【旧作】美貌の冒険者は、憧れの騎士の側にいたい

市川

文字の大きさ
14 / 14
第4話 銀のペンダント

しおりを挟む
 勇者の死体はそのまま放置することにした。

「勇者とはこういう人間が選ばれるのか」

 倫理感の欠如したような言動を思い出して本音をもらすと、ユリウスは苦味のある顔をした。

「勇者は、魔族を殺しても心のくもらない者が選ばれるからね」
「……なるほど」

 妙にくもりのない瞳を思い出しながら納得する。




 そしてユリウスを故郷の村に連れ帰る、と言うとヴォルチェは全力で反対した。

「ゆ、許さねえ! ぜってぇ許さねえぞ!」
「……そうか……」

 この様子なら、村の住人たちも受け入れてくれないだろう。
 しかし、ユリウスと離れたくない……と思う。

「なら……旅に出る。どこかに俺たちを受け入れてくれる場所があるかもしれない……」
「ええ……? そんなのあるわけ……」

 ヴォルチェは眩暈がしたようだった。
 しかしスナイデルは本気だった。

「一度母さんに挨拶しに戻る。出発はそれからだ」

 至極真面目に話すと、ヴォルチェは瀕死のときよりも悪い顔色になった。

「そ……そんなことしなくていいから。それなら連れて帰ろう」
「いや……村の人たちが嫌がるだろう」
「いや、いいよ! 人間の一生なんてちっぽけだ。くたばるまでの辛抱だろう!」

 そのとき、黙っていたユリウスの肩がピクリと揺れた。
 スナイデルも胸に痛みを覚え、顔がわずかに強ばる。
 けれど、ヴォルチェは気付いていないようだった。

「俺も、みんなの説得に協力するから!」

 強く訴えられ、迷いを抱きつつ頷く。
 村に帰ると、ヴォルチェが村人たちを説得してくれた。
 勇者を倒した話などをすると許可してくれて、村の外れに家を建てて、ユリウスとふたりでの暮らしを始める。

 ユリウスは毎晩のように体を求めてきて、最初は彼に必要とされているのが嬉しくて応えていたけれど、連日になり、いよいよ人間の性欲の旺盛さに根を上げてしまう。
 ベッドの上で裸のままぐったりしながら、ふと思った。

「寿命のこと、焦っているのか……?」
「……そうかもしれないな……」

 言いながらユリウスがスナイデルをそっと抱きしめてくる。
 生肌の温もりを感じながら、スナイデルも「ユリウスが先に死んでしまったら……」と想像して恐ろしくなっていた。

「それなら……種族自体を変える魔法がないか探しに行かないか?」

 落ち着いていられずに言うと、ユリウスが瞬いた。

「……え?」
「聞いたことは無いが……もしかしたらあるかもしれない」

 ユリウスは徐々に瞳に力を強くし、「ああ……!」と頷いた。
 きっとあるはずだ……と願うように思う。
 一緒に老いることができたら……と希望を夢て見て、同時に、不安も芽生えた。

「……もし……俺が老いても、好きでいてくれるか」

 ユリウスを見つめると、彼は真摯な眼差しで答えた。

「きみの生涯を守らせてほしい」

 その言葉を聞いて、スナイデルは口元を綻ばせた。
 これからも一緒にいられることを願いながら、彼の胸元に銀の髪をすり寄せた。





END

しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

追放オメガ聖帝の幸せな結婚〜クールなスパダリ騎士に拾われて溺愛されるまで〜

あきたいぬ大好き(深凪雪花)
BL
ノルディーナ王国の聖帝サーナは、教皇のありもしない嘘のせいで聖宮から追放されてしまう。 行く当てがないサーナが国境に向かうと、そこで隣国ルミルカ王国の騎士であるムーシュと出会う。ムーシュから諸事情により偽装結婚を提案されて、サーナは期限付きの偽装結婚ならばよいと承諾し、一時的に保護してもらうことに。 異国暮らしに慣れていく中で、やがてムーシュから溺愛されるようになり……?

王太子殿下に触れた夜、月影のように想いは沈む

木風
BL
王太子殿下と共に過ごした、学園の日々。 その笑顔が眩しくて、遠くて、手を伸ばせば届くようで届かなかった。 燃えるような恋ではない。ただ、触れずに見つめ続けた冬の夜。 眠りに沈む殿下の唇が、誰かの名を呼ぶ。 それが妹の名だと知っても、離れられなかった。 「殿下が幸せなら、それでいい」 そう言い聞かせながらも、胸の奥で何かが静かに壊れていく。 赦されぬ恋を抱いたまま、彼は月影のように想いを沈めた。 ※本作は「小説家になろう」「アルファポリス」にて同時掲載しております。 表紙イラストは、雪乃さんに描いていただきました。 ※イラストは描き下ろし作品です。無断転載・無断使用・AI学習等は一切禁止しております。 ©︎月影 / 木風 雪乃

無愛想な氷の貴公子は臆病な僕だけを逃さない~十年の片想いが溶かされるまで~

たら昆布
BL
執着ヤンデレ攻め×一途受け

果たして君はこの手紙を読んで何を思うだろう?

エスミ
BL
ある時、心優しい領主が近隣の子供たちを募って十日間に及ぶバケーションの集いを催した。 貴族に限らず裕福な平民の子らも選ばれ、身分関係なく友情を深めるようにと領主は子供たちに告げた。 滞りなく期間が過ぎ、領主の願い通りさまざまな階級の子らが友人となり手を振って別れる中、フレッドとティムは生涯の友情を誓い合った。 たった十日の友人だった二人の十年を超える手紙。 ------ ・ゆるっとした設定です。何気なくお読みください。 ・手紙形式の短い文だけが続きます。 ・ところどころ文章が途切れた部分がありますが演出です。 ・外国語の手紙を翻訳したような読み心地を心がけています。 ・番号を振っていますが便宜上の連番であり内容は数年飛んでいる場合があります。 ・友情過多でBLは読後の余韻で感じられる程度かもしれません。 ・戦争の表現がありますが、手紙の中で語られる程度です。 ・魔術がある世界ですが、前面に出てくることはありません。 ・1日3回、1回に付きティムとフレッドの手紙を1通ずつ、定期的に更新します。全51通。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

『聖クロノア学院恋愛譚 』記憶を失ったベータと王族アルファ、封印された過去が愛を試すまで

るみ乃。
BL
聖クロノア学院で、記憶と感情が静かに交差する。 「君の中の、まだ知らない“俺”に、触れたかった」 記憶を失ったベータの少年・ユリス。 彼の前に現れたのは、王族の血を引くアルファ・レオンだった。 封じられた記憶。 拭いきれない心の傷。 噛み合わない言葉と、すれ違う想い。 謎に包まれた聖クロノア学院のなかで、 ふたりの距離は、近づいては揺れ、また離れていく。 触れたいのに、触れられない。 心を開けば、過去が崩れてしまう。 それでも彼らは、確かめずにはいられなかった。 ――やがて、学院の奥底に眠る真実が、静かに目を覚ます。 過去と向き合い、誰かと繋がることでしか見えない未来がある。 許し、選びなおし、そしてささやかな祈り。 孤独だった少年たちは、いつしか「願い」を知っていく。 これは、ふたりの愛の物語であると同時に、 誰かの傷が、誰かの救いへと変わっていく物語。 運命に抗うのは、誰か。 未来を選ぶのは、誰なのか。 優しさと痛みが交差する場所で、物語は紡がれる。

処理中です...