診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

文字の大きさ
86 / 357
第5章 2号館、屋上から動き出す

84話 屋上オープン2・川瀬の心遣い

しおりを挟む
 そうだ、川瀬からメールをもらっていたんだよね。

あれを二人に伝えなきゃいけない。

三輪さんたちの方へ近づいた。

「今日から頑張ってくださいね。納品はサテの4階の物流センターで、福田陸さんが担当します。

納品時の一時預かり所として、冷凍庫や冷蔵庫も物流に用意してありますから、あとで覗いてみてください。

連絡すれば、お二人が運ばなくても福田さんが持ってきてくれます。

無理に重いものを持たなくていいんですよ。

手伝いが必要なときは、遠慮しないで言ってくださいね」

友井「本当に……こんなにしていただけるなんて夢みたいです。ねっ!」

三輪「そうですよ。感激しました。私たちのために立派な厨房を作っていただいて、本当にうれしいです」

「それは良かった。――ああ、それとちょっと聞きたいことがあるんです。

実はね、寮生の川瀬先生からの質問なんですが……寮母さんがすごく忙しいのに、出汁を取るのに毎回時間がかかっているらしいんですよ。

少しでも楽にしてあげられないかと聞いてきたんです。お二人はどうされているんですか?」

二人は顔を見合わせて、ふっと笑った。

三輪「私たちは最初に出汁を作って、スタッフみんなに飲んでもらって、一定の味になるまで練習してもらったんです。
今では大量に作って、それを使って料理しているので、毎回出汁を取る手間は要らないんですよ。

もしよろしければ、西村主任もお使いになりますか? あの出汁でよろしければ……ですけど」

「ああ、それは絶対喜んでもらえますよ。――あれ? 主任はどこかな?」

ちょうど厨房から出てきたので、呼んできてもらった。

西村「はい、何でしょう?」

「あのね、フーズではお二人がまとめて作った出汁を常備してるんですって。良かったら使わせてもらったらどうですか?」

西村「ええっ? 本当ですか? いいんですかぁ? ……助かるぅ~!」

友井「もちろん。最初に私たちが作った味を再現してもらっているので、美味しいはずですよ」

「やったー!」と飛び上がって、大喜びの主任。

――ふふふ、子どもみたいだな。

三輪「フーズのリストの中にありますから、同じように注文できますよ」

西村「ああ~うれしい。本当に助かります」

「良かったですね。実は昨日、川瀬からメールが来てたんです。

『出汁を取るのに1時間くらいかかっているから、なんとかならないかな』って」

西村「ええっ……川瀬先生が、そんなことを?」

あ……主任まで涙ぐみそうだ。

展開が早いな、川瀬もやるじゃん。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『続・聖パラダイス病院』

菊池昭仁
現代文学
『聖パラダイス病院』の続編です。こんな病院なら入院生活も悪くはありません。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

網代さんを怒らせたい

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「なあ。僕たち、付き合わないか?」 彼がなにを言っているのかわからなかった。 たったいま、私たちは恋愛できない体質かもしれないと告白しあったばかりなのに。 しかし彼曰く、これは練習なのらしい。 それっぽいことをしてみれば、恋がわかるかもしれない。 それでもダメなら、本当にそういう体質だったのだと諦めがつく。 それはそうかもしれないと、私は彼と付き合いはじめたのだけれど……。 和倉千代子(わくらちよこ) 23 建築デザイン会社『SkyEnd』勤務 デザイナー 黒髪パッツン前髪、おかっぱ頭であだ名は〝市松〟 ただし、そう呼ぶのは網代のみ なんでもすぐに信じてしまい、いつも網代に騙されている 仕事も頑張る努力家 × 網代立生(あじろたつき) 28 建築デザイン会社『SkyEnd』勤務 営業兼事務 背が高く、一見優しげ しかしけっこう慇懃無礼に毒を吐く 人の好き嫌いが激しい 常識の通じないヤツが大嫌い 恋愛のできないふたりの関係は恋に発展するのか……!?

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

純愛以上、溺愛以上〜無愛想から始まった社長令息の豹変愛は彼女を甘く包み込む~

芙月みひろ
恋愛
保険会社の事務職として勤務する 早瀬佳奈26才。 友達に頼み込まれて行った飲み会で 腹立たしいほど無愛想な高原宗輔30才と出会う。 あまりの不愉快さに 二度と会いたくないと思っていたにも関わらず 再び仕事で顔を合わせることになる。 上司のパワハラめいた嫌がらせに悩まされていた中 ふと見せる彼の優しい一面に触れて 佳奈は次第に高原に心を傾け出す。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

処理中です...