診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

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第2章 外科の未来、その先へ

36話 3匹のおっさん・駆け落ち

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 岩城「それなんだけどさ、いろいろ難しいんだよねえ……。

研究も途中だし、俺の代わりがいないしさ。今の研修生や後輩を見捨てるってことになるからさ……。

だから病院がそっちに出向させてくれるなら、喜んで行けるんだけどさ」

川瀬「そうなんだよねえ~。今さ、産婦人科医が少ないだろ?しかも研修生がいるから産婦人科は必須だし、代わりがいないんだよねえ──」

「まあ、そうだろうなって、夏とも話してたんだよ。だから方法は一つしかないんだ。

すべてを捨てて、駆け落ちのつもりでうちに来てほしいんだよ。

国内でやってる研究は捨てることになるけど、それでもいいのかを聞きたいんだ。

社長はたぶん、大学病院とはしがらみを持ちたくないんだよ。

手切れ金のように一回の金で済むなら惜しまないって、夏が言ってたよ。

でも、それだけじゃ済まないだろう?」

二人は互いに目を合わせると、いきなり吹き出した。

岩城「俺たち、まるで身受け人と交渉してるみたいだな~。これじゃあ、女郎と同じだよな?」

川瀬「そうだよ。俺たちが女郎だとは夢にも思わなかったよな?」

俺も一緒に笑ってしまった。

確かに、そんな感じで縛られているのは確かだよ。

「多分さ、社長は外科をメインにできるような精鋭を集めて、菜の花の中心にしたいんだと思うよ。

そして、世界でも最高のAIを使った最新型の手術機械を入れると思う。どこの病院にもないようなやつをさ」

岩城「ああ~、そうだろう?絶対そうするって思ってたんだよな~。ああ~、触らせてほしいよ~!」

「それとさ、産婦人科を入れる準備をしてくれるように、一応夏には言っておいたよ。

だから多分、作ってくれると思うよ。将来研修生を入れるなら絶対必要だからさ」

川瀬「えっえっ?研修生を入れるようにしていくのか?」

「いや、まだ先の話だよ。だってベッド数が全然足りないだろ?

だから、建物をもっともっと増やすつもりじゃないかって、俺は睨んでるんだよね」

岩城「結局、大病院を作りたいってことなんだろう?」

「いや、それは違うんだよね。社長にはきっと目的があるんだよ」

「何だよ??」 二人が声を揃えた。

「う~ん、これは俺だけの想像なんだけど……。

夏が専攻医の時に身体を壊したろ? あれは回復するだけで半年もかかったんだよ」

岩城「そうそう、あれは有名な話だよ。
なんせ浅田社長が政治力を使って、あの病院から一斉に研修医を引き上げさせて、人手不足になって、結局あの病院は潰れたんだぜ。もう親父さんは全国で有名人になったよ」

川瀬「だから今だって、菜の花はみんなに注目されてるよ」

「多分ね。その時の復讐というか、起業人の魂というか……。

理不尽な医療業界をちょっと見返してやりたいんじゃないかって思うんだよね」

川瀬「だから大学としがらみを持ちたくないのか……」

岩城「じゃあ……しょうがないよね。無理は言えないよ」

「だからさ、今度のビルができるまでに、裸で出て来られるかどうかを早めに決めてほしいんだよ」

岩城「やっぱり俺たちの裸が見たいんだな?」

どっと笑った。あははは。

川瀬「わかったよ。考えておくからさ。もし行けなかったらごめんな」

「いいよ。分かってるからさ。その時は別の女を探すけど、恨むなよ」

「くそーーっ!!」 二人の声が揃った。へへへ。


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