診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

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第11章 新しいステージへ

205話 目ぱちくり

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 翌日もまだ吐き気が残り、頭痛も収まらなかった。

青山先生が往診に来てくれた。

呼んだわけではなさそうだから、夏の顔が見られない。

しょうがないから、目をつぶっていた。

「院長、具合はどうですか?」

声をかけられて目を開けると、青山先生が少し笑っていた。

……ダメだ。向こうが笑うと、俺もつられて笑ってしまう。

ちょっと堪えるのが苦しくて、横を向いた。

「はい、ありがとうございます。わざわざすみません」

ちらっと夏の顔を見ると、横を向いていた。ぷっ。

「今日は吐き気や頭痛、腹痛はどうですか?」

「まだちょっと残ってますね。なんとか連休が始まるまでに収まらないでしょうか?」

「う~ん……どうかなあ? あと2日くらい点滴をしたら、効果が出てくると思いますけどねえ」

「はい、じゃあお願いします」

「点滴の中にいろいろな薬を入れておきますからね。多分、大丈夫だと思いますよ。
それまでゆっくり仕事を休めばいいじゃないですか?」

青山先生が意味ありげに、目をぱちぱちさせた。

……もう~、また吹き出しそうになった。

「では、また様子を見に来ますね。失礼します」
「理事、処方を出しますので、点滴をお願いしていいですか?」
「はい、わかりました。ありがとうございました」
そして彼は帰っていった。

「お兄さん、点滴をもらってくるね」
「うん、ありがとうね……夏、ちょっとそばにおいで」
「なあに?」

両手を出して抱きしめた。そしてキスをした。

リスのような、かわいい目で俺を見つめる。……反則だ。

「い……って来るね」

「うん、頼むね」

そのまま、また眠ったようだ。

知らない間に点滴が始まっていた。

夏は心配げに俺を見つめていた。

「夏、ずっとそこにいたの?」

「うん、ずっとお兄さんのそばにいるよ」

「連休のホテル、まだ予約したままだよね?」

「うん、まだ分からないから、そのままにしてる」

「いいよ。俺もきっと治ってると思うから、一緒に出かけよう」

夏は俺の胸に顔を寄せた。

「お兄さん、無理しなくていいよ。桃香や莉子は俺が連れていくよ。

お兄さんは家でゆっくり休んでていいよ」

「俺を連れて行かないつもりか?」

「ええ?」と夏が笑った。

「うん。分かった、みんなで行こう。お兄さんはホテルで寝てればいいよ」

……ああ、結局思い通りになってしまった。

でも、これは不可抗力だよ。

それから28日になって、ようやく仕事に復帰した。

ずっと休んでしまったので、朝礼で挨拶とお礼を伝えた。

なんせ、明日からまた休みが続くから、申し訳ないしね。

山科看護部長が言った。

「院長、連休中に身体を壊さないでくださいね。
やっぱり院長が寝込んでると、みんな元気がなくなるんですよ。知らないと思いますが」

花井部長も笑いながら言う。
「そうですよ。俺ではどうもダメみたいですよ」

桐生君がそばでニヤニヤしていた。
……なんか言いたいのか?

「桐生君、何か言いたいことがあるの?」

「いえ、みんな同じだなあと思ったんですよ。
みんなも、なんだか表情が冴えない感じになるんですよね」

「へえ~、そうなの?」

……残念だ。今度は録画して見せてもらおうかな?

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