16 / 52
リリース?!
しおりを挟む
「駄目です、やっぱり見られません」
昼休み、イヤイヤと樹はその場に踏みとどまろうとした。健悟にずるずると腕を掴まれて無理やり引っ張られる。力で健悟に敵わないのは明らかだった。
ついに今日は試験の結果が出る日だ。
樹は昨日からなんだかそわそわして落ち着かなかったのだ。
「もう結果は出ちまってるんだ。行くぞ」
「やだぁー!」
「チッ、めんどいな」
ひょい、と健悟に軽々と抱えられてしまう。
「わわわ!!」
樹は慌てて健悟にしがみついた。
「おい、樹、着いたぞ」
「先輩、代わりに見てください」
「仕方ね…は?」
「どうしたんですか?」
樹も気になって掲示板を見てみた。
自分達の名前の横に保留と書かれている。
「え…俺達、落ちたんですか?」
「いや、保留だからな」
「そっか」
「はいはい、やっと2人来たわね!あなた達で最後よ!」
「あ、牡丹先生」
「どうゆうことだよ、牡丹!」
まるで本物の狼のようだな、と健悟を観て樹は思った。自分も初めはああやって噛みつかれそうになったな、と懐かしさすら感じる。
牡丹も慣れているのか、全く動じない。
「落ち着いて頂戴、健悟くん。あなた達二人の楽曲は素晴らしかった。
だからこそ学長に評定を預けることにしたの」
「が…学長?」
健悟の驚きぶりから、それが普通のことではないのだと、樹は悟った。
「そう。今日の放課後、学長室に来て頂戴。忘れちゃだめよ」
じゃあね、と牡丹が去っていく。
健悟は固まっていた。
「あの、櫻木先輩?」
樹が声を掛けると、健悟が震えている。
「樹、わりぃ。俺達、詰んだかも」
「え?」
「学長は時々生徒をふるいにかけるんだ。
質が落ちないようにって。
牡丹はああ言ってたけど、学長に呼び出されたやつは二度と帰って来られないって噂もある」
「そんな…」
樹もその言葉に怖くなった。だが、克樹の笑顔が思い浮かぶ。ここで負けるわけにはいかない。
「櫻木先輩、俺達はふるいから落ちません。
絶対に残りましょう」
「そう…だよな。ビビるなんて俺らしくねえ!
やってやろうぜ!」
2人はお互いの拳をぶつけ合った。
✣✣✣
放課後、樹と健悟は学長室の前に立っていた。
学長室は昇降口のそばにある。
「いつも、通り過ぎてたけどここにあったんだ」
「俺も入るのは初めてだよ」
2人はお互いの顔を見て頷き合った。
もう自分達にはこの部屋に入る以外の選択肢は残されていない。
コンコン、と健悟が扉をノックすると、入り給え、という低い声がした。
「失礼します」
2人は学長室に入る。
そこにいたのは柔和そうな男性だった。
朝会で時折見る顔だ。
「二人共、よく来てくれたね」
学長が立ち上がる。空気がひときわ張り詰めたのは気のせいではない。
「君たちの楽曲、素晴らしかった。
リリースも考えたが、オーディションの話は聞いているね?」
「は…はい」
2人は頷いた。
「君達はそれにチャレンジしなさい。
きっといいものが出来ると信じている。
そして」
2人は学長から何かを預かった。
それは、普通のネクタイピンに見える。
「それは選ばれた生徒が付けられる特別製のネクタイピンだ。君達には期待している」
「ありがどうございます!」
2人はその場でネクタイピンを付けてみた。
「わー、かっこいい」
「樹、やったな!」
2人がわいわい喜んでいるのを学長は静かに見守っていた。
昼休み、イヤイヤと樹はその場に踏みとどまろうとした。健悟にずるずると腕を掴まれて無理やり引っ張られる。力で健悟に敵わないのは明らかだった。
ついに今日は試験の結果が出る日だ。
樹は昨日からなんだかそわそわして落ち着かなかったのだ。
「もう結果は出ちまってるんだ。行くぞ」
「やだぁー!」
「チッ、めんどいな」
ひょい、と健悟に軽々と抱えられてしまう。
「わわわ!!」
樹は慌てて健悟にしがみついた。
「おい、樹、着いたぞ」
「先輩、代わりに見てください」
「仕方ね…は?」
「どうしたんですか?」
樹も気になって掲示板を見てみた。
自分達の名前の横に保留と書かれている。
「え…俺達、落ちたんですか?」
「いや、保留だからな」
「そっか」
「はいはい、やっと2人来たわね!あなた達で最後よ!」
「あ、牡丹先生」
「どうゆうことだよ、牡丹!」
まるで本物の狼のようだな、と健悟を観て樹は思った。自分も初めはああやって噛みつかれそうになったな、と懐かしさすら感じる。
牡丹も慣れているのか、全く動じない。
「落ち着いて頂戴、健悟くん。あなた達二人の楽曲は素晴らしかった。
だからこそ学長に評定を預けることにしたの」
「が…学長?」
健悟の驚きぶりから、それが普通のことではないのだと、樹は悟った。
「そう。今日の放課後、学長室に来て頂戴。忘れちゃだめよ」
じゃあね、と牡丹が去っていく。
健悟は固まっていた。
「あの、櫻木先輩?」
樹が声を掛けると、健悟が震えている。
「樹、わりぃ。俺達、詰んだかも」
「え?」
「学長は時々生徒をふるいにかけるんだ。
質が落ちないようにって。
牡丹はああ言ってたけど、学長に呼び出されたやつは二度と帰って来られないって噂もある」
「そんな…」
樹もその言葉に怖くなった。だが、克樹の笑顔が思い浮かぶ。ここで負けるわけにはいかない。
「櫻木先輩、俺達はふるいから落ちません。
絶対に残りましょう」
「そう…だよな。ビビるなんて俺らしくねえ!
やってやろうぜ!」
2人はお互いの拳をぶつけ合った。
✣✣✣
放課後、樹と健悟は学長室の前に立っていた。
学長室は昇降口のそばにある。
「いつも、通り過ぎてたけどここにあったんだ」
「俺も入るのは初めてだよ」
2人はお互いの顔を見て頷き合った。
もう自分達にはこの部屋に入る以外の選択肢は残されていない。
コンコン、と健悟が扉をノックすると、入り給え、という低い声がした。
「失礼します」
2人は学長室に入る。
そこにいたのは柔和そうな男性だった。
朝会で時折見る顔だ。
「二人共、よく来てくれたね」
学長が立ち上がる。空気がひときわ張り詰めたのは気のせいではない。
「君たちの楽曲、素晴らしかった。
リリースも考えたが、オーディションの話は聞いているね?」
「は…はい」
2人は頷いた。
「君達はそれにチャレンジしなさい。
きっといいものが出来ると信じている。
そして」
2人は学長から何かを預かった。
それは、普通のネクタイピンに見える。
「それは選ばれた生徒が付けられる特別製のネクタイピンだ。君達には期待している」
「ありがどうございます!」
2人はその場でネクタイピンを付けてみた。
「わー、かっこいい」
「樹、やったな!」
2人がわいわい喜んでいるのを学長は静かに見守っていた。
37
あなたにおすすめの小説
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
目覚ましに先輩の声を使ってたらバレた話
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
サッカー部の先輩・ハヤトの声が密かに大好きなミノル。
彼を誘い家に泊まってもらった翌朝、目覚ましが鳴った。
……あ。
音声アラームを先輩の声にしているのがバレた。
しかもボイスレコーダーでこっそり録音していたことも白状することに。
やばい、どうしよう。
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。
続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』
かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、
転生した高校時代を経て、無事に大学生になった――
恋人である藤崎颯斗と共に。
だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。
「付き合ってるけど、誰にも言っていない」
その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。
モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、
そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。
甘えたくても甘えられない――
そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。
過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの
じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。
今度こそ、言葉にする。
「好きだよ」って、ちゃんと。
最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。
はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。
2023.04.03
閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m
お待たせしています。
お待ちくださると幸いです。
2023.04.15
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
更新頻度が遅く、申し訳ないです。
今月中には完結できたらと思っています。
2023.04.17
完結しました。
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます!
すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。
俺の親友がモテ過ぎて困る
くるむ
BL
☆完結済みです☆
番外編として短い話を追加しました。
男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ)
中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。
一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ)
……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。
て、お前何考えてんの?
何しようとしてんの?
……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。
美形策士×純情平凡♪
【完結】我が兄は生徒会長である!
tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。
名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。
そんな彼には「推し」がいる。
それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。
実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。
終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。
本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。
(番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる