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カトリーヌ様からのお誘い
しおりを挟むカトリーヌからクラリスにお茶会の招待状が来た。
ジルベール経由の招待なら彼が即座に断ったのだろうが、クラリス・ダンテス本人宛の招待なので遥かに身分が上のカトリーヌからの誘いを断ることはできない。
ジルベールは渋々クラリスのお茶会への出席を許可したが、そもそも正式な婚約者でもないクラリスの行動を制限する権限が彼にあろうはずもなかった。
「女狐め!なにを企んでいるんだ」
ジルベールの口調は まるで悪い魔女から か弱い少女を守る正義の騎士ででもあるかのようだったが、先のダンテ侯爵家のお茶会で会ったカトリーヌが決して悪い魔女なんかではないことを確信していたクラリスは内心この生まれて初めてのご招待を喜んでいた。
「あの、カトリーヌ様はご主人様の奥様でいらしたのでしょ?」
ジルベールの機嫌を損ねたらどうしようかとビクビクしながらクラリスが問うと、
「クラリス。
ご主人様、じゃなくてジルベール」
と軽く笑ってから、何を勘違いしたのか
「あんな性格の悪い女のことなんか、私はこれっぽっちも気にかけてはいない。
クラリスが嫉妬する必要は一切無いんだよ」
と言った。
そうじゃなくて・・・。
「あ、あの・・・。
カトリーヌ様のような完璧なご令嬢の何がジルベール様にはご不満だったのでしょうか」
そして、こんなにつまらない私のどこが気に入ったのでしょうか・・・。
「あんな、自分の美しさを鼻に掛け、我がタレーランの権威を笠に着て好き放題しようなどという鼻持ちならん女は即刻叩き出してやったのだ」
カトリーヌ様はそんな女性じゃないのに・・・。
「他の女も似たり寄ったりだな。
皆、我が家の権威と財産、そして私の美貌に目の眩んだ豚どもだった」
そんなはずはない。
少なくともカトリーヌ様とエリーヌ様はそんな下劣な人間なんかじゃない。
自分で『私の美貌』と言えてしまうジルベールの方が遥かに鼻持ちならない、と思ってしまう。
「そんなことより今日は仕事で疲れたんだ。
クラリスのバイオリンで癒してくれないか」
ジルベールの要望に、はい、と素直に応じるクラリス。
『そのうち私も 豚ども の仲間入りね。
もっとも私の場合、名前も思い出してもらえないんだろうけれど』
クラリスはバイオリンを弾きながら、この
『哀れな捨て猫を拾う心優しい完璧なオレごっこ』
にジルベールが飽きるのはいつなんだろうかとぼんやり考えていた。
カトリーヌのお茶会の日、シノは上機嫌でクラリスの仕度を手伝った。
カトリーヌの目的がクラリスを苛めることだと疑わなかったからだ。
高位貴族のご令嬢達に囲まれて、クラリスがいかにジルベールと不釣り合いか思い知ればいいとほくそ笑んでいたのだ。
緊張の面持ちのクラリスを満面の笑みで迎えたのは、かつてのジルベールの4人の妻とエリーヌだった。
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