

顔は無表情を装っているが、とても鋭い目だ。

すごく値踏みをされているように思う。

王太子殿下みずから他国に乗り込んでくるくらいだ、腕にも相当自信があるのだろう。


ナビア王国の建国名はフォルティス、ナビアは建国の女王陛下の名前だ。

女王陛下が30代の若さで亡くなった後を継いだ弟の国王陛下が、女王陛下を讃えて国の名前をナビアに変更したためだ。

父上が2人の王太子殿下に挨拶をしているのを私とセドは、父上の後ろで聞いている。


「今から例のものを見たいと言いたいところだが、引き上げたら夜だ、その夜の間に何か起こってしまうのは避けたい。明日の早朝から引き揚げてほしい」

父上はレヴァンス王太子殿下言葉を受けて、今度はルパート王太子殿下の方を見ると、ルパート殿下も頷かれた。

一緒に来たから、その間に打ち合わせ済なのかな。

両王太子殿下は父上の誘導で、それぞれの滞在部屋へ移動していった。


私とセドは黙ったまま、私の部屋まで移動して、部屋に入った途端に2人でふっーと息を吐く。

「ダル、やっぱり王族のオーラすごかったな」

「ほんとだね、タイプは違うのにどちらも迫力があった。この屋敷がバカでかくて助かったよ」


子爵家なのにこの屋敷は実家よりも大きい。

私とセドと父上は離れと呼ばれている建物に寝泊まりしていて、本屋敷とは繋がっているが奥まった場所にある。

しかも本屋敷は東館、西館に分かれていて、中央に食堂や玄関、応接室、執務室などがある。

なんでも領主夫妻と嫡男夫妻の関係が悪い時に増築した名残だそうだ。

離れは離婚して出戻った女性が、慰謝料で建てたものらしい。


だから2か国の王太子殿下を同じ屋敷に泊めることができるのも、この屋敷の構造上できたのだと思う。

過去の話だけれど、よくこんな大きな屋敷を作れるぐらいの資金があったんだと思うよ。



翌朝、私は両国の王太子殿下が来る前に、海に潜り3隻の難破船を桟敷近くにさらに寄せる。

今日は漁が禁止されているため小舟が通らないことと、時間短縮の意味で進めている。

準備ができたので海から上がると、父上とセドが来ていた。


「準備はできたのか」

「はい、終わりました」

父上は頷き、両国の王太子殿下もまもなく到着されるだろうと教えてくれた。

20分ほどして伯爵家の家紋がついた馬車1台を護衛の騎士たちの馬で囲んで桟敷にやって来た。


私の視線に気づいた父上が渋い顔で口を開く。

「どちらの馬車で行くか揉めたのだ」

「両殿下が同じ馬車に乗ってもよいのですか?」

「お止めしたのだが、両殿下とも場所的に1台で行くと仰せになられてだな・・・」

何かあれば父上の責任問題にもなるからな、でも押し切られたのだろう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

聖女召喚の儀式に失敗したので旅に出ます

仲室日月奈
ファンタジー
異世界から聖女を召喚する儀式を失敗した宮廷魔術師長イェレミアス。 激怒した国王によって王宮から追い出されて無職になったため、冒険者のパーティーに入れてもらおうと決意。 乗合馬車で訪れた交易都市で、異世界の少女と運命の出会いを果たす。 王宮から追放された魔術師と、僕っ子男装聖女のお話。

我々はモブである。名前は出てない。

ふくふく堂
ファンタジー
世の中、やたらめったらと王子や高位貴族が婚約破棄を突き付けるのが流行っている。それも大概卒業パーティーでだ。親の目を盗んで事を起こすのに最適な場なのかもしれないが、卒業パーティーの主役は卒業生のはずだ。そう、我々卒業生のはずなのだ。 我々は、今こそ、鬱憤を、晴らす!

僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です1~またクビになったけど、親代わりのメイドが慰めてくれるので悲しくなんてない!!~

あきくん☆ひろくん
ファンタジー
仕事を失い、居場所をなくした青年。 彼に仕えるのは――世界を救った英雄たちだった。 剣も魔法も得意ではない主人公は、 最強のメイドたちに守られながら生きている。 だが彼自身は、 「守られるだけの存在」でいることを良しとしなかった。 自分にできることは何か。 この世界で、どう生きていくべきか。 最強の力を持つ者たちと、 何者でもない一人の青年。 その主従関係は、やがて世界の歪みと過去へと繋がっていく。 本作は、 圧倒的な安心感のある日常パートと、 必要なときには本格的に描かれる戦い、 そして「守られる側の成長」を軸にした 完結済み長編ファンタジーです。 シリーズ作品の一編ですが、本作単体でもお楽しみいただけます。 最後まで安心して、一気読みしていただければ幸いです。

《完結》金貨5000枚で売られた王太子妃

ぜらちん黒糖
恋愛
​「愛している。必ず迎えに行くから待っていてくれ」 ​甘い言葉を信じて、隣国へ「人質」となった王太子妃イザベラ。 旅立ちの前の晩、二人は愛し合い、イザベラのお腹には新しい命が宿った。すぐに夫に知らせた イザベラだったが、夫から届いた返信は、信じられない内容だった。 「それは本当に私の子供なのか?」

『これも「ざまぁ」というのかな?』完結 - どうぞ「ざまぁ」を続けてくださいな・他

こうやさい
ファンタジー
 短い話を投稿するのが推奨されないということで、既存のものに足して投稿することにしました。  タイトルの固定部分は『どうぞ「ざまぁ」を続けてくださいな・他』となります。  タイトルやあらすじのみ更新されている場合がありますが、本文は近いうちに予約投稿されるはずです。  逆にタイトルの変更等が遅れる場合もあります。  こちらは現状 ・追放要素っぽいものは一応あり ・当人は満喫している  類いのシロモノを主に足していくつもりの短編集ですが次があるかは謎です。  各話タイトル横の[]内は投稿時に共通でない本来はタグに入れるのものや簡単な補足となります。主観ですし、必ず付けるとは限りません。些細な事に付いているかと思えば大きなことを付け忘れたりもします。どちらかといえば注意するため要素です。期待していると肩透かしを食う可能性が高いです。  あらすじやもう少し細かい注意書き等は公開30分後から『ぐだぐだ。(他称)』(https://www.alphapolis.co.jp/novel/628331665/878859379)で投稿されている可能性があります。よろしければどうぞ。 URL of this novel:https://www.alphapolis.co.jp/novel/628331665/750518948

ここは貴方の国ではありませんよ

水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。 厄介ごとが多いですね。 裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。 ※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。

冤罪スローライフ

一樹
ファンタジー
いろいろあったおっさんが外国で田舎暮らしする話です。 小説家になろうで連載投稿してます。

四の五の言わず離婚届にサインをしてくれません?

白雲八鈴
恋愛
アルディーラ公爵夫人であるミレーネは、他の人からみれば羨ましいと思える立場にいた。 王妹の母譲りの美人の顔立ち、公爵夫人として注目を集める立場、そして領地の運営は革命と言えるほど領地に潤いを与えていた。 だが、そんなミレーネの心の中にあるのは『早く離婚したい』だった。 順風満帆と言えるミレーネは何が不満なのか。その原因は何か。何故離婚できないのか。 そこから始まる物語である。

処理中です...