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030:3人で話し合い
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うぅ……
無言の昼食会が重い。
一人ニコニコと微笑みながら朝食を摂るエステラ。サリナは完全に俯いて降参状態だ。当然だろう。相手は紛いなりにも伯爵家令嬢。平民のサリナが太刀打ちできる相手じゃない。俺が何とかしなきゃ。
とりあえず話をしよう。無言は辛い。空気が重いからな。
「それで、エステラ。貴族である君が平民の食事会にお邪魔してよかったのか?」
暗に、貴族のお前は遠慮しろという意味を込めて貴族的な言い回しで攻めてみる。すると……
「あら。貴族とは言え今は、この村でお世話になっているもの。村の一員のつもりよ?」
ほぉ?
村の一員のつもり、ねぇ。
ならばサリナが不敬をしても許してもらえるだろう。
「だってさ。サリナちゃん。こちらの令嬢は不敬をしても許してくださるらしいよ?」
俺の言葉にサリナちゃんが、わずかに顔を上げた。
「あ、あの……」
それでも相当な勇気がいる行為。身分社会が骨の髄まで染み込んでいる故の反応だな。俺はだいぶ慣れたが。それでも緊張するからな。エステラ相手にはそうでもないが。
エステラがサリナを見る。
「何か?」
笑みを深めるエステラ。その笑顔が今は恐ろしい。
「エ、エステラ様は……い、今もジンさんのことを、す、好きなんですか?」
するとエステラ。少しその表情に影を落とした。
「複雑なところね。これでも知り合ってから数えれば3年ぐらいの付き合い出し。それこそ恋人期間は4ヶ月ほどだったけど……そうね。未練がないかと言われたら嘘になるわね」
「そ、そうですか……」
「そういう貴女はどうなのかしら?」
「……す、好きです。私を綺麗だって言ってくれ、くださいました」
「そう……」
そう言ってポロポロと涙を流し始めるサリナちゃん。俺の方をエステラがチラッと見る。一瞬だが目が合った。俺は必死なサリナちゃんを援護する。
「エステラ。もうやめろ。人間として嫌いになりそうだ」
すると今度はエステラが泣きそうな表情になる。
「わ、私だって別に悪者をやりたいわけじゃないのよ」
そう言って彼女が落ち込みだした。怒ったり脅したり”しょげたり”。なんか忙しいやつだな。
だがお陰で少し俺に気持ちの余裕ができた。
「まぁな。今のエステラの立場を考えると可愛そうではあるけどさ。成人前の女の子にやるこっちゃないだろ?」
「うぅ……ごめん」
そう言って今度はエステラが俯く。何だかなぁ……
そんな俺達のやり取りを見ていたサリナちゃん。何を思ったか床に置いていた箱を持ち上げた。
「あ、あの。これ……」
そう言って見せてくれたのは彼女が作った自作のペンダント達。かなりの数がある。
「私が作った物……ジンさんが見たいって」
そういって食事が下げられたテーブルの上に木製のペンダントが並べられていく。
「これが最近のやつです」
そう言って見せられたのは鳥の羽をモチーフに掘られたペンダント。他にも幾何学模様が掘られたものや木の葉や木の実、三日月に花。猫、犬、鳥と言った物が並ぶ。どれも温かみがあり、かつ精緻だったり、時に大胆にデフォルメされていたりする。
「凄い……」
俺が思わず感嘆の声を上げる。エステラも驚いている。
「これ、貴女が作ったの?」
コクリと頷くサリナ。
「見せてもらっても良い?」
「……はい」
エステラが一個一個を見ていく。仮にも伯爵家令嬢。貧乏貴族でも俺たちより審美眼はあるだろう。その彼女が言った。
「これもこれも。すごい才能……あっ。これ、可愛い!」
そう言って猫と月をモチーフにしたペンダントと木の実のペンダントをそれぞれ持って目を輝かせている。
「あっ、その二つとも。自信作なんです。丸い感じが難しくて……難しかったです」
「いいわよ。普通に喋って」
「あっ、はい」
「こっちの羽も凄い」
「はい。それは……」
そう言って話を始めたのだった。
無言の昼食会が重い。
一人ニコニコと微笑みながら朝食を摂るエステラ。サリナは完全に俯いて降参状態だ。当然だろう。相手は紛いなりにも伯爵家令嬢。平民のサリナが太刀打ちできる相手じゃない。俺が何とかしなきゃ。
とりあえず話をしよう。無言は辛い。空気が重いからな。
「それで、エステラ。貴族である君が平民の食事会にお邪魔してよかったのか?」
暗に、貴族のお前は遠慮しろという意味を込めて貴族的な言い回しで攻めてみる。すると……
「あら。貴族とは言え今は、この村でお世話になっているもの。村の一員のつもりよ?」
ほぉ?
村の一員のつもり、ねぇ。
ならばサリナが不敬をしても許してもらえるだろう。
「だってさ。サリナちゃん。こちらの令嬢は不敬をしても許してくださるらしいよ?」
俺の言葉にサリナちゃんが、わずかに顔を上げた。
「あ、あの……」
それでも相当な勇気がいる行為。身分社会が骨の髄まで染み込んでいる故の反応だな。俺はだいぶ慣れたが。それでも緊張するからな。エステラ相手にはそうでもないが。
エステラがサリナを見る。
「何か?」
笑みを深めるエステラ。その笑顔が今は恐ろしい。
「エ、エステラ様は……い、今もジンさんのことを、す、好きなんですか?」
するとエステラ。少しその表情に影を落とした。
「複雑なところね。これでも知り合ってから数えれば3年ぐらいの付き合い出し。それこそ恋人期間は4ヶ月ほどだったけど……そうね。未練がないかと言われたら嘘になるわね」
「そ、そうですか……」
「そういう貴女はどうなのかしら?」
「……す、好きです。私を綺麗だって言ってくれ、くださいました」
「そう……」
そう言ってポロポロと涙を流し始めるサリナちゃん。俺の方をエステラがチラッと見る。一瞬だが目が合った。俺は必死なサリナちゃんを援護する。
「エステラ。もうやめろ。人間として嫌いになりそうだ」
すると今度はエステラが泣きそうな表情になる。
「わ、私だって別に悪者をやりたいわけじゃないのよ」
そう言って彼女が落ち込みだした。怒ったり脅したり”しょげたり”。なんか忙しいやつだな。
だがお陰で少し俺に気持ちの余裕ができた。
「まぁな。今のエステラの立場を考えると可愛そうではあるけどさ。成人前の女の子にやるこっちゃないだろ?」
「うぅ……ごめん」
そう言って今度はエステラが俯く。何だかなぁ……
そんな俺達のやり取りを見ていたサリナちゃん。何を思ったか床に置いていた箱を持ち上げた。
「あ、あの。これ……」
そう言って見せてくれたのは彼女が作った自作のペンダント達。かなりの数がある。
「私が作った物……ジンさんが見たいって」
そういって食事が下げられたテーブルの上に木製のペンダントが並べられていく。
「これが最近のやつです」
そう言って見せられたのは鳥の羽をモチーフに掘られたペンダント。他にも幾何学模様が掘られたものや木の葉や木の実、三日月に花。猫、犬、鳥と言った物が並ぶ。どれも温かみがあり、かつ精緻だったり、時に大胆にデフォルメされていたりする。
「凄い……」
俺が思わず感嘆の声を上げる。エステラも驚いている。
「これ、貴女が作ったの?」
コクリと頷くサリナ。
「見せてもらっても良い?」
「……はい」
エステラが一個一個を見ていく。仮にも伯爵家令嬢。貧乏貴族でも俺たちより審美眼はあるだろう。その彼女が言った。
「これもこれも。すごい才能……あっ。これ、可愛い!」
そう言って猫と月をモチーフにしたペンダントと木の実のペンダントをそれぞれ持って目を輝かせている。
「あっ、その二つとも。自信作なんです。丸い感じが難しくて……難しかったです」
「いいわよ。普通に喋って」
「あっ、はい」
「こっちの羽も凄い」
「はい。それは……」
そう言って話を始めたのだった。
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