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29 ニコとラウラは雪山を目指す
しおりを挟む「ねえ、まだ休み残ってるよね?
ボクに付き合わせてばかりだったから
今度はラウラが楽しめることしようよ」
「そう言われても急には思い付かないけど・・・・。
そういえば、ここからそう遠くない所にスキー場があったと思うけど」
「スキーかぁ。ボク、やったこと無いよ。
ラウラは?」
「子供の頃に一回だけ。ちゃんと滑れた記憶は無いわ」
何事も体験というので山に向かうことにする。
観光地なので面が割れないようにニコの髪を黒く染め、サングラスをかけた。
ちょっと人相が悪くなる。
「そしてこれを被るとなんだかよく分からない人になるよね~」
ニコは大きなポンポンのついた毛糸の帽子を被る。
ラウラが笑うとニコがラウラにもお揃いの帽子を被せる。
「なんかバカっぽくない?」
「バカだもん。バカになって遊ぼ」
ニコはラウラの両手を取ってクルクル回って、小人のダンス~とはしゃいだ。
列車の窓から雪山が見えてくると、ニコは興奮して歓声を上げた。
「ラウラ見てよ!スゴイよ」
壮大な風景を眼前にラウラも思わず息を飲む。
駅は高架の上にあって、ホームからスケート場が見えてカラフルなウェアがスイスイと動いているのが見える。
「ラウラ、あれやってみたい!」
「とりあえず宿に荷物を置いて支度をしましょう」
ニコとラウラはリンクの入り口に設置された手摺りにしがみついたまま一歩も動けなくなった。
ちょっとでも動こうとすると、すてんと転んでしまうのだ。
「なんで皆スーイスーイ滑ってんの?!」
ニコがキレ気味に言うと近くにいたおじさんが笑いながら補助具を持ってきてくれた。
「これに捕まって滑ればいいよ」
ペンギンとシロクマの補助具にそれぞれ捕まってニコとラウラは大海に漕ぎ出す小舟のような不安な気持ちでリンクに踏み出した。
補助具があれば転ばないことを理解した二人はヨチヨチと歩くように進みだした。
その横を子供がスイーと通りすぎる。
ガキはバカにしたように何度も近くを通って、ニコとラウラの間に8の字を描いたりする。
「てめぇ、ケンカ売ってんのか?!」
へっぴり腰に言われても怖くもなんともない。
「ヘッタクソ、ペンギ~ン!」
「なにをー!お前ちょっと滑り方 教えろよ!」
立ち方がどうの力の抜き方がどうのとニコはしばらくガキのレクチャーを受けていた。
二人はあっという間に仲良くなったようだ。
飲み込みが早いのか運動神経がいいのかニコはすぐに簡単な滑り方をマスターすると、ラウラはここで待ってて、と言ってペンギンを連れて消えていった。
暫くしてニコは椅子型の補助具を持ってきてラウラに座ってと笑った。
丁度その時ガキがスイ~っとやって来たので、
「お前シロクマ片付けといてよ」
とニコがガキに言った。
ラウラを乗せた椅子を押してニコが滑る。
要領を得たのか次第にスピードが増してくる。
「ラウラ楽しい?」
「うん、滑ってるって感覚がする」
ニコはラウラを押してリンクを何周も回った。
ニコは運動しているから暑くなってきたようだったが、ラウラは座ったまま風を受けているので正直寒くなってしまった。
ラウラがちょっとブルッと震えるとニコはすぐに自分のマフラーを取ってラウラに巻いた。
「寒かったよね、ゴメン。ちょっと休んでホットチョコレートでも飲もう」
休憩所に行くと売店で色んな飲み物や食べ物やちょっとした土産物も売っていた。
さっきのガキが仲間のガキと3人で壁に書かれたメニューとにらめっこしている。
「よ!さっきは ありがとう。お礼になんか奢るよ」
ニコが声を掛けると三人は喜んでサイダーとホットドッグを注文した。
ホットチョコレートを頼んだニコとラウラがガキ達の隣に座る。
「地元の子なの?」
「うん」
「みんなスケート上手ね」
「この辺の子供は歩く前にスケートする子もいるんだ」
「さっきお前ジャンプしてただろう?
あれ教えてくれよ」
「無理だよ~。足折るよ」
楽しそうに子供達と戯れるニコの横顔を見ていたラウラは、ニコの少年時代にはこんな風に同年代の子供達と友情を育む時間が果たしてあったのだろうかと泣きたいような気持ちになった。
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