40 / 66
第9章 変わりゆく世界
6 桜がいない3日間
しおりを挟む1日目
「それじゃ 、行ってくるね」
「はい」
10月4日。検査の為に桜が、検査の為に入院する。
子供達を学校へ送り出すと、桜が出かける準備をはじめる。
「もう、美桜ちゃん、保育園だよ」
「ウウウウ」
美桜が、保育園に行かないと子犬のようにうなり声を上げる。
「どうした、美桜?」
「蒼空君、行かないって言うのよ」
「美桜、楽しいよ……保育園……」
「ウウウウ」
美桜は、その場に、座り込んで動こうとしない。
「どうしたらいいかしらねぇ……」
毎日、楽しみに保育園に行く美桜。
きっと、桜さんが留守にする事を1番悲しんでいるのは、美桜なのかもしれない。
「美桜……頑張るって、姉ちゃんと約束したよね」
「グウウウウ……」
「あなた、もう、お姉さんでしょ……」
「……」
美桜は、目から溢れる涙を制服の袖で拭いながら、桜を見つめる。
「ほらっ、立って……!」
桜が立たせると、美桜が拳を握りガッツポーズをとりニカッと笑う。
『私も頑張る! 姉ちゃんも頑張って!』
そう、言っている。
「うん、行ってくるね!」
美桜が、何度も振り返り手をふる。
「永遠の別れじゃないのにね……」
「皆、寂しいんですよ、桜さん……」
「嬉しいな」
桜は、自分の車に 乗ると、病院へ向かう。
蒼空は、声をかける事が、できなかった。
ただただ、検査が無事に、終わればいいと願うだけだった。
*
「ただいまぁ……」
「お帰り」
学校が終わり、子供達が、次々、帰ってくる。
誰もが、1度、施設を見渡すと、静か靴を脱いで、下駄箱へしまう。
「宿題すませてなぁ……」
「はぁ……い」
気の抜けた、間延びする返事。
いつもなら『返事は短く!』桜にどやされる。
「ただいまぁ」
「省吾、お帰り」
「……」
「省吾も、宿題すませて……」
「……」
省吾も元気がない。
「皆、元気ないわね」
「施設長……」
「しょうがないですよ……いつも、桜さんが、いたから……」
「桜は、幸せ者ね!」
「そうですね……」
幸せかぁ……
人から慕われ、大事に想い、想われる。
純粋な子供の態度が、それを感じさせる。
「ウウウウ」
「美桜、どうしたの?」
皆より早く帰って来た、美桜は、クッキーがのった、皿をテーブルに運び 、皆のコップを並べる。
「美桜は、偉いねぇ、春子さんのお手伝いかな?」
「アアアア」
「わかったよ、皆をよんでくるね!」
今まで、美桜は声を出さずに、顔の表情だけで、自分の気持ち伝えていたけど、最近は、言葉にならない声をだす。
多分、今のは『おやつの準備が、できたから、皆を呼んできて』かな。
「アアアア」
「はぁい」
今度は『手を洗っておいで!』かな。
「アウアア」
「いただきます!」
皆が、テーブルにつくと手を合わせる。
これが、夕食の時も同じだった。
「まるで、小さな桜だね……」
「そうです……ね……」
「アウウウウア!!」
「ハハハ……」
今のは、『おしゃべりしないで、早く食べなさい』かな。
2日目
「アウアア」
「えっ、美桜!!??」
「アアアア!」
美桜が、部屋に入ってきて、蒼空の身体を揺さぶり起こす(5時半じゃないか……)。
「蒼空さん、ごめんなさい」
当直の福満さんが、慌ててる。
「アアアア」
「眠いよぉ……」
男の子の部屋をまわって、起こしている。
「美桜ちゃん、早く起きてきちゃって……」
いつも、桜が起こしてまわる。
「しょうがないなぁ……」
美桜が、玄関に走って行くと、箒を引きずりながら戻ってきた。
「アアアア」
「はい……わかりました」
蒼空に、掃除をしろと箒を手渡す。
「最近は、桜さん……厳しくないんだけど……」
朝食を摂る子供達は、目を擦りながらご飯を口に運ぶ。
「よく食べるねぇ……」
「そっ、そうですねぇ……」
美桜は、ご飯をおかわりする。元気がいいのは、見ていて何か嬉しいけど、こうも厳しいと、余計に桜の事が、恋しくなる。
厳しいのは、施設長に対しても変わりない。
「おはよう」
「アウアアアアアア!」
「ちょっと美桜どうしたの?」
「多分ですけど、挨拶はちゃんとしなさいと、言ってます」
「えっ、したじゃない!?」
「『おはようございます』が、正しいそうです……」
「おっ、おはようございます」
「アウ!」
「今のは……」
「今のは、わかった! 『よろしい!』かしら……」
「多分……そうです」
玄関先で、職員の出勤を待って挨拶をする美桜。
「みっ、美桜ちゃん……」
「アウ!」
保育園に行く時間。行かないと言い張る美桜。
「今日は、休みましょう……」
「でも……」
保育園でも、施設の事が気になるらしくい。
ずっと、外を眺めるだけで、1日が終わる。
「ここに いる方が活発でいいかも……」
「そうですか……」
それは、大変だ。1日中この調子だと、目が離せない。
「私が 、助手になるわよ!」
「助かります……」
さすが、保育士の田崎さんだ。
*
「美桜ちゃん!?」
「ねぇ、美桜ちゃん!!??」
やはり大変だ。
あちこち動き回る美桜に、田崎さんが手を焼いている。
「あら、可愛い看護師さんねぇ」
「ごめんなさい、田島さん」
診療所まで行って、看護師の野沢さんの横に立つ始末。
「アウアウウ」
「はい、ありがとうね美桜ちゃん」
蒼空は、田崎さんと美桜の後をついていく。
「桜さんのつもり、ですかね……?」
「そうでしょうね……いつも桜さんの後をついて回ってましたもんね……」
施設に来てから美桜は、桜の後ばかりついて回っていた。いつも、桜のする事を見ていた。彼女なりに、ここを守っているつもりだろう。
微笑ましく感じるけど、桜さんより人使いが荒く、厳しい。
まっ、それは、ご愛嬌と言う事で……
3日目
「蒼空!」
「はい」
「桜が、桜が……」
「桜さんが、どかしたんですか!?」
「明日、予定通り、帰って来るって!!」
「本当ですかぁ!!」
明日、検査を終えて桜が、帰って来る。
皆が、ホッと胸を押さえる。
寝てる時は、子供なのに起きてくると、小さな桜は、、本人以上に桜。
「施設長、桜さんも子供の頃は、あんな感じですか?」
「う……ん、あんな感じ……」
「ハハハ……」
(美桜も 、大人になると……)
何故か、蒼空の中で、白衣姿の美桜を想像して苦笑しる(同じだ……!)。
「でもね……」
「あっ、春子さん!」
桜さんの両親が、生きてる頃は、おとなしくて、泣き虫だったと教えてくれた。
「1人になったら、泣き虫じゃなくなったね……」
「そうですか……」
「強くいなきゃと 、思ったのかねぇ……」
「そうね……桜……弱音をはかないものね」
桜さんは、春子さんに迷惑をかけてはいけないと、子供心に思ったのかな……
「美桜ちゃん!?」
「ちっ、違うよ!?」
紫苑の驚いた声が、聞こえる。
「おばあちゃん!! 蒼空兄ちゃん!!」
「省吾、どうした??」
「あらぁ、忘れてたわ!!??」
春子は『手伝いたい』と言った子供達に、夕食を善そい方を教えていた。
「あぁ……」
美桜が、やらかかした。せっかく用意した夕食を台無しにした。食堂がむちゃくちゃだ。
「どうすんの、僕たちご飯?」
「しょうがないわね」
「施設長……」
「蒼空、小学校の近くに、焼き肉屋があったわね」
「はい」
「明日は、皆で、食べに行こうか!」
「やった!!」
その日の夕食は、焼き肉になった。子供達は急いで、出かける支度をする。
美桜はと言うと、ヘアブラシを持ってきて、髪をとかせと春子に手渡す。
「やれやれ……こんな所も似てるんだから……」
微笑みながら美桜の髪をとく春子の瞳が、蛍光灯の光で、潤んで見える。
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完】経理部の女王様が落ちた先には
Bu-cha
恋愛
エブリスタにて恋愛トレンドランキング4位
高級なスーツ、高級な腕時計を身に付け
ピンヒールの音を響かせ歩く
“経理部の女王様”
そんな女王様が落ちた先にいたのは
虫1匹も殺せないような男だった・・・。
ベリーズカフェ総合ランキング4位
2022年上半期ベリーズカフェ総合ランキング53位
2022年下半期ベリーズカフェ総合ランキング44位
関連物語
『ソレは、脱がさないで』
ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高4位
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高2位
『大きなアナタと小さなわたしのちっぽけなプライド』
ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高13位
『初めてのベッドの上で珈琲を』
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高9位
『“こだま”の森~FUJIメゾン・ビビ』
ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高 17位
私の物語は全てがシリーズになっておりますが、どれを先に読んでも楽しめるかと思います。
伏線のようなものを回収していく物語ばかりなので、途中まではよく分からない内容となっております。
物語が進むにつれてその意味が分かっていくかと思います。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる