診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

文字の大きさ
239 / 357
第12章 夏デビューへ

237話 大人になるということ

しおりを挟む
 昼食に帰宅した。桃香も夏休みで、そろそろ塾から帰ってくる頃だ。

莉子が冷茶を淹れてくれた。

「桃香がまだ帰って来ないのよ」

「うん? 遅いね」もう12時を過ぎていた。

いつもならとっくに帰ってくる頃なんだけど……。

そこへ、なんだかしょんぼりとした様子の桃香が帰って来た。

そしてうつむいたまま、パーッと自分の部屋に行った。

驚いて莉子と思わず顔を合わせた。

莉子がすぐ桃香の部屋に行った。

しばらくすると、莉子は微妙な表情で戻って来た。

「桃香はどうしたの?」

うふふふ……と頬笑んでいた。

「なあに?」

「あのね、桃香が女の子になっちゃった」

……マジか。信じられん。

「それで今どうしてるの?」

「寝てる。びっくりしたんじゃないの?」

ああ~なんだかなあ。頭を抱えた。すぐには受け入れられない。

夏が聞いたら、多分熱を出すな。ははっ。

「じゃあ、ご飯はどうするの?」

「あとで何か持って行くよ」

「今俺が行ったら駄目だよね?」

「絶対ダメ」ふっ、そうか。男親は寂しいもんだな。

そこへ、夏がボーカルレッスンを終えて帰って来た。

「あれ? 桃は?」

俺が”言ってよ”とばかりに、莉子にちょっと顎をしゃくった。

そしたら、”いや~よ~”と首を横にふったので、じゃあ、どうするよ……?

夏「すみませんけど、全然分かんないですけど、桃はどうしたんですか?」

しょうがないから、<menses>とメモ紙に書いた。

「これがショックで寝てるみたいよ」

すると夏は両手で顔を覆った。ぷぷ。

「あー、そっちもショックみたいだな。ご飯食べれるか?」

「一応食べる」

ぷーっと莉子と一緒に吹き出した。

その後は、3人で食事を取った。

「デザートは食べるか?」

「食べる」と二人とも返事をしたから、大人は大丈夫そうだな。

冷凍いちごにミルクとお砂糖をかけたものを出した。

これは、だんだんイチゴが解けてくるので、それをつぶしながら混ぜて食べる。
ミキサーにかけてもいいんだけど、あとでミキサーを洗うのが面倒。
結構、つぶしながら食べるのも楽しいし、それも美味しいんだよね。

ガラスの器にいちごをいっぱい入れて食べると、冷たくて身体中がすっきりする。
真夏の楽しいデザートだ。

「夏、今日のボーカルレッスンはどうだったの?」

「うん、なんとかね。よく分かんないよ。コンサートではなんで歌えたのか?全然分かんないよ」

「へえ~そうなんだ。まあ、長く続ければ、そのうちに華が開くよ」


それでも表情が冴えない。慰めがあまり耳に入っていない。

「夏、歌も芸術なんだから、簡単には制覇できないんじゃないの?」

「うん、そうだよね。ゲームとは違うもんね……」

「疲れたなら、あとで少し休めば?」

「うん。お兄さんはどうするの?」

「お兄様はお仕事ですよ」

莉子がぷーっと吹き出した。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『続・聖パラダイス病院』

菊池昭仁
現代文学
『聖パラダイス病院』の続編です。こんな病院なら入院生活も悪くはありません。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

網代さんを怒らせたい

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「なあ。僕たち、付き合わないか?」 彼がなにを言っているのかわからなかった。 たったいま、私たちは恋愛できない体質かもしれないと告白しあったばかりなのに。 しかし彼曰く、これは練習なのらしい。 それっぽいことをしてみれば、恋がわかるかもしれない。 それでもダメなら、本当にそういう体質だったのだと諦めがつく。 それはそうかもしれないと、私は彼と付き合いはじめたのだけれど……。 和倉千代子(わくらちよこ) 23 建築デザイン会社『SkyEnd』勤務 デザイナー 黒髪パッツン前髪、おかっぱ頭であだ名は〝市松〟 ただし、そう呼ぶのは網代のみ なんでもすぐに信じてしまい、いつも網代に騙されている 仕事も頑張る努力家 × 網代立生(あじろたつき) 28 建築デザイン会社『SkyEnd』勤務 営業兼事務 背が高く、一見優しげ しかしけっこう慇懃無礼に毒を吐く 人の好き嫌いが激しい 常識の通じないヤツが大嫌い 恋愛のできないふたりの関係は恋に発展するのか……!?

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

純愛以上、溺愛以上〜無愛想から始まった社長令息の豹変愛は彼女を甘く包み込む~

芙月みひろ
恋愛
保険会社の事務職として勤務する 早瀬佳奈26才。 友達に頼み込まれて行った飲み会で 腹立たしいほど無愛想な高原宗輔30才と出会う。 あまりの不愉快さに 二度と会いたくないと思っていたにも関わらず 再び仕事で顔を合わせることになる。 上司のパワハラめいた嫌がらせに悩まされていた中 ふと見せる彼の優しい一面に触れて 佳奈は次第に高原に心を傾け出す。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

処理中です...