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第13章 菜の花の新しい風
251話 走馬灯のように
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すべてのやるべきことが終わり、組織も整い、俺も夏も手を出さなくても動き始めた。
ようやくだ。
本当に、やっとのことで追いついてきたんだ。
本当は、いつもこうして整った状態で進められたら良かったんだけど、
物事の進むスピードが速すぎて、整う前に走り出してしまっていた。
これは俺だけじゃない。みんながそうだったと思う。
周りのスタッフもついてきてくれて、心から感謝したい。
ここまでが長かったから、本当に、ほっとした。
この12年間は、溺愛していた義妹の莉子が大学に入って、俺のマンションに越してきたころから始まった。
その頃の俺は、週に3日は大学病院で心療内科の診療、週に2日はオンライン診療をしていた。
病気がちな莉子を抱えての仕事と家事は、本当に大変だった。
莉子は大学でもしょっちゅう倒れて、迎えに行ったり、勉強の遅れを家庭教師にお願いしたり——
俺も莉子も、必死だった。
そんな中で現れた救いの神が、夏だった。
夏は莉子の大学の同級生だ。
倒れる莉子を助けようと、グループを作って守ってくれた。
その姿が何度も重なって、俺は次第に夏を深く信頼するようになっていた。
その頃には、もう莉子と結婚していた。
莉子の病気の治療のために、結婚を急いだ。
それでも夏は、変わらず莉子を助けてくれた。
俺がいなくても、夏が代わりに莉子を守ってくれる——
そう思って、万が一のためにお金や鍵を手紙と共に父に託した。
そんな中、病院で俺は飛び込んできた犯人に銃で撃たれ、死にかけた。
退院できたのは半年後だった。
その間も、やはり夏は莉子を守り続けてくれたんだ。
あの手紙が彼の手に渡り、ちょうどその頃、莉子は切迫流産で入院していた。
意識のない俺と、入院中の莉子——
その二人の面倒を、夏が見てくれていたんだよね。
意識が戻ったとき、夏がせっせと莉子と俺の看病をしてくれていた。
その後、夏は大学を辞めて「医大を受験する」と言って実家に帰った。
半年後、奇跡のように合格したものの、勉強についていけず、夏は過労で倒れた。
それも無理はない。ずっと文系だった人が、たった半年で理系の医大に受かるなんて、奇跡だよ。
倒れて「迎えに来てほしい」と言っていると、ご両親から連絡を受けた時は、覚悟したよ。
夏を迎えに行って回復した後、改めて莉子と生まれた桃香と一緒に、夏の実家に行った。
そして、夏を嫁にもらったんだよ。
このとき初めて、彼が創業者の息子だと知った。
ご両親は、きっと半信半疑だったと思う。
でも、莉子も一緒に来てくれたことで、俺に託してくれたんだよね。
このまま医大を続けられるかを心配して、俺に任せてくれたんだと思う。
俺は「一人前の医者にします」と、ご両親に約束した。
それから、夏との同居生活が始まった。
病気がちな莉子や、赤ちゃんだった桃香の世話を、本当によくしてくれた。
このころ、ベビーシッターとして助けてくれたのが、今の山科看護部長だった。
それでも、医大から帰ってきた夏に、毎晩2時間以上の勉強を教えるのは大変だった。
これは5年近く続いたが、夏も努力して成長して、最後の方は自分で勉強できるようになっていた。
そして、医師国家試験に合格したとき、ご両親が喜んでくれて——
彼のお父さん、つまり社長が建ててくれたのが、菜の花クリニックだった。
俺は大学病院を辞めた。山科さんは看護主任として、ずっと助けてくれた。
そのクリニックの上にあるのが、今の俺たちの住居になっている。
そこから1年も経たずに、患者さんが増えすぎて、朝に行列ができるようになっていた。
医者を増やしたくて相談した岩城が紹介してくれたのが、宮本君だった。
専攻医をミスで断念して田舎に帰った子を、引っ張ってきてくれた。
宮本君が、初期の菜の花クリニックを一緒に支えてくれた。
しかし、行列はそれでも解消されることなく、どんどん増えていって、応じきれなくなっていた。
そしたら、お父さんが住居の左隣の店舗を買い取って更地にして、
1年がかりで建ててくれたのが、今の7階建ての菜々花クリニックの本館だ。
住居の4階建てとは、廊下でつないでくれた。
しかし、朝の行列は解消されることはなく、予約制にしてもまだ続いていた。
診療科目が増えたら、それはそれでまた患者が増えた。
このときのスタッフは、160名くらい。
それから2年目には、検査機器を活かすために、住居の右隣にサテライトセンターを建てた。
ここでは、早朝と夜間の医療を支えることができた。
上には医師寮と技師寮もある。
ここで、200名くらいのスタッフになった。
これからなんとか体制を整えようと思ったら、今度は11階建ての2号館を建てるという。
……俺は、何度も過労で抑うつ状態になった。
ようやくだ。
本当に、やっとのことで追いついてきたんだ。
本当は、いつもこうして整った状態で進められたら良かったんだけど、
物事の進むスピードが速すぎて、整う前に走り出してしまっていた。
これは俺だけじゃない。みんながそうだったと思う。
周りのスタッフもついてきてくれて、心から感謝したい。
ここまでが長かったから、本当に、ほっとした。
この12年間は、溺愛していた義妹の莉子が大学に入って、俺のマンションに越してきたころから始まった。
その頃の俺は、週に3日は大学病院で心療内科の診療、週に2日はオンライン診療をしていた。
病気がちな莉子を抱えての仕事と家事は、本当に大変だった。
莉子は大学でもしょっちゅう倒れて、迎えに行ったり、勉強の遅れを家庭教師にお願いしたり——
俺も莉子も、必死だった。
そんな中で現れた救いの神が、夏だった。
夏は莉子の大学の同級生だ。
倒れる莉子を助けようと、グループを作って守ってくれた。
その姿が何度も重なって、俺は次第に夏を深く信頼するようになっていた。
その頃には、もう莉子と結婚していた。
莉子の病気の治療のために、結婚を急いだ。
それでも夏は、変わらず莉子を助けてくれた。
俺がいなくても、夏が代わりに莉子を守ってくれる——
そう思って、万が一のためにお金や鍵を手紙と共に父に託した。
そんな中、病院で俺は飛び込んできた犯人に銃で撃たれ、死にかけた。
退院できたのは半年後だった。
その間も、やはり夏は莉子を守り続けてくれたんだ。
あの手紙が彼の手に渡り、ちょうどその頃、莉子は切迫流産で入院していた。
意識のない俺と、入院中の莉子——
その二人の面倒を、夏が見てくれていたんだよね。
意識が戻ったとき、夏がせっせと莉子と俺の看病をしてくれていた。
その後、夏は大学を辞めて「医大を受験する」と言って実家に帰った。
半年後、奇跡のように合格したものの、勉強についていけず、夏は過労で倒れた。
それも無理はない。ずっと文系だった人が、たった半年で理系の医大に受かるなんて、奇跡だよ。
倒れて「迎えに来てほしい」と言っていると、ご両親から連絡を受けた時は、覚悟したよ。
夏を迎えに行って回復した後、改めて莉子と生まれた桃香と一緒に、夏の実家に行った。
そして、夏を嫁にもらったんだよ。
このとき初めて、彼が創業者の息子だと知った。
ご両親は、きっと半信半疑だったと思う。
でも、莉子も一緒に来てくれたことで、俺に託してくれたんだよね。
このまま医大を続けられるかを心配して、俺に任せてくれたんだと思う。
俺は「一人前の医者にします」と、ご両親に約束した。
それから、夏との同居生活が始まった。
病気がちな莉子や、赤ちゃんだった桃香の世話を、本当によくしてくれた。
このころ、ベビーシッターとして助けてくれたのが、今の山科看護部長だった。
それでも、医大から帰ってきた夏に、毎晩2時間以上の勉強を教えるのは大変だった。
これは5年近く続いたが、夏も努力して成長して、最後の方は自分で勉強できるようになっていた。
そして、医師国家試験に合格したとき、ご両親が喜んでくれて——
彼のお父さん、つまり社長が建ててくれたのが、菜の花クリニックだった。
俺は大学病院を辞めた。山科さんは看護主任として、ずっと助けてくれた。
そのクリニックの上にあるのが、今の俺たちの住居になっている。
そこから1年も経たずに、患者さんが増えすぎて、朝に行列ができるようになっていた。
医者を増やしたくて相談した岩城が紹介してくれたのが、宮本君だった。
専攻医をミスで断念して田舎に帰った子を、引っ張ってきてくれた。
宮本君が、初期の菜の花クリニックを一緒に支えてくれた。
しかし、行列はそれでも解消されることなく、どんどん増えていって、応じきれなくなっていた。
そしたら、お父さんが住居の左隣の店舗を買い取って更地にして、
1年がかりで建ててくれたのが、今の7階建ての菜々花クリニックの本館だ。
住居の4階建てとは、廊下でつないでくれた。
しかし、朝の行列は解消されることはなく、予約制にしてもまだ続いていた。
診療科目が増えたら、それはそれでまた患者が増えた。
このときのスタッフは、160名くらい。
それから2年目には、検査機器を活かすために、住居の右隣にサテライトセンターを建てた。
ここでは、早朝と夜間の医療を支えることができた。
上には医師寮と技師寮もある。
ここで、200名くらいのスタッフになった。
これからなんとか体制を整えようと思ったら、今度は11階建ての2号館を建てるという。
……俺は、何度も過労で抑うつ状態になった。
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