4 / 16
2-1 兄、宰相 姉、公爵夫人 ……俺、門番①
しおりを挟む
あれから一週間。魔軍七将襲来の混乱から国が持ち直してきた頃。
この日、神太郎は休日を迎えていた。しかも公休だ。さぞや気分がいいだろう。……というわけにはいかないようで、今、彼は苦痛の時間を過ごしていた。
キダイ王国宮廷・大広間。ここで行われている宰相任命式に、彼は出席させられていたのだ。
燦爛たる空間で行われる厳かな式典。出席者はどれも煌びやかな服を纏っており、どう考えても一介の兵卒がいていい場所ではない。
ただ、幸運にも末席に座らされている。少しぐらい寝てもバレはしないだろうと、彼は気を緩ませていたが……、
「こら、寝ないの」
隣に座っていた上司ルメシアに邪魔されてしまった。彼女はケルヴェイン公爵家の人間として出席しており、本来はもっと前の席に座るはずだったのだが、どうやら場馴れしていない神太郎を気遣ってここにいてくれているらしい。
「やっぱり私が見ていないとサボるんだから……。いい? この場に立ち会えるのは名誉なことなのよ?」
「立会いとうなかった」
「これも仕事のうちよ」
「働きとうなかった」
「……ホント、呆れた男ね」
相変わらずの神太郎の無気力っぷりに、彼女は堪らず溜め息を吐いた。ただ、彼だってこの国に対して敬意を払っている。だから、こうやって大人しく従っているのだ。しかし、そういう想いは彼女には通じていないよう。仕方がないので、彼はもう一言プレゼント。
「ところでルメシア」
「何よ?」
「今日は可愛いな」
神太郎は彼女の格好を見ながら言った。普段は軍服姿のルメシアも、今日は美麗なドレスで着飾っている。
「いつも可愛いけど、今日は一段とな。やっぱり女の子らしい姿の方が映える」
お世辞ではない。本音だ。特に、露出した胸元に視線が引き寄せられてしまう。異世界のファッションセンスは実に素晴らしい。
「き、急に何言ってんのよ。……もう」
この想いは通じてくれたようで、彼女は堪らず紅くなった顔を背けさせた。
そもそも、何故神太郎がこんな場にいるかである。これほどの式典に、ただの一兵卒が出席出来る(させられる)理由……。それは至極明快だった。
この式の主役は、彼の兄なのである。
広間に備えられた壇に立つ初老の男性。ここにいる誰よりも高貴で誰よりも威厳のある彼が、この国の君主バルディアラン王である。そして、その前に進み出るのは、彗星の如く現れた若き天才政治家。
三好兄弟の長子、三好仙熊である。
神太郎と同じく両親の魔王討伐に同行しなかった仙熊は、別の道でこの国を助けることにしたのだ。それが政治の道である。王によって登用された彼は早速行政改革に乗り出し、特に経済政策で功績を挙げていた。この間、神太郎が金塊の無許可の持ち出しを取り締まったことがあったが、その法律も兄による政策の一つだ。お陰で、魔族の脅威によって長年停滞している人間界の経済も、この国だけは成長期を迎えられていた。
その上、父が魔王の側近『魔軍七将』を討った功績も考慮され、この度、若干二一歳でこの国の宰相に命じられることになったのである。
一方、弟は兄にこれほどの才能があったことに驚いていた。密かに大学の政治学部にでも通っていたのか? 若しくはこれが異世界チートってやつなのか? と、考え込んでしまう。
その後、畏まった式典が終わると、場所を移っての懇親会となる。酒を片手に歓談に興じる貴族たちに紛れ、神太郎もまたテーブルの上のつまみを摘み続けていた。
「酒も肴も美味いなぁ。流石、宮廷のパーティーだ」
「ちょっと、見っともないわよ」
それに苦言を呈してくるルメシア。確かに彼女の言う通りかもしれないが、一介の門番のことを見ている人間なんていやしないだろう。
「なに、皆、主役の方に目が行ってるよ」
貴族たちの今の関心は、これからの国を背負う新宰相のことだけ。若い美女から老年の紳士まで、絶え間なく仙熊に挨拶をしている。
そして、神太郎はその様子を辟易しながら見ていた。実にストレスの溜まりそうな役職だと。ただ、ルメシアの感想は違ったようだ。
「本当に良かったの? 神太郎」
「何が?」
「この間の魔軍七将ベイザルネットを討った件。神太郎の言う通り、王国には報告しなかったから、魔族側が勝手に引き上げたことになっているけど……。もしちゃんと報告していたら、今頃神太郎も英雄として称えられていたのよ?」
彼が魔軍七将の一人を討ったことを知っているのはルメシアだけ。
「もし報告していたら、俺は一兵卒から昇進か?」
「少なくとも、私を飛び越えていたわね」
「つまり仕事が増えるってことだろう? 冗談じゃない。俺は今のままがいいんだ」
「でも……」
「俺は門番として当然の務めを果たした。それだけだ」
「……そうね」
ルメシアもその最後の言葉には納得したようで、微笑んで締めてくれた。
そこに主役がやってくる。
「おう、ちゃんと来たな、神太郎」
貴族たちの囲いから抜けてきた仙熊が、いつものように気さくに声を掛けてきた。宰相と門番。立場は変わっても兄弟の縁は変わらないということか。
「おめでとう、仙兄。今日、人生の絶頂期を迎えてこれからは下り坂だけど、決してめげないでくれよな」
「相変わらずの軽口で安心した。こっちでの生活も順調そうだな」
「悪くはない。そこそこ満足してるよ」
この冗談交じりの挨拶で、その関係を確かめることも出来た。ただ、この場にいた他人は目を丸くさせてしまっているようだが。
「で、こちらの美しいお嬢さんは?」
仙熊がそのルメシアに視線をやると、様子見をしていた彼女も口を開けた。
「申し遅れました。ケルヴェイン公爵家長女で、北衛長を務めておりますルメシアと申します」
「北衛府の? それじゃ神太郎の上司か。運がいいな、お前は。こんな美人の上司をもって」
「今年のおみくじは大吉だった」
「死んじまったけどな」
そして兄弟揃って爆笑。久しぶりの再会に、神太郎も少しテンションが上がってきたか。尤も、このノリを理解出来ないルメシアは顔を顰めていたが。
そういえば、弟はその久しぶりの再会になってしまった理由を聞いていない。
「なぁ、仙兄。今まで働き詰めだったようだけど、そもそも何で政治家に? もしかして、これから汚職で大儲けするつもり?」
「ノー」
弟の冴えた答えに、兄は悲しそうに首を横に振った。ルメシアも呆れている。
「この、アホ太郎。アンタじゃあるまいし、そんなわけないでしょう。勿論、国を良くするためですよね?」
「ノー」
「え?」
ただ、彼女の答えも外れたようでキョトンとしてしまった。そして、仙熊はその答えを示すかのように視線を遠くへとやった。それに従って振り向けば、その先には美女たちに囲まれた一際美しい女性が一人……。
「あれは……確か……」
「サラティナ王女?」
言葉が続かない神太郎の代わりにルメシアが答えた。この国の第一王女だ。以前、三好家全員で王族と顔合わせをした時、彼女も同席している。
すると、向こうもこちらに気付いたようで手を振って応えてくれた。仙熊も同じく応じると、その答えを明かす。
「あのサラティナ王女をゲットするためだ」
仙熊のことを知っている神太郎は「あー」と納得し、仙熊のことを知らないルメシアは
「えぇ!?」と驚愕する。
「初対面の時に一目惚れしてな。それでどうやってモノにしようかと考えた結果、俺の魅力を見せ付けてやることにしたんだ。で、見せつけるには常に彼女の視界の中に入っていないといけないわけで、この宮廷で目立つには政治の道が手っ取り早いって結論に至ったわけだ」
「だから親父たちに同行しなかったのか」
仙熊は本気だ。それでも、神太郎の面倒臭いという理由よりはマシだろう。しかし、ルメシアはかなりショックだったよう。
「女……。女のために……」
尊敬していた人物が理想と掛け離れていたことに落胆を隠せないでいる。ただ、潔癖そうな彼女からすれば不純に見えるかもしれないが、大事を成す切っ掛けとは案外そんなものなのかもしれない。貴族だから考え方が崇高なのだろう。
「けど、たった一人の女のためによくやるよ、兄貴は」
「はぁ……。逆にお前は面倒臭がり過ぎだ」
「気分屋なところはあるかな」
「まぁ、女癖の悪いお前には分からんだろうな」
「女癖?」
その言葉にルメシアが反応した。しかめっ面で神太郎を見ている。そんな彼女に仙熊が余計な助言を。
「因みに、ルメシア嬢はコイツと付き合ってるの?」
「え? ……い、いえ、とんでもない!」
「ああ、コイツと付き合うなんてとんでもない。コイツの夢は楽して気持ちのいいことをすること。ハーレムを作ることなんだとさ」
「はぁ!?」
「気をつけるといい。それじゃまたな、神太郎。たまには顔を出せよ」
そう言い残すと、仙熊は貴族たちの元へ戻っていった。お陰で、取り残された神太郎はルメシアから冷たい視線を浴びせられる。
「何よ、ハーレムって」
「そのままの意味だよ。ここの大貴族だって、妾の一人や二人抱えてるだろう」
「そもそもアンタ、ただの門番でしょう! そんなこと認められると思って!?」
「え? 認可が必要なの? あ、じゃあ、この間の魔軍七将討伐の功績があれば……! アレ、やっぱ報告しておいて」
「絶・対・しない!」
「……もしかして、嫉妬してる?」
「嫉妬!? 自惚れないの。呆れてるのよ、全くもう……。アンタを見てると、一人の女性のために宰相にまで上り詰めた仙熊殿の素晴らしさに気付かされるわ」
「それは良かった。兄孝行が出来たかな?」
神太郎がそう皮肉で締めると、彼女ももう閉口するしかなかった。
この日、神太郎は休日を迎えていた。しかも公休だ。さぞや気分がいいだろう。……というわけにはいかないようで、今、彼は苦痛の時間を過ごしていた。
キダイ王国宮廷・大広間。ここで行われている宰相任命式に、彼は出席させられていたのだ。
燦爛たる空間で行われる厳かな式典。出席者はどれも煌びやかな服を纏っており、どう考えても一介の兵卒がいていい場所ではない。
ただ、幸運にも末席に座らされている。少しぐらい寝てもバレはしないだろうと、彼は気を緩ませていたが……、
「こら、寝ないの」
隣に座っていた上司ルメシアに邪魔されてしまった。彼女はケルヴェイン公爵家の人間として出席しており、本来はもっと前の席に座るはずだったのだが、どうやら場馴れしていない神太郎を気遣ってここにいてくれているらしい。
「やっぱり私が見ていないとサボるんだから……。いい? この場に立ち会えるのは名誉なことなのよ?」
「立会いとうなかった」
「これも仕事のうちよ」
「働きとうなかった」
「……ホント、呆れた男ね」
相変わらずの神太郎の無気力っぷりに、彼女は堪らず溜め息を吐いた。ただ、彼だってこの国に対して敬意を払っている。だから、こうやって大人しく従っているのだ。しかし、そういう想いは彼女には通じていないよう。仕方がないので、彼はもう一言プレゼント。
「ところでルメシア」
「何よ?」
「今日は可愛いな」
神太郎は彼女の格好を見ながら言った。普段は軍服姿のルメシアも、今日は美麗なドレスで着飾っている。
「いつも可愛いけど、今日は一段とな。やっぱり女の子らしい姿の方が映える」
お世辞ではない。本音だ。特に、露出した胸元に視線が引き寄せられてしまう。異世界のファッションセンスは実に素晴らしい。
「き、急に何言ってんのよ。……もう」
この想いは通じてくれたようで、彼女は堪らず紅くなった顔を背けさせた。
そもそも、何故神太郎がこんな場にいるかである。これほどの式典に、ただの一兵卒が出席出来る(させられる)理由……。それは至極明快だった。
この式の主役は、彼の兄なのである。
広間に備えられた壇に立つ初老の男性。ここにいる誰よりも高貴で誰よりも威厳のある彼が、この国の君主バルディアラン王である。そして、その前に進み出るのは、彗星の如く現れた若き天才政治家。
三好兄弟の長子、三好仙熊である。
神太郎と同じく両親の魔王討伐に同行しなかった仙熊は、別の道でこの国を助けることにしたのだ。それが政治の道である。王によって登用された彼は早速行政改革に乗り出し、特に経済政策で功績を挙げていた。この間、神太郎が金塊の無許可の持ち出しを取り締まったことがあったが、その法律も兄による政策の一つだ。お陰で、魔族の脅威によって長年停滞している人間界の経済も、この国だけは成長期を迎えられていた。
その上、父が魔王の側近『魔軍七将』を討った功績も考慮され、この度、若干二一歳でこの国の宰相に命じられることになったのである。
一方、弟は兄にこれほどの才能があったことに驚いていた。密かに大学の政治学部にでも通っていたのか? 若しくはこれが異世界チートってやつなのか? と、考え込んでしまう。
その後、畏まった式典が終わると、場所を移っての懇親会となる。酒を片手に歓談に興じる貴族たちに紛れ、神太郎もまたテーブルの上のつまみを摘み続けていた。
「酒も肴も美味いなぁ。流石、宮廷のパーティーだ」
「ちょっと、見っともないわよ」
それに苦言を呈してくるルメシア。確かに彼女の言う通りかもしれないが、一介の門番のことを見ている人間なんていやしないだろう。
「なに、皆、主役の方に目が行ってるよ」
貴族たちの今の関心は、これからの国を背負う新宰相のことだけ。若い美女から老年の紳士まで、絶え間なく仙熊に挨拶をしている。
そして、神太郎はその様子を辟易しながら見ていた。実にストレスの溜まりそうな役職だと。ただ、ルメシアの感想は違ったようだ。
「本当に良かったの? 神太郎」
「何が?」
「この間の魔軍七将ベイザルネットを討った件。神太郎の言う通り、王国には報告しなかったから、魔族側が勝手に引き上げたことになっているけど……。もしちゃんと報告していたら、今頃神太郎も英雄として称えられていたのよ?」
彼が魔軍七将の一人を討ったことを知っているのはルメシアだけ。
「もし報告していたら、俺は一兵卒から昇進か?」
「少なくとも、私を飛び越えていたわね」
「つまり仕事が増えるってことだろう? 冗談じゃない。俺は今のままがいいんだ」
「でも……」
「俺は門番として当然の務めを果たした。それだけだ」
「……そうね」
ルメシアもその最後の言葉には納得したようで、微笑んで締めてくれた。
そこに主役がやってくる。
「おう、ちゃんと来たな、神太郎」
貴族たちの囲いから抜けてきた仙熊が、いつものように気さくに声を掛けてきた。宰相と門番。立場は変わっても兄弟の縁は変わらないということか。
「おめでとう、仙兄。今日、人生の絶頂期を迎えてこれからは下り坂だけど、決してめげないでくれよな」
「相変わらずの軽口で安心した。こっちでの生活も順調そうだな」
「悪くはない。そこそこ満足してるよ」
この冗談交じりの挨拶で、その関係を確かめることも出来た。ただ、この場にいた他人は目を丸くさせてしまっているようだが。
「で、こちらの美しいお嬢さんは?」
仙熊がそのルメシアに視線をやると、様子見をしていた彼女も口を開けた。
「申し遅れました。ケルヴェイン公爵家長女で、北衛長を務めておりますルメシアと申します」
「北衛府の? それじゃ神太郎の上司か。運がいいな、お前は。こんな美人の上司をもって」
「今年のおみくじは大吉だった」
「死んじまったけどな」
そして兄弟揃って爆笑。久しぶりの再会に、神太郎も少しテンションが上がってきたか。尤も、このノリを理解出来ないルメシアは顔を顰めていたが。
そういえば、弟はその久しぶりの再会になってしまった理由を聞いていない。
「なぁ、仙兄。今まで働き詰めだったようだけど、そもそも何で政治家に? もしかして、これから汚職で大儲けするつもり?」
「ノー」
弟の冴えた答えに、兄は悲しそうに首を横に振った。ルメシアも呆れている。
「この、アホ太郎。アンタじゃあるまいし、そんなわけないでしょう。勿論、国を良くするためですよね?」
「ノー」
「え?」
ただ、彼女の答えも外れたようでキョトンとしてしまった。そして、仙熊はその答えを示すかのように視線を遠くへとやった。それに従って振り向けば、その先には美女たちに囲まれた一際美しい女性が一人……。
「あれは……確か……」
「サラティナ王女?」
言葉が続かない神太郎の代わりにルメシアが答えた。この国の第一王女だ。以前、三好家全員で王族と顔合わせをした時、彼女も同席している。
すると、向こうもこちらに気付いたようで手を振って応えてくれた。仙熊も同じく応じると、その答えを明かす。
「あのサラティナ王女をゲットするためだ」
仙熊のことを知っている神太郎は「あー」と納得し、仙熊のことを知らないルメシアは
「えぇ!?」と驚愕する。
「初対面の時に一目惚れしてな。それでどうやってモノにしようかと考えた結果、俺の魅力を見せ付けてやることにしたんだ。で、見せつけるには常に彼女の視界の中に入っていないといけないわけで、この宮廷で目立つには政治の道が手っ取り早いって結論に至ったわけだ」
「だから親父たちに同行しなかったのか」
仙熊は本気だ。それでも、神太郎の面倒臭いという理由よりはマシだろう。しかし、ルメシアはかなりショックだったよう。
「女……。女のために……」
尊敬していた人物が理想と掛け離れていたことに落胆を隠せないでいる。ただ、潔癖そうな彼女からすれば不純に見えるかもしれないが、大事を成す切っ掛けとは案外そんなものなのかもしれない。貴族だから考え方が崇高なのだろう。
「けど、たった一人の女のためによくやるよ、兄貴は」
「はぁ……。逆にお前は面倒臭がり過ぎだ」
「気分屋なところはあるかな」
「まぁ、女癖の悪いお前には分からんだろうな」
「女癖?」
その言葉にルメシアが反応した。しかめっ面で神太郎を見ている。そんな彼女に仙熊が余計な助言を。
「因みに、ルメシア嬢はコイツと付き合ってるの?」
「え? ……い、いえ、とんでもない!」
「ああ、コイツと付き合うなんてとんでもない。コイツの夢は楽して気持ちのいいことをすること。ハーレムを作ることなんだとさ」
「はぁ!?」
「気をつけるといい。それじゃまたな、神太郎。たまには顔を出せよ」
そう言い残すと、仙熊は貴族たちの元へ戻っていった。お陰で、取り残された神太郎はルメシアから冷たい視線を浴びせられる。
「何よ、ハーレムって」
「そのままの意味だよ。ここの大貴族だって、妾の一人や二人抱えてるだろう」
「そもそもアンタ、ただの門番でしょう! そんなこと認められると思って!?」
「え? 認可が必要なの? あ、じゃあ、この間の魔軍七将討伐の功績があれば……! アレ、やっぱ報告しておいて」
「絶・対・しない!」
「……もしかして、嫉妬してる?」
「嫉妬!? 自惚れないの。呆れてるのよ、全くもう……。アンタを見てると、一人の女性のために宰相にまで上り詰めた仙熊殿の素晴らしさに気付かされるわ」
「それは良かった。兄孝行が出来たかな?」
神太郎がそう皮肉で締めると、彼女ももう閉口するしかなかった。
57
あなたにおすすめの小説
おばさん冒険者、職場復帰する
神田柊子
ファンタジー
アリス(43)は『完全防御の魔女』と呼ばれたA級冒険者。
子育て(子どもの修行)のために母子ふたりで旅をしていたけれど、子どもが父親の元で暮らすことになった。
ひとりになったアリスは、拠点にしていた街に五年ぶりに帰ってくる。
さっそくギルドに顔を出すと昔馴染みのギルドマスターから、ギルド職員のリーナを弟子にしてほしいと頼まれる……。
生活力は低め、戦闘力は高めなアリスおばさんの冒険譚。
-----
剣と魔法の西洋風異世界。転移・転生なし。三人称。
一話ごとで一区切りの、連作短編(の予定)。
-----
※小説家になろう様にも掲載中。
「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ
天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。
彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。
「お前はもういらない」
ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。
だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。
――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。
一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。
生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!?
彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。
そして、レインはまだ知らない。
夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、
「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」
「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」
と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。
そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。
理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。
王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー!
HOT男性49位(2025年9月3日0時47分)
→37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
元公務員、辺境ギルドの受付になる 〜『受理』と『却下』スキルで無自覚に無双していたら、伝説の職員と勘違いされて俺の定時退勤が危うい件〜
☆ほしい
ファンタジー
市役所で働く安定志向の公務員、志摩恭平(しまきょうへい)は、ある日突然、勇者召喚に巻き込まれて異世界へ。
しかし、与えられたスキルは『受理』と『却下』という、戦闘には全く役立ちそうにない地味なものだった。
「使えない」と判断された恭平は、国から追放され、流れ着いた辺境の街で冒険者ギルドの受付職員という天職を見つける。
書類仕事と定時退勤。前世と変わらぬ平穏な日々が続くはずだった。
だが、彼のスキルはとんでもない隠れた効果を持っていた。
高難易度依頼の書類に『却下』の判を押せば依頼自体が消滅し、新米冒険者のパーティ登録を『受理』すれば一時的に能力が向上する。
本人は事務処理をしているだけのつもりが、いつしか「彼の受付を通った者は必ず成功する」「彼に睨まれたモンスターは消滅する」という噂が広まっていく。
その結果、静かだった辺境ギルドには腕利きの冒険者が集い始め、恭平の定時退勤は日々脅かされていくのだった。
俺の伯爵家大掃除
satomi
ファンタジー
伯爵夫人が亡くなり、後妻が連れ子を連れて伯爵家に来た。俺、コーは連れ子も可愛い弟として受け入れていた。しかし、伯爵が亡くなると後妻が大きい顔をするようになった。さらに俺も虐げられるようになったし、可愛がっていた連れ子すら大きな顔をするようになった。
弟は本当に俺と血がつながっているのだろうか?など、学園で同学年にいらっしゃる殿下に相談してみると…
というお話です。
扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。
みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。
勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。
辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。
だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~
味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。
しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。
彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。
故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。
そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。
これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる