338 / 357
第17章 夏輝・人気と自由と……
336話 励ましのロビーコンサート
しおりを挟む
ヴォクシヴが専属契約をしてから最初の日曜日の午後。
芸能組の弦楽チーム「ナツ・アンサンブル」によるロビーコンサートが、2号館11階の休憩室で行われた。
演奏されたのは、誰もが知っている軽いポピュラーやジブリ音楽。
これは入院患者さんにも楽しんでもらえるようにご案内したものだった。
でも、本当は芸能組が入院中のヴォクシヴのメンバーを励ましたかったらしい。
他の芸能組も全員来ていて、初めてお互いを紹介する良い機会になった。
トーマ君は車いすだったけれど、メンバー全員が揃った。
莉子と桃香も聴きに来たし、桐生さんや村瀬さんも休日出勤。
「うちの病院でコンサートなんて、まるでよその大病院みたいだね」と莉子がこっそり言っていた。
ふっ、まあ、その通りだ。ちょっと笑った。
うちの病院でコンサートなんて想像もしたことがない。
そもそも夏が芸能界に入ること自体が青天の霹靂なのに、
人気ポップスグループのヴォクシブがうちに入るなんて__もう有り得ない。
事務所がコツコツと新人から丁寧に育てて人気者になったのとは違う。
棚からぼた餅的にもらってしまい……後ろめたさ100%だ。
まあ、向こうの事務所が悪かったとはいえ、こっちは医者がいっぱいいるからな。
所属タレントの健康は100%守るさ。
夏は社長夫妻を招待して、ヴォクシヴのメンバーを紹介した。
そして芸能組も全員揃ったので、皆も社長に挨拶をした。
社長と会うのはみんな初めてだったと思う。
劇場を作ってくれるという話に皆が感激し、その御礼を伝えていた。
社長もにこやかに話していたから、きっとキャスト達と会って喜んでくれたのだろう。
ところで桐生さんがまた人材を募集した。
募集中のヴォクシブ専任マネージャー2名のほかに、ファンクラブの仕事が増える一方なのでスタッフを2名募集。
グッズの物流も忙しくなるから、そろそろ組織を作らないと駄目だと言っていた。
でも待てよ。オリオンだって今までヴォクシヴのグッズを作っていたんじゃないか?
それはどうしたんだろう?と思って桐生さんに聞いたら――
「ああ~それですか、捨ててもいいのにねえ。しょうがないから、捨て値で買ってやりました」
ふ~ん、そうなんだねえ……。でも結構量があるらしい。
夏に聞いたら、置くところがないから工場に置かせてもらっているそうだ。
それからファンや芸能関係者へのお知らせとして、
正式にオリオンから Natsu Entertainment Group に移籍したことを発表した。
桐生さんはHPやインスタなどを新たにヴォクシヴのために立ち上げた。
もちろんファンクラブもだ。
そして今後1年間は「充電期間」にすると正式に発表した。
まあ俺はもちろんノータッチ。
彼らが元気になればそれでいい。
今やキャストの健康を守るのが俺の仕事になってしまった。
つまり産業医として、菜の花病院から派遣されていることになっている。
夏に「産業医としていくらもらえるの?」と聞いたら――
「お兄さん、医者は患者を診ないとお金にならないから、皆に給料が払えないんです。
お兄さんは菜の花病院で診療をしていないから、せめてキャストの診療くらいはしてもらわないと困ります」だって‥‥‥、聞くんじゃなかった......。
*
あれから一か月後、予定より早く全員が退院して本館5階の個室に移った。
退院といっても本館に場所を変えただけだから、それほど変わらない。
KAI君とストレス性腸炎のジュン君は、今後は投薬による治療。
肋骨骨折のリョウ君は、胸の痛みが完全に無くなったら、背中の不調を整体師にも調整をしてもらおうと思う。
膝を手術をしたトーマ君には理学療法士が来てリハビリをしてくれる。
ノア君はしばらく投薬による鬱の治療は続くが、ずっと入院する必要はなくなった。
鬱の原因がなくなったしね。
あとは皆と一緒に触れ合う方がきっと元気になると思う。
芸能組の弦楽チーム「ナツ・アンサンブル」によるロビーコンサートが、2号館11階の休憩室で行われた。
演奏されたのは、誰もが知っている軽いポピュラーやジブリ音楽。
これは入院患者さんにも楽しんでもらえるようにご案内したものだった。
でも、本当は芸能組が入院中のヴォクシヴのメンバーを励ましたかったらしい。
他の芸能組も全員来ていて、初めてお互いを紹介する良い機会になった。
トーマ君は車いすだったけれど、メンバー全員が揃った。
莉子と桃香も聴きに来たし、桐生さんや村瀬さんも休日出勤。
「うちの病院でコンサートなんて、まるでよその大病院みたいだね」と莉子がこっそり言っていた。
ふっ、まあ、その通りだ。ちょっと笑った。
うちの病院でコンサートなんて想像もしたことがない。
そもそも夏が芸能界に入ること自体が青天の霹靂なのに、
人気ポップスグループのヴォクシブがうちに入るなんて__もう有り得ない。
事務所がコツコツと新人から丁寧に育てて人気者になったのとは違う。
棚からぼた餅的にもらってしまい……後ろめたさ100%だ。
まあ、向こうの事務所が悪かったとはいえ、こっちは医者がいっぱいいるからな。
所属タレントの健康は100%守るさ。
夏は社長夫妻を招待して、ヴォクシヴのメンバーを紹介した。
そして芸能組も全員揃ったので、皆も社長に挨拶をした。
社長と会うのはみんな初めてだったと思う。
劇場を作ってくれるという話に皆が感激し、その御礼を伝えていた。
社長もにこやかに話していたから、きっとキャスト達と会って喜んでくれたのだろう。
ところで桐生さんがまた人材を募集した。
募集中のヴォクシブ専任マネージャー2名のほかに、ファンクラブの仕事が増える一方なのでスタッフを2名募集。
グッズの物流も忙しくなるから、そろそろ組織を作らないと駄目だと言っていた。
でも待てよ。オリオンだって今までヴォクシヴのグッズを作っていたんじゃないか?
それはどうしたんだろう?と思って桐生さんに聞いたら――
「ああ~それですか、捨ててもいいのにねえ。しょうがないから、捨て値で買ってやりました」
ふ~ん、そうなんだねえ……。でも結構量があるらしい。
夏に聞いたら、置くところがないから工場に置かせてもらっているそうだ。
それからファンや芸能関係者へのお知らせとして、
正式にオリオンから Natsu Entertainment Group に移籍したことを発表した。
桐生さんはHPやインスタなどを新たにヴォクシヴのために立ち上げた。
もちろんファンクラブもだ。
そして今後1年間は「充電期間」にすると正式に発表した。
まあ俺はもちろんノータッチ。
彼らが元気になればそれでいい。
今やキャストの健康を守るのが俺の仕事になってしまった。
つまり産業医として、菜の花病院から派遣されていることになっている。
夏に「産業医としていくらもらえるの?」と聞いたら――
「お兄さん、医者は患者を診ないとお金にならないから、皆に給料が払えないんです。
お兄さんは菜の花病院で診療をしていないから、せめてキャストの診療くらいはしてもらわないと困ります」だって‥‥‥、聞くんじゃなかった......。
*
あれから一か月後、予定より早く全員が退院して本館5階の個室に移った。
退院といっても本館に場所を変えただけだから、それほど変わらない。
KAI君とストレス性腸炎のジュン君は、今後は投薬による治療。
肋骨骨折のリョウ君は、胸の痛みが完全に無くなったら、背中の不調を整体師にも調整をしてもらおうと思う。
膝を手術をしたトーマ君には理学療法士が来てリハビリをしてくれる。
ノア君はしばらく投薬による鬱の治療は続くが、ずっと入院する必要はなくなった。
鬱の原因がなくなったしね。
あとは皆と一緒に触れ合う方がきっと元気になると思う。
3
あなたにおすすめの小説
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
月弥総合病院
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
網代さんを怒らせたい
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「なあ。僕たち、付き合わないか?」
彼がなにを言っているのかわからなかった。
たったいま、私たちは恋愛できない体質かもしれないと告白しあったばかりなのに。
しかし彼曰く、これは練習なのらしい。
それっぽいことをしてみれば、恋がわかるかもしれない。
それでもダメなら、本当にそういう体質だったのだと諦めがつく。
それはそうかもしれないと、私は彼と付き合いはじめたのだけれど……。
和倉千代子(わくらちよこ) 23
建築デザイン会社『SkyEnd』勤務
デザイナー
黒髪パッツン前髪、おかっぱ頭であだ名は〝市松〟
ただし、そう呼ぶのは網代のみ
なんでもすぐに信じてしまい、いつも網代に騙されている
仕事も頑張る努力家
×
網代立生(あじろたつき) 28
建築デザイン会社『SkyEnd』勤務
営業兼事務
背が高く、一見優しげ
しかしけっこう慇懃無礼に毒を吐く
人の好き嫌いが激しい
常識の通じないヤツが大嫌い
恋愛のできないふたりの関係は恋に発展するのか……!?
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
純愛以上、溺愛以上〜無愛想から始まった社長令息の豹変愛は彼女を甘く包み込む~
芙月みひろ
恋愛
保険会社の事務職として勤務する
早瀬佳奈26才。
友達に頼み込まれて行った飲み会で
腹立たしいほど無愛想な高原宗輔30才と出会う。
あまりの不愉快さに
二度と会いたくないと思っていたにも関わらず
再び仕事で顔を合わせることになる。
上司のパワハラめいた嫌がらせに悩まされていた中
ふと見せる彼の優しい一面に触れて
佳奈は次第に高原に心を傾け出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる