虹のした君と手をつないで

megi

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第9章 変わりゆく世界

5 盗み聞き

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「郵便です」
「ご苦労様です」

 いつものように、外を箒で掃きながら、ゴムで束ねられた封筒を受けとる。
 日射しは、きついけど、時々、吹いてくる風が、心地よい。

  9月半ばを、過ぎると山間にあるこの地域は、街よりも季節が変わる事を早く感じる。

「あぁ、健診の結果……」

 薄緑の封筒。『西野病院』のロゴと宛先は各職員宛。郵便物は、9月始めに受けた健診の結果を報せる物だ。

「僕に、田崎さん……」

 一応、全員分あるか、確認する。

「あれっ!?」

 薄緑の封筒中に、1通だけピンク色の封筒。

『中里レディスクリック』

 宛名は、『小川 桜様』と書かれている。

「施設長、健診の結果です」
「ありがとう」
「あのう……」
「何?」
「桜さん……?」
「あぁ、桜はかかりつけで受けたのよ!」
「あぁ……」
「……心配?」
「えぇと、別の病院で受けるって言ってたから……」
「心配なんでしょ??」
「はっ、はい……」
「フフフ……大丈夫よ、若い頃からここで受けてるから」

 施設長は、そう言ってたけど……

 春子に、桜の事情は、聞いている。西野との将来の為に、きつい思いをしていた。

 何となく、想像できる……

 そして、いまだに見える。紫色のモヤモヤ。

 施設長は、心配ないと言ったが  、一瞬、青い色が見えた。

 それは、病院の待合室で待つ患者から見えた物に、似ている。

「それだは、失礼します」
「ありがとう……」

 *

「蒼空、そろそろ休憩にしようかね」
「そうですね」

 子供達が、学校に行っている午前中は、掃除、洗濯の仕事をこなしていく蒼空。

  他の職員は、事務仕事をこなしていく。
 9月からは、美桜も保育園だから、施設の中は、大人だけの静かな時間。

「食事の用意ができたから、皆を呼んできてくれる」
「はい」

 医務室に行き、ノックをしようと、腕を上げると、部屋の中から涼子と桜の声。

「そう……どのくらいだろう?」
「そんなに、長くならないと思うけど……」
「蒼空には、何て言うつもり?」
「蒼空……?」
「そうよ……」
「別に……かな……今回は検査だし……」
「そうね」

 話しが終わるタイミングを見計らって、ノックする。

「施設長、食事ですよ」
「ありがとう」
「桜さんも、一緒だったんですね!?」
「うん」

 何事も なかったように、歩いて行く2人の後ろ姿、検査結果が、気になる。

 テーブルの上に並ぶ、うどんにおにぎりが2つ。

 桜さん 、何て言うんだろう……?

「蒼空 、どうしたの? さっきから私の顔を見て……」
「あぁ……何でもないです」
「蒼空は、わかりやすいわね!」
「本当! 私と涼子の話しを聞いたのね?」
「す、すみません」
「そんなつもりは、なかったんです」
「……いいわ……」
「桜!」

 桜が 、皆に3日程、検査入院をする事を伝える。

「桜さん大丈夫何ですか?」
「大丈夫! 大丈夫!」

 保育士の山下さんが、眉を下げて泣きそうな顔をする。

「本当ですか? 本当に大丈夫ですか?」

 児童指導員の福満さんまで 、泣きそうな顔をする。

「もう……2人とも、若いから、すぐ感情的になる……検査よ! そう…… ただの検査!」
「そっ、そうですよね!」

 桜は、2人の心配を吹き飛ばすように、笑顔を見せて、ウインクをして、おどけて見せる。

「でもね……由美ちゃん」
「でも……何ですか?施設長……」
「桜が、いないと……」
「いないと……?」
「あぁ!!?? 美桜!!??」
「そう!! 美桜が、大変よぉ……」
「そうだぁ……桜さんより……うるさい人が……あっ!!??」
「ちょっと、由美ちゃん、どういうことぉ……」
「ちっ、違うんです!!!???」

 確かに、美桜が、お姉さん風吹かして、張り切りそう。

「春子さん、どうしました?」
「いやいや……」

 笑う皆、春子の顔に、一瞬、陰りが見える。

 蒼空の態度から、桜の入院が、少し強引に告げられた。

「おばさん、大丈夫だから……」
「……うん」

 昼食が終わり、片付けをしながら、2人の会話が、聞こえる。

「何で、あんたばかりがぁ……」
「もう、おばさん……」

 桜は、春子の姉の子供。桜は、幼い頃に両親を失う。子供に恵まれなかった、春子が育てた。

 2人は、親子みたいなもんだもんなぁ……

「ねぇ、蒼空」
「はい」
「おばさんの事、よろしくね!」
「もう……桜さん、3日間、開けるだけでしょ……」
「お願い!」
「はっ、はい……」

 桜の背後から、青色のシーツのような物が、桜の頭から、現れると桜を包んでいく。

 深い海のような濃い青い色……

 沈んでいかないで欲しい…… 

 桜さんを包まないで……
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