男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ

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演奏会

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「うん、樹くん。とても素敵だね」

日曜日がやっと来た。
相変わらず夢プロの一日は濃密で、スポンジになることを求められる。
今日は渚と演奏会を見に行く。
何か新しいものを吸収出来れば、と樹は張り切っていた。
インプットする機会は大事だ。

渚から借りた服は淡い黒のタキシードで、着慣れないがしょうがない。どちらかと言えば着られてしまっている。
革靴もだんだん履き慣れてきたのでそれを履いた。

「じゃあ行こうか」

学校の門を出ると、ベンツが停まっている。
それにも驚いたが、中から運転手がやって来て恭しく、ドアを開けてくれた。

「樹様、どうぞ」

「す、すみません!」

樹は慌てて車に乗り込んだ。
中は広く涼しい。
だんだん蒸し暑くなってきていたので有り難い。
渚も乗り込んできた。
車が静かに走り出す。

「樹くん、調子はどう?」

「はい。えーと、作詞で行き詰まってしまって」

まだ詞は完成していなかった。
ある程度はワードを埋めてみたものの、まだまだ改良の余地はありそうだ。

「今日の演奏会はいい気分転換になると思うよ」

「はい、楽しみです」

車は会場の入り口に滑り込んでいた。

「じゃあ、行こうか」

「はい」

樹は緊張していた。
こんな畏まった場所に来るのは初めてだ。

周りの人もそれぞれ着飾っている。
渚の後を何とか付いていく。

「樹くん、大丈夫。力を抜いて。僕達は演奏を聞きに来ただけだよ」

渚に優しく言われて、樹は頷いた。
なんだかそう言われたらトイレに行きたくなった。

「すみません、渚先輩、
俺、お手洗いに行きます」

「あぁ、それなら僕も行こうかな」

手を洗ってハンカチで拭く。
会場に入るとほとんどの席が埋まっていた。

「わぁ、すごいなぁ」

「樹くん、こっちだよ」

渚に先導されて席に着く。
意外と前の方で驚いた。

「わぁここならよく見えるかも」

「うん、そうだね」

しばらくして会場の照明が落ちる。
ざわざわしていたのがしん、と静まり返った。
幕が開いた。

指揮者が手を振り上げる。
演奏が始まった。
樹はあまりクラシックに詳しくない。
だがそれでもその迫力に圧倒された。
特にピアノには注目する。自分もこれだけ弾けたら楽しいだろう、なんて思う。

(なんて壮大な音楽なんだろう)

樹はドキドキしながら演奏を見守った。
ステージは約三時間続いた。

あっという間だった。

「先輩、本当にありがとうございます!」

帰り道、そう礼を言ったら渚は笑った。

「喜んでもらえたようでよかった。僕は樹くんの曲のファンだからね」

そんな言葉が嬉しい。顔が熱くなった。

「や…いやいや。俺の曲なんてまだまだだし」

「樹くんは、プロデューサーを目指してるんだよね?」

「はい」

渚が真剣な顔で言う。

「君はこれから何度も壁にぶつかると思う。
でも諦めないで」

「わ、そうですよね!ありがとうございます!」

やはり夢を叶えるためには一筋縄じゃいかないのだ。
渚の言葉を忘れてはいけない、樹はよく噛み締めた。
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