大事なものは鳥籠に

おもちDX

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新作短編です!
8話完結となります。よろしくお願いいたします!





――――――――――





 アネラは芝生で広い空を見上げ、んーっと伸びをした。秋特有の澄んだ空は、吸い込まれてしまいそうなほど高い。

「今日も平和だなぁ……」

 ここ五年ほどずっと平和な毎日を過ごしているせいで、余生を過ごす老人のように穏やかな感情を保ち続けている。まさにスローライフ。飽きるとか、そんな恐れ多いことを考えてはいけない。

 アネラはした身なのだ。いつ追手がかかり、処刑されたり追放されるかわからない。

「ずっとこの平穏が続きますように……」
「配達でーす!」

 神様に小さくお祈りをしていると、ふた月に一度この村に訪れる配達員の声がした。「はーい」と慣れ親しんだ使用人の声で応答するのが聞こえる。

 ちらと玄関先に視線を向ければ、使用人のナールが大きな箱を受け取っているところだった。この辺境では手に入らない身の回りのものや衣類を、こうして王都から手に入れているという。

 同時に彼女も配達員になにか渡そうとしている。ちょうどいい箱がなかったらしく、ナールが手首に下げているのは小さなバスケットだ。

 いつもこのタイミングで渡しているのは、王都にいる弟への贈り物だったか。この村で手に入って王都で手に入らないものなんて無いけれど、彼女がよく刺繍しているハンカチなどが入っているのだろう。

 小声で会話しているのか、二人の声は聞こえない。しかしアネラはナールの手元に気になるものが見えて、目を凝らした。
 バスケットは厳重に梱包されているようだが、細い隙間からはみ出して、中に入っているものが少しだけ見えている。

 アネラの足は二人に向かって歩みを進める。目が離せないのは、黒い、艶のあるなにか。

(なんだろう。なんか見覚えがある色……)

 かなり近くまできて、話に夢中になっていたナールがアネラの存在に気づいたとき、アネラもその贈り物の正体に気づいていた。互いに驚愕を顔に乗せる。

「僕のっ、パンティが……なんでここに!?!?」

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