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第5章 2号館、屋上から動き出す
86話 介護を乗り越えて
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三輪さんや友井さんが来てくれたことで、前から気になっていたことを聞いてみようと思った。
屋上の厨房に向かうと、二人は「なんだろう?」という少し緊張した表情をしていた。
「あのう、実はね。5階の部屋に佐久間先生の奥様なんですが、介護が必要な方がいらっしゃるんですよ。
これから入院用の介護食も作るでしょう?
できれば奥様に試食していただいて、感想をもらったらどうかなと思ったんですよ。
毎日寝ているだけじゃ飽きてしまうでしょうし、目新しいことがあれば楽しいんじゃないかと思って」
三輪「あらまあ、本館にそんな方がいらっしゃるなんて思いもしませんでした。
もちろんお嫌でなければ、ぜひお願いしたいくらいです」
友井「そうですよ。寝ているだけじゃつまらないですものね」
「ありがとうございます。良かったら今からお会いになりませんか? お好みを聞いた方がいいかもしれません」
三輪「はい。じゃあこれから伺いましょうか?」
二人は喜んでついてきてくれた。
5階の外科フロアに行くと、佐久間先生が不思議そうな顔でこちらを見た。
「佐久間先生。こちらは屋上の厨房で、これから2号館の病院食を開発してくださる三輪さんと友井さんです。
実は奥様に病人食の試食をお願いして、感想を書いていただけたらと思いまして。どうでしょうか?」
佐久間「わあ、そんなことが出来るんですか? うれしいなあ。女房もきっと喜びます。ありがとうございます」
「それでお好みを直接聞いていただこうと思って、お連れしました」
佐久間「はいはい、どうぞ。ご案内します。いつでも来てやってください。妻は良子といいます。いつも退屈しているんですよ」
奥のスイートルームのドアを開けると、ベッドの良子さんが不思議そうにこちらを見た。
「良子、こちらのお二人は屋上の厨房で、これから病院食を開発される三輪さんと友井さんだよ」
良子「はじめまして。良子です。よろしくお願いします」
三輪「はじめまして。実はお食事を作るのに試食をお願いできる方がいないと思っていたんです。お願いしてもよろしいですか?」
良子「まあ、私がですか? いいんですか?」
友井「もちろんですよ。いろんなものを作ると思いますが、褒めなくていいんです。正直な感想をいただければ、それが一番ありがたいんです。ねっ!」
三輪さんも大きくうなずいた。
「食事のお好みはありますか? 召し上がれないものはありませんか?」
やり取りが始まったのを見届けて、俺は「では」と頭を下げ、佐久間先生と一緒に部屋を出た。
廊下に出ると、佐久間先生が深々と頭を下げてきた。
「院長……本当に、何もかもお気遣いいただいてありがとうございます。感謝するばかりです」
「いえいえ、たまたま思いついただけですよ。それよりも――ちょっと気になることがあるんですが。お風呂はどうされてますか?」
佐久間「私が毎日、身体を拭いてあげています」
「もしよろしければ、うちの送迎車が介護施設にも寄ります。
そこでお風呂に入れてもらったらどうでしょう? 介護保険で利用できますし、気晴らしにもなりますよ。
それに作業療法も楽しいことがいっぱいあります。
声を出す練習なんかもあって、きっと気分が変わります。
せっかくここにいらっしゃるんですから、ぜひご利用ください」
そう伝えると、佐久間先生は唇をきゅっと結び、目に涙を浮かべられた。
「なんと言っていいか……今は言葉が出ません。妻がすごく喜ぶと思います。よろしくお願いします」
「はい、分かりました。早速手配します。担当をつけてあとで伺わせますね。お大事になさってください」
先生はうんうんと何度もうなずきながら、涙をこぼしていた。
俺も一緒に深くうなずいて、そのまま失礼した。
屋上の厨房に向かうと、二人は「なんだろう?」という少し緊張した表情をしていた。
「あのう、実はね。5階の部屋に佐久間先生の奥様なんですが、介護が必要な方がいらっしゃるんですよ。
これから入院用の介護食も作るでしょう?
できれば奥様に試食していただいて、感想をもらったらどうかなと思ったんですよ。
毎日寝ているだけじゃ飽きてしまうでしょうし、目新しいことがあれば楽しいんじゃないかと思って」
三輪「あらまあ、本館にそんな方がいらっしゃるなんて思いもしませんでした。
もちろんお嫌でなければ、ぜひお願いしたいくらいです」
友井「そうですよ。寝ているだけじゃつまらないですものね」
「ありがとうございます。良かったら今からお会いになりませんか? お好みを聞いた方がいいかもしれません」
三輪「はい。じゃあこれから伺いましょうか?」
二人は喜んでついてきてくれた。
5階の外科フロアに行くと、佐久間先生が不思議そうな顔でこちらを見た。
「佐久間先生。こちらは屋上の厨房で、これから2号館の病院食を開発してくださる三輪さんと友井さんです。
実は奥様に病人食の試食をお願いして、感想を書いていただけたらと思いまして。どうでしょうか?」
佐久間「わあ、そんなことが出来るんですか? うれしいなあ。女房もきっと喜びます。ありがとうございます」
「それでお好みを直接聞いていただこうと思って、お連れしました」
佐久間「はいはい、どうぞ。ご案内します。いつでも来てやってください。妻は良子といいます。いつも退屈しているんですよ」
奥のスイートルームのドアを開けると、ベッドの良子さんが不思議そうにこちらを見た。
「良子、こちらのお二人は屋上の厨房で、これから病院食を開発される三輪さんと友井さんだよ」
良子「はじめまして。良子です。よろしくお願いします」
三輪「はじめまして。実はお食事を作るのに試食をお願いできる方がいないと思っていたんです。お願いしてもよろしいですか?」
良子「まあ、私がですか? いいんですか?」
友井「もちろんですよ。いろんなものを作ると思いますが、褒めなくていいんです。正直な感想をいただければ、それが一番ありがたいんです。ねっ!」
三輪さんも大きくうなずいた。
「食事のお好みはありますか? 召し上がれないものはありませんか?」
やり取りが始まったのを見届けて、俺は「では」と頭を下げ、佐久間先生と一緒に部屋を出た。
廊下に出ると、佐久間先生が深々と頭を下げてきた。
「院長……本当に、何もかもお気遣いいただいてありがとうございます。感謝するばかりです」
「いえいえ、たまたま思いついただけですよ。それよりも――ちょっと気になることがあるんですが。お風呂はどうされてますか?」
佐久間「私が毎日、身体を拭いてあげています」
「もしよろしければ、うちの送迎車が介護施設にも寄ります。
そこでお風呂に入れてもらったらどうでしょう? 介護保険で利用できますし、気晴らしにもなりますよ。
それに作業療法も楽しいことがいっぱいあります。
声を出す練習なんかもあって、きっと気分が変わります。
せっかくここにいらっしゃるんですから、ぜひご利用ください」
そう伝えると、佐久間先生は唇をきゅっと結び、目に涙を浮かべられた。
「なんと言っていいか……今は言葉が出ません。妻がすごく喜ぶと思います。よろしくお願いします」
「はい、分かりました。早速手配します。担当をつけてあとで伺わせますね。お大事になさってください」
先生はうんうんと何度もうなずきながら、涙をこぼしていた。
俺も一緒に深くうなずいて、そのまま失礼した。
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