男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ

文字の大きさ
17 / 52

看病

しおりを挟む
「んぅ…」

5月ももうすぐで終わりだ。
今日は日曜。樹は喉の違和感に気が付いた。
とにかく喉が痛い。体もなんとなく怠い。

「おはよう。樹」

「おばよゔ」

「わ、何その声!」

樹も自分の声の掠れ具合に驚いた。

「風邪引いたんだよ!今日は休んでいたほうがいいね」

「え…でぼ…」

樹は泣きそうになった。
今日は克樹がバックダンサーとして舞台に立つのだ。風と一緒に見に行く約束をしていた。

「仕方ないよ、風邪をこじらせたら困るでしょ?」

「うん…」

「とりあえず、ご飯を持って…」

コンコン、とドアがノックされる。
風がドアを開けると、渚がいた。

「おはよう、樹くんは?」

「ぜんばい…」

「!!」

樹の声に驚いたのは渚も一緒だったらしい。

「樹、風邪引いちゃったみたいで」

風が説明してくれる。

「そうか。多分疲れが出たんだろうね。
医務室に行ったほうがいい。そうだ、僕が抱えていこう。君は牡丹先生に伝えてくれるかい?」

「分かりました」

風が部屋を出て行く音がする。

「さぁ樹くん、行こうか。少し寒いかな?」

確かに今日は涼しい。
昨日の夜は暑いくらいだった。
風邪を引いた一因はそれもあるだろう。

渚が着ていたパーカーを脱いで、樹に着せてくれた。そしてひょい、と樹を抱き上げる。

「ずびばぜん」

「謝ることないよ。僕もこの時期はよく体調を崩していたから分かる」

渚にもそんな時があったのかと、樹は驚いた。
渚は寮にある医務室へ樹を連れて行ってくれた。医務室には、もう牡丹がいて一緒に診察に付き添ってくれた。

薬をもらい、樹は再び渚に抱えられて部屋に戻ってきた。

「あ、良かった。ご飯持ってきたよ!」

風が朝食を取りに行ってくれていたらしい。

「ありがどう。風、がっぢゃんの応援行っで」

「え…でも」

「それなら樹くんは僕が見ていよう」

風は困ったように樹と渚を見て、頷いた。

「分かりました。お願いします」

風が部屋を出て行く。

「樹くん、ご飯を食べようか」

「はい」

風が持ってきてくれたのは温玉がのったうどんだった。
温かいだしが沁み渡る。
だが飲み込む度に喉が痛むので、だんだん嫌になってしまう。
なんとか完食して薬を呑んだ。

「樹くん、これ」

渚が手渡してくれたのはマスクだった。

「喉が乾燥しないようにね」

「ありがどうございばず」

樹はマスクをして横になった。
渚が椅子に腰掛ける。
どうやら彼は本当に自分の看病をしてくれるつもりらしい。
優しい先輩だな、と樹は思った。
薬が効いてきたのかとても眠い。
樹はいつの間にか眠ってしまっていた。

夢を見た。
それは克樹の夢だった。
克樹に愛してもらうという、樹の願望がそのまま形になった夢だった。
克樹が愛の言葉を樹に向かって囁いてくれる。
ずっと願っていたはずなのに、違和感が消えない。

(これは…夢だ)

気が付くと渚の顔が目に入った。それに安心して涙が溢れる。やっと現実に帰ってこられた。

「大丈夫かな?うなされていたから心配だった」

渚が樹の涙を指で拭ってくれた。

「俺…」

「大丈夫」

渚が労るように樹の頬を撫でてくれた。
優しい手付きに樹は泣き出してしまった。
こうしてくれるのが、克樹だったらなんて思ってしまう自分が嫌だった。

「ごめんなさ…い」

渚に抱き締められる。

「謝らなくていい。大丈夫だよ。ほら、落ち着いて?」

樹は再び目を閉じた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

目覚ましに先輩の声を使ってたらバレた話

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
サッカー部の先輩・ハヤトの声が密かに大好きなミノル。 彼を誘い家に泊まってもらった翌朝、目覚ましが鳴った。 ……あ。 音声アラームを先輩の声にしているのがバレた。 しかもボイスレコーダーでこっそり録音していたことも白状することに。 やばい、どうしよう。

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。

はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。 2023.04.03 閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m お待たせしています。 お待ちくださると幸いです。 2023.04.15 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m 更新頻度が遅く、申し訳ないです。 今月中には完結できたらと思っています。 2023.04.17 完結しました。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます! すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

俺の親友がモテ過ぎて困る

くるむ
BL
☆完結済みです☆ 番外編として短い話を追加しました。 男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ) 中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。 一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ) ……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。 て、お前何考えてんの? 何しようとしてんの? ……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。 美形策士×純情平凡♪

【完結】我が兄は生徒会長である!

tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。 名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。 そんな彼には「推し」がいる。 それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。 実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。 終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。 本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。 (番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)

処理中です...