診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

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第5章 2号館、屋上から動き出す

81話 川瀬サイド・日曜日のご奉仕

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 「あのね、申し訳ないんですけど、日曜日に手伝ってほしいことがあるんですよ」

と、西村主任に頼まれた。

なんとなく首をかしげて、上目づかいに覗き込んでくる表情が、ちょっと小動物みたいでかわいい。

「もちろん。俺で良ければ、いくらでも使ってください」

「や~だあ、恐れ多いですよ。ほんの少し手を貸してほしいだけなんですけどね」

ちょっと照れくさそうに笑う。

「で、何をすればいいの?」

「月曜日から屋上の厨房がオープンするんです。だからその前にストック品の棚卸をして、一旦閉めておきたいんですよ。

月曜からはフーズに頼んだものが入って来ますからね」

「ははん、なるほど。いいよ」



日曜日になった。

朝食を取ったあと、棚卸をすることになった。

今朝も主任が美味しいみそ汁を作ってくれた。

具はナスと油揚げ、わかめにネギ、さらに豆腐まで。

「たっぷり入れた方が元気になりますからね」

なんて言いながらよそってくれる姿が、なんだか家庭的で可愛い。

大満足だ。――こんな幸せもあるんだね。

「川瀬先生、さっ、始めましょう」

両手でリストを胸に抱えて、ぱっと笑顔を向けられ、食品庫に連れていかれた。

畳で言うと三畳ほどの広さ。

コの字型にスチール棚が組まれていて、ストック箱や小引き出し、かごが整然と並んでいる。

初めて見たのに、すべてが一目瞭然。整理整頓の行き届いた完璧な空間だった。

――この人の頭の中も、きっとこうやって秩序立ってるんだろうな。

リストを渡される。棚の並びと同じ順番にリストが作られているそうだ。

「じゃあ、読み上げてもらえますか? 私が数えるので、数を書き入れてください」

真剣な顔で眉を寄せる仕草すら、どこか愛嬌がある。

「はい、了解」

それは30分ほどで終わった。

「次はキッチンです。使いかけも書いてほしいので、半分とか四分の一とか言いますから、記入してくださいね」

「了解」

キッチンセットの下や上の戸棚、引き出し、壁際の収納庫などにも、こまごまとしたものがぎっしりあった。

小柄な体で扉をのぞき込み、手を伸ばして奥から瓶を引っ張り出す姿に、思わず「お疲れさま」と声をかけたくなる。

こっちは1時間ほどかかった。

「はい、ありがとうございました。おかげさまで終わりました」

にっこり笑ってペコリと頭を下げる。……反則的に可愛い。

「ふっ、そう? じゃあ良かった」

「次はですね、スーパーに買い物に行きたいんですけど、お付き合いいただけますか?」

「あ~いいですよ。車を出しましょうか?」

「はい、お願いします。結構かさばるので」

嬉しそうにほっと胸に手を当てる仕草まで、妙に子どもっぽい。

それからスーパーに行ったのだが――まあ、買うわ買うわ、量がすごい。

今まで、これを一人で車なしでやっていたのか?

……これは、そりゃ疲れるわ。

ようやく買い物が終わり、お昼ごはんになった。

みんなの分が届いていて、それを主任がせっせと冷蔵庫にしまっていく。

それも主任の仕事なのか? 日曜日なんだから、みんな取りに来ればいいのに。

まあ、分からないが――とにかく買ってきたものを次々と片付けるその姿を見て、これは下手に手を出さない方がよさそうだと判断した。

俺はソファで一休み。ぼーっとしていた。

日曜なのに、すごい仕事量だ。休み時間なんてないんじゃないか?

しかも朝は五時起きだという。……何とかならないのか?

片付けが終わったかと思えば、今度は大鍋で出汁を取り始めた。

ええっ?昼ごはんは一体いつ食べるんだ?

俺はお腹が空いてきたけれど、彼女が食べていないのに先に食べるのも気が引ける。

ソファに身を沈めると、だんだんと瞼が重くなり――ウトウトし始めていた。

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