26 / 52
新曲完成?!
しおりを挟む
「かっちゃん、お願いがあるんだけど」
演奏会の次の日の夕方、樹は当然のように自分の部屋にやってきた克樹にそう切り出した。
昨日、この間克樹が歌って、音や字数が不自然だと感じたワードを直してみたのだ。
今度こそ、という気持ちが樹にはあった。
牡丹も曲を聞いて、ダンスの振り付けを考え始めてくれているらしい。詞の完成はみんなが楽しみにしてくれている。
曲がなかなか好評だったので尚更だ。
MVを作る大変さに樹は目が回りそうだった。
だが、ここで弱音を吐いている場合ではない。
プロデューサーになりたいなら一つでも多く経験値を上げることだ。
昨日、渚にもそう励まされた。樹はそれで迷いを捨てた。行けるところまで行ってみよう、そう思った。
「なぁに?頼みって?」
「これ、もう一度歌ってみてくれない?」
「わ、もしかして歌詞直したの?」
「うん。それで良ければ皆にデモテープ作りたい。かっちゃん、協力してくれる?」
「もちろんだよ!」
克樹がすう、と息を吸う。
彼は歌い始めた。
伸びやかな優しい声だった。
樹は嬉しくなった。
自分の作った曲を歌ってもらえる嬉しさは何にも代えられないだろう。
「んー、Bメロのここ早口だよね。練習しなくちゃね」
「どうしよう?言い回しを変えようか?」
「ううん、このままの方が気持ち伝わる」
何度も克樹と細かい部分について話し合った。
「よし、櫻木先輩に聞いてもらおう」
「え?健悟先輩呼ぶの?」
樹はスマートフォンを振った。
「呼ぶよー」
「あぁあ、すっかり仲良しになっちゃって。いいことだけど」
克樹が頭を抱えているので、樹は笑ってしまった。
「なんで櫻木先輩が苦手なの?」
樹は前から気になっていたことを聞いてみた。
「だってさー、健悟先輩ってめちゃくちゃイケメンでしょー?
いっくん取られちゃいそうでさ…」
「取られないよ。確かに櫻木先輩はかっこいいけど、俺はちゃんと…」
「ただいまー」
かちり、とドアが開いて風が帰ってきた。
今日も衣装を家庭科室で作っていたのだろう。
片手にはミシンを持っている。
「あ、風!お帰り!」
樹は話を誤魔化そうと風に視線を向けた。
今この告白は恥ずかしすぎる。
克樹もなにも言わなかった。
「克樹、調度よかった。
衣装のパンツなんだけど、試着してみてくれない?」
「わ、やったあ!俺がなんでも一番だね!」
風がそれに首を傾げているので、樹は歌詞が完成したことを風に告げた。
「へえ!ついに完成したんだ!
それなら櫻木先輩に聞いてもらわないとね」
「今から健悟先輩、呼ぶんだよねー、いっくん」
「うん」
克樹が着替え終わったようだ。風が細かい部分を調整している。
「僕は構わないよ。ついでにみんなのイメージカラーの案出したいし」
風がそう言ってくれたので、樹は健悟に電話を掛けたのだった。
演奏会の次の日の夕方、樹は当然のように自分の部屋にやってきた克樹にそう切り出した。
昨日、この間克樹が歌って、音や字数が不自然だと感じたワードを直してみたのだ。
今度こそ、という気持ちが樹にはあった。
牡丹も曲を聞いて、ダンスの振り付けを考え始めてくれているらしい。詞の完成はみんなが楽しみにしてくれている。
曲がなかなか好評だったので尚更だ。
MVを作る大変さに樹は目が回りそうだった。
だが、ここで弱音を吐いている場合ではない。
プロデューサーになりたいなら一つでも多く経験値を上げることだ。
昨日、渚にもそう励まされた。樹はそれで迷いを捨てた。行けるところまで行ってみよう、そう思った。
「なぁに?頼みって?」
「これ、もう一度歌ってみてくれない?」
「わ、もしかして歌詞直したの?」
「うん。それで良ければ皆にデモテープ作りたい。かっちゃん、協力してくれる?」
「もちろんだよ!」
克樹がすう、と息を吸う。
彼は歌い始めた。
伸びやかな優しい声だった。
樹は嬉しくなった。
自分の作った曲を歌ってもらえる嬉しさは何にも代えられないだろう。
「んー、Bメロのここ早口だよね。練習しなくちゃね」
「どうしよう?言い回しを変えようか?」
「ううん、このままの方が気持ち伝わる」
何度も克樹と細かい部分について話し合った。
「よし、櫻木先輩に聞いてもらおう」
「え?健悟先輩呼ぶの?」
樹はスマートフォンを振った。
「呼ぶよー」
「あぁあ、すっかり仲良しになっちゃって。いいことだけど」
克樹が頭を抱えているので、樹は笑ってしまった。
「なんで櫻木先輩が苦手なの?」
樹は前から気になっていたことを聞いてみた。
「だってさー、健悟先輩ってめちゃくちゃイケメンでしょー?
いっくん取られちゃいそうでさ…」
「取られないよ。確かに櫻木先輩はかっこいいけど、俺はちゃんと…」
「ただいまー」
かちり、とドアが開いて風が帰ってきた。
今日も衣装を家庭科室で作っていたのだろう。
片手にはミシンを持っている。
「あ、風!お帰り!」
樹は話を誤魔化そうと風に視線を向けた。
今この告白は恥ずかしすぎる。
克樹もなにも言わなかった。
「克樹、調度よかった。
衣装のパンツなんだけど、試着してみてくれない?」
「わ、やったあ!俺がなんでも一番だね!」
風がそれに首を傾げているので、樹は歌詞が完成したことを風に告げた。
「へえ!ついに完成したんだ!
それなら櫻木先輩に聞いてもらわないとね」
「今から健悟先輩、呼ぶんだよねー、いっくん」
「うん」
克樹が着替え終わったようだ。風が細かい部分を調整している。
「僕は構わないよ。ついでにみんなのイメージカラーの案出したいし」
風がそう言ってくれたので、樹は健悟に電話を掛けたのだった。
13
あなたにおすすめの小説
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
目覚ましに先輩の声を使ってたらバレた話
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
サッカー部の先輩・ハヤトの声が密かに大好きなミノル。
彼を誘い家に泊まってもらった翌朝、目覚ましが鳴った。
……あ。
音声アラームを先輩の声にしているのがバレた。
しかもボイスレコーダーでこっそり録音していたことも白状することに。
やばい、どうしよう。
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。
続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』
かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、
転生した高校時代を経て、無事に大学生になった――
恋人である藤崎颯斗と共に。
だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。
「付き合ってるけど、誰にも言っていない」
その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。
モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、
そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。
甘えたくても甘えられない――
そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。
過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの
じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。
今度こそ、言葉にする。
「好きだよ」って、ちゃんと。
最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。
はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。
2023.04.03
閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m
お待たせしています。
お待ちくださると幸いです。
2023.04.15
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
更新頻度が遅く、申し訳ないです。
今月中には完結できたらと思っています。
2023.04.17
完結しました。
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます!
すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。
俺の親友がモテ過ぎて困る
くるむ
BL
☆完結済みです☆
番外編として短い話を追加しました。
男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ)
中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。
一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ)
……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。
て、お前何考えてんの?
何しようとしてんの?
……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。
美形策士×純情平凡♪
【完結】我が兄は生徒会長である!
tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。
名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。
そんな彼には「推し」がいる。
それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。
実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。
終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。
本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。
(番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる