診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

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第12章 夏デビューへ

226話 リハーサルはスルー

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 夏は、どんどん踊りがうまくなっているようだ。

いよいよ、明日土曜日がリハーサルとなった。

今日は、最後の合宿日であり健診日。

皆を診察すると、何か張りつめたような緊張感が漂っていた。

それも当然かもしれない。大きな公演が控えているのだから。

しかも、素人の夏が入ることで、皆にも心理的な負担をかけているのではないかと思った。

俺は、大事な酸素ボンベの残量を確認した。

かなり減っていたので、至急本番用に取り寄せてほしいとお願いした。

それだけ、詰めて練習しているということだよね。

夏も無口になっていた。だんだんプレッシャーが重くなってきているのだろう。

何か声をかけてやりたかったが、スタッフの緊張感もピリピリしていて、そんなチャンスはなかった。

残念なまま、合宿所をあとにした。

そういえば、夏の歌ってどうなってるのかな?

未だに分からない。だって「聞かないで」って言うんだもん。

莉子も不思議がっていた。

「どうなってるの?」と聞かれても、俺には分からないよ。

ダンスの時しか呼ばれないからさ。


帰宅して長室に戻ると、桐生さんに日曜日のバスの具合を聞いた。

桐生「大丈夫だと思いますよ。観光会社も、ちゃんと順序よく菜の花に迎えに来てくれることになってるんですよ」
「ふ~ん、帰りは?」

桐生「帰りも、会場の駐車場に停めたままでいいことになったそうです。多分、事務所の社長が押さえてくれたんじゃないですかねえ。特には聞いていないんですけどね。だって400人ですよ。優遇していただいてもいい気がします」

「ふっ、そうだね。でも、せっかく集まったなら、そのまま帰るのもちょっと心残りだね。地方の人も皆出て来るんだろう?」

桐生「そうなんですよ。でも、ホテルが取れない人たちからヘルプがいっぱい来ているんです。どうしましょう?」

「いいよ。レジデンスがいっぱいなら、本館やサテの静養室のベッドでもいいじゃない? どこでも使ってもらっていいよ。お風呂もサテでもいいし、5階のシャワーでもいいしね」

桐生「はい。ありがとうございます。実は……もう“良い”と言っちゃいました。院長がお留守だったので、きっとそうおっしゃっていただけると思いました。
大きなコンサートがある時は、どこもホテルがいっぱいになるらしいんですよ。だから半年前とかに予約するものらしいんですよ。でも、うちは出だしが遅かったから、はみ出ちゃったんですよね」

「なんだ、心配して損した」笑った。

「ああ……でも明日がリハーサルなんだよねえ。どうなってるのかな? 全然分からないんだよねえ」

桐生「もしかしたら、サプライズがあるんじゃないですか?」

「う~ん、それならいいけどさ。それにしても芸能界って大変だねえ。夏も嫌というほど分かったと思うよ。メンバーからも“戻った方が幸せだよ”って言われてたしね」

「ああ、問題は歌! まだ俺は一回も聞いたことがないんだよ! どうしよう‥‥‥」

桐生「院長、落ち着いてください。向こうもプロですから、お金が取れないことはしませんよ。だから、出るにせよ出ないにせよ、心配しなくていいと思いますよ」

「ああ~ドキドキする」

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