83 / 357
第5章 2号館、屋上から動き出す
81話 川瀬サイド・日曜日のご奉仕
しおりを挟む
「あのね、申し訳ないんですけど、日曜日に手伝ってほしいことがあるんですよ」
と、西村主任に頼まれた。
なんとなく首をかしげて、上目づかいに覗き込んでくる表情が、ちょっと小動物みたいでかわいい。
「もちろん。俺で良ければ、いくらでも使ってください」
「や~だあ、恐れ多いですよ。ほんの少し手を貸してほしいだけなんですけどね」
ちょっと照れくさそうに笑う。
「で、何をすればいいの?」
「月曜日から屋上の厨房がオープンするんです。だからその前にストック品の棚卸をして、一旦閉めておきたいんですよ。
月曜からはフーズに頼んだものが入って来ますからね」
「ははん、なるほど。いいよ」
*
日曜日になった。
朝食を取ったあと、棚卸をすることになった。
今朝も主任が美味しいみそ汁を作ってくれた。
具はナスと油揚げ、わかめにネギ、さらに豆腐まで。
「たっぷり入れた方が元気になりますからね」
なんて言いながらよそってくれる姿が、なんだか家庭的で可愛い。
大満足だ。――こんな幸せもあるんだね。
「川瀬先生、さっ、始めましょう」
両手でリストを胸に抱えて、ぱっと笑顔を向けられ、食品庫に連れていかれた。
畳で言うと三畳ほどの広さ。
コの字型にスチール棚が組まれていて、ストック箱や小引き出し、かごが整然と並んでいる。
初めて見たのに、すべてが一目瞭然。整理整頓の行き届いた完璧な空間だった。
――この人の頭の中も、きっとこうやって秩序立ってるんだろうな。
リストを渡される。棚の並びと同じ順番にリストが作られているそうだ。
「じゃあ、読み上げてもらえますか? 私が数えるので、数を書き入れてください」
真剣な顔で眉を寄せる仕草すら、どこか愛嬌がある。
「はい、了解」
それは30分ほどで終わった。
「次はキッチンです。使いかけも書いてほしいので、半分とか四分の一とか言いますから、記入してくださいね」
「了解」
キッチンセットの下や上の戸棚、引き出し、壁際の収納庫などにも、こまごまとしたものがぎっしりあった。
小柄な体で扉をのぞき込み、手を伸ばして奥から瓶を引っ張り出す姿に、思わず「お疲れさま」と声をかけたくなる。
こっちは1時間ほどかかった。
「はい、ありがとうございました。おかげさまで終わりました」
にっこり笑ってペコリと頭を下げる。……反則的に可愛い。
「ふっ、そう? じゃあ良かった」
「次はですね、スーパーに買い物に行きたいんですけど、お付き合いいただけますか?」
「あ~いいですよ。車を出しましょうか?」
「はい、お願いします。結構かさばるので」
嬉しそうにほっと胸に手を当てる仕草まで、妙に子どもっぽい。
それからスーパーに行ったのだが――まあ、買うわ買うわ、量がすごい。
今まで、これを一人で車なしでやっていたのか?
……これは、そりゃ疲れるわ。
ようやく買い物が終わり、お昼ごはんになった。
みんなの分が届いていて、それを主任がせっせと冷蔵庫にしまっていく。
それも主任の仕事なのか? 日曜日なんだから、みんな取りに来ればいいのに。
まあ、分からないが――とにかく買ってきたものを次々と片付けるその姿を見て、これは下手に手を出さない方がよさそうだと判断した。
俺はソファで一休み。ぼーっとしていた。
日曜なのに、すごい仕事量だ。休み時間なんてないんじゃないか?
しかも朝は五時起きだという。……何とかならないのか?
片付けが終わったかと思えば、今度は大鍋で出汁を取り始めた。
ええっ?昼ごはんは一体いつ食べるんだ?
俺はお腹が空いてきたけれど、彼女が食べていないのに先に食べるのも気が引ける。
ソファに身を沈めると、だんだんと瞼が重くなり――ウトウトし始めていた。
と、西村主任に頼まれた。
なんとなく首をかしげて、上目づかいに覗き込んでくる表情が、ちょっと小動物みたいでかわいい。
「もちろん。俺で良ければ、いくらでも使ってください」
「や~だあ、恐れ多いですよ。ほんの少し手を貸してほしいだけなんですけどね」
ちょっと照れくさそうに笑う。
「で、何をすればいいの?」
「月曜日から屋上の厨房がオープンするんです。だからその前にストック品の棚卸をして、一旦閉めておきたいんですよ。
月曜からはフーズに頼んだものが入って来ますからね」
「ははん、なるほど。いいよ」
*
日曜日になった。
朝食を取ったあと、棚卸をすることになった。
今朝も主任が美味しいみそ汁を作ってくれた。
具はナスと油揚げ、わかめにネギ、さらに豆腐まで。
「たっぷり入れた方が元気になりますからね」
なんて言いながらよそってくれる姿が、なんだか家庭的で可愛い。
大満足だ。――こんな幸せもあるんだね。
「川瀬先生、さっ、始めましょう」
両手でリストを胸に抱えて、ぱっと笑顔を向けられ、食品庫に連れていかれた。
畳で言うと三畳ほどの広さ。
コの字型にスチール棚が組まれていて、ストック箱や小引き出し、かごが整然と並んでいる。
初めて見たのに、すべてが一目瞭然。整理整頓の行き届いた完璧な空間だった。
――この人の頭の中も、きっとこうやって秩序立ってるんだろうな。
リストを渡される。棚の並びと同じ順番にリストが作られているそうだ。
「じゃあ、読み上げてもらえますか? 私が数えるので、数を書き入れてください」
真剣な顔で眉を寄せる仕草すら、どこか愛嬌がある。
「はい、了解」
それは30分ほどで終わった。
「次はキッチンです。使いかけも書いてほしいので、半分とか四分の一とか言いますから、記入してくださいね」
「了解」
キッチンセットの下や上の戸棚、引き出し、壁際の収納庫などにも、こまごまとしたものがぎっしりあった。
小柄な体で扉をのぞき込み、手を伸ばして奥から瓶を引っ張り出す姿に、思わず「お疲れさま」と声をかけたくなる。
こっちは1時間ほどかかった。
「はい、ありがとうございました。おかげさまで終わりました」
にっこり笑ってペコリと頭を下げる。……反則的に可愛い。
「ふっ、そう? じゃあ良かった」
「次はですね、スーパーに買い物に行きたいんですけど、お付き合いいただけますか?」
「あ~いいですよ。車を出しましょうか?」
「はい、お願いします。結構かさばるので」
嬉しそうにほっと胸に手を当てる仕草まで、妙に子どもっぽい。
それからスーパーに行ったのだが――まあ、買うわ買うわ、量がすごい。
今まで、これを一人で車なしでやっていたのか?
……これは、そりゃ疲れるわ。
ようやく買い物が終わり、お昼ごはんになった。
みんなの分が届いていて、それを主任がせっせと冷蔵庫にしまっていく。
それも主任の仕事なのか? 日曜日なんだから、みんな取りに来ればいいのに。
まあ、分からないが――とにかく買ってきたものを次々と片付けるその姿を見て、これは下手に手を出さない方がよさそうだと判断した。
俺はソファで一休み。ぼーっとしていた。
日曜なのに、すごい仕事量だ。休み時間なんてないんじゃないか?
しかも朝は五時起きだという。……何とかならないのか?
片付けが終わったかと思えば、今度は大鍋で出汁を取り始めた。
ええっ?昼ごはんは一体いつ食べるんだ?
俺はお腹が空いてきたけれど、彼女が食べていないのに先に食べるのも気が引ける。
ソファに身を沈めると、だんだんと瞼が重くなり――ウトウトし始めていた。
6
あなたにおすすめの小説
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
月弥総合病院
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
網代さんを怒らせたい
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「なあ。僕たち、付き合わないか?」
彼がなにを言っているのかわからなかった。
たったいま、私たちは恋愛できない体質かもしれないと告白しあったばかりなのに。
しかし彼曰く、これは練習なのらしい。
それっぽいことをしてみれば、恋がわかるかもしれない。
それでもダメなら、本当にそういう体質だったのだと諦めがつく。
それはそうかもしれないと、私は彼と付き合いはじめたのだけれど……。
和倉千代子(わくらちよこ) 23
建築デザイン会社『SkyEnd』勤務
デザイナー
黒髪パッツン前髪、おかっぱ頭であだ名は〝市松〟
ただし、そう呼ぶのは網代のみ
なんでもすぐに信じてしまい、いつも網代に騙されている
仕事も頑張る努力家
×
網代立生(あじろたつき) 28
建築デザイン会社『SkyEnd』勤務
営業兼事務
背が高く、一見優しげ
しかしけっこう慇懃無礼に毒を吐く
人の好き嫌いが激しい
常識の通じないヤツが大嫌い
恋愛のできないふたりの関係は恋に発展するのか……!?
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
純愛以上、溺愛以上〜無愛想から始まった社長令息の豹変愛は彼女を甘く包み込む~
芙月みひろ
恋愛
保険会社の事務職として勤務する
早瀬佳奈26才。
友達に頼み込まれて行った飲み会で
腹立たしいほど無愛想な高原宗輔30才と出会う。
あまりの不愉快さに
二度と会いたくないと思っていたにも関わらず
再び仕事で顔を合わせることになる。
上司のパワハラめいた嫌がらせに悩まされていた中
ふと見せる彼の優しい一面に触れて
佳奈は次第に高原に心を傾け出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる