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第5章 2号館、屋上から動き出す
87話 宮本師長サイド・ケアプランなら任せて
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院長がひょっこり顔を出された。珍しい。
院長「ねえ、お願いがあるんですよ。佐久間先生の奥様に担当者をつけたいんだけど、誰かいないかな?」
「どういうことをご希望ですか?」
院長「佐久間先生の奥様、良子さんって言うんだけどね。
今は身体を拭くだけだから、お風呂に入れてあげたいんだ。
それに、せっかく作業療法もあるから箱庭作りとか、気分転換になることもしてほしい。
あとはね、話し相手が佐久間先生しかいないと退屈だろうし、声を出す訓練なんかもいいと思うんだよ。
……そういう手配をお願いしたいんだ」
「はい、かしこまりました。私が担当いたします」
すると横で聞いていた作業療法士の中村さんが笑顔で口をはさんだ。
「院長、実は宮本師長、最近ケアマネの資格を取ったんですよ。ご存じでした?」
院長「ええ? 本当? 知らなかった! なんで言わなかったの? 資格手当もつくのに」
「いや……なんだか恥ずかしくて」
院長「いやいや、助かった! さすが師長だよ。感心した。じゃあお願いしてもいいかな? 理事にもちゃんと伝えておくよ」
「はい、かしこまりました。お任せください」
――こうして私は、菜の花で初めてケアプランを立てることになった。
さあ、張り切るぞ。
必要書類を抱えて5階へ向かった。
まずは佐久間先生にご挨拶しなければ。
ちょうど外来が途切れたところで声をかける。
「あれっ? 君は看護師長さんだったよね?」
「はい、宮本です。よろしくお願いします。今日はケアマネージャーとしてお話を伺いに参りました」
「ええ? そうなの? いやあ、ありがたいね。本当に菜の花はなんでも可能なんだね」
その場で外科の診療を速見先生にお願いして、私は聞き取り調査を開始した。
――わあ、初めて資格が生きる。うれしい。
奥様の良子さんにもお会いして、食事の好みや体調、楽しみにしていることなどを詳しく伺えた。
あとは介護施設でのお風呂や、作業療法室で受けられるプログラムをどう組み込むか、プランにまとめていかないと。
まずは佐久間先生に必要書類を書いていただいた。
ああ……これで少しはお役に立てたかな。
思えば、院長先生は本当にやさしい。
主人もそのやさしさで救われた一人だ。
昔、専攻医だった時に、大学病院の手術中にメスを内臓に落としてしまい、患者を危うくした。
岩城先生が何とか患者を助けてくれたが、以来怖くてメスが持てなくなり、医者を諦めて田舎に引っ込んだ彼を、岩城先生が無理やり引っ張って院長先生に託してくれた。
お陰で院長先生が菜の花に引き取ってくださり、メスも持てるように院長先生が切る時に手を添えてくれたんだって。
今では専攻医として大学病院に復帰できている。
そうでなければ、今頃は医者を諦めて田舎の造り酒屋を継いでいたと思う。
その話になると、彼はいまでも涙ぐんでしまう。
――これで私も、ひとつ恩返しができた。
資格を取って、本当に良かった。
院長「ねえ、お願いがあるんですよ。佐久間先生の奥様に担当者をつけたいんだけど、誰かいないかな?」
「どういうことをご希望ですか?」
院長「佐久間先生の奥様、良子さんって言うんだけどね。
今は身体を拭くだけだから、お風呂に入れてあげたいんだ。
それに、せっかく作業療法もあるから箱庭作りとか、気分転換になることもしてほしい。
あとはね、話し相手が佐久間先生しかいないと退屈だろうし、声を出す訓練なんかもいいと思うんだよ。
……そういう手配をお願いしたいんだ」
「はい、かしこまりました。私が担当いたします」
すると横で聞いていた作業療法士の中村さんが笑顔で口をはさんだ。
「院長、実は宮本師長、最近ケアマネの資格を取ったんですよ。ご存じでした?」
院長「ええ? 本当? 知らなかった! なんで言わなかったの? 資格手当もつくのに」
「いや……なんだか恥ずかしくて」
院長「いやいや、助かった! さすが師長だよ。感心した。じゃあお願いしてもいいかな? 理事にもちゃんと伝えておくよ」
「はい、かしこまりました。お任せください」
――こうして私は、菜の花で初めてケアプランを立てることになった。
さあ、張り切るぞ。
必要書類を抱えて5階へ向かった。
まずは佐久間先生にご挨拶しなければ。
ちょうど外来が途切れたところで声をかける。
「あれっ? 君は看護師長さんだったよね?」
「はい、宮本です。よろしくお願いします。今日はケアマネージャーとしてお話を伺いに参りました」
「ええ? そうなの? いやあ、ありがたいね。本当に菜の花はなんでも可能なんだね」
その場で外科の診療を速見先生にお願いして、私は聞き取り調査を開始した。
――わあ、初めて資格が生きる。うれしい。
奥様の良子さんにもお会いして、食事の好みや体調、楽しみにしていることなどを詳しく伺えた。
あとは介護施設でのお風呂や、作業療法室で受けられるプログラムをどう組み込むか、プランにまとめていかないと。
まずは佐久間先生に必要書類を書いていただいた。
ああ……これで少しはお役に立てたかな。
思えば、院長先生は本当にやさしい。
主人もそのやさしさで救われた一人だ。
昔、専攻医だった時に、大学病院の手術中にメスを内臓に落としてしまい、患者を危うくした。
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お陰で院長先生が菜の花に引き取ってくださり、メスも持てるように院長先生が切る時に手を添えてくれたんだって。
今では専攻医として大学病院に復帰できている。
そうでなければ、今頃は医者を諦めて田舎の造り酒屋を継いでいたと思う。
その話になると、彼はいまでも涙ぐんでしまう。
――これで私も、ひとつ恩返しができた。
資格を取って、本当に良かった。
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