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浴衣
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樹と克樹は車の後部座席に乗っている。
父の運転で母の妹である叔母の家に向かっていた。2人の家からそんなに離れていない。高速道路に乗れば30分ほどの道のりだった。
叔母は最近子供を産んだばかりらしい。
毎日てんやわんやだと母にこぼしているのだという。だがその裏側には嬉しさもあるようだ。母もそれを分かっているようで、にこにこしながら言っていた。
「赤ちゃんかー!やっぱり小さいのかな。もう遊んだり出来るの?」
克樹が楽しそうに言う。母が自分のスマートフォンの画面を見せてくれた。小さな赤ん坊が映っている。
「まだ首も据わってないみたい。でも話しかけてあげたら喜ぶわ」
「わー、いっくん楽しみだね!」
「女の子?」
樹が呟くと、母が頷く。
「そうよ。樹、よく分かったわね?」
「うん、なんとなく」
そんなことを話していたら、いつの間にか車は高速道路から下りていた。
しばらく走ると見慣れた道に出る。
ここまで来たらもうすぐだ。
「いらっしゃい、克樹、樹。2人ともよく来てくれたわね」
「こんにちは。おばちゃん」
樹と克樹が挨拶すると、叔母はニコニコしている。
「散らかってるけど上がって。
あ、そうそう。暑いしレモネード飲む?」
「飲む!おばちゃんのレモネード最強!」
克樹がぶんぶん頷いている。
レモネードはこの家に来ると、必ず出てくるメニューだ。
叔母が庭に生っている木から収穫したレモンのシロップは甘酸っぱくて炭酸水で割ってサイダーにすると何杯でも飲めてしまう。
克樹も樹もそれが大好きだ。
叔母は手際よくレモネードを作り、グラスに注いでくれた。
「いただきまーす」
キンキンに冷えたレモネードがしゅわあと口の中で弾ける。
蜂蜜の優しい甘さが嬉しい。喉が乾いていたので、一息に飲んでしまった。
「うまーい!」
「美味しいね、かっちゃん」
「よかった。あ、おばあちゃんに挨拶してあげて?帰ってきてるから」
「はーい」
2人は仏間に向かった。叔母の家はもともと母の実家でもある。祖母が亡くなるまで、叔母は祖母の面倒を看ていた。
線香をあげて仏壇に向かって拝む。
毎回この行事にドキドキしてしまうが、無事に終わった。
「2人とも、今日のお祭り行くんでしょう?
浴衣を着て行きなさい。おばちゃん、新しく作ったのよ」
「わー、ありがとう!」
叔母がにこにこ笑っている。
ふと、音がした。
赤ん坊が泣いている。
叔母がベビーベッドに向かった。
「お腹空いたのかな?」
克樹に囁かれて、樹は頷いた。
✣✣✣
「よかった、ぴったりね」
夕飯を軽く食べた後、浴衣を着てみると、採寸したかのようにぴったりだった。
克樹は紺色、樹は緑色の浴衣だ。
柄はない。
「わー、いっくん。お祭り楽しみだね!」
「うん!」
「2人とも、これお小遣い」
叔母が五千円札を2人にそれぞれ渡してくれる。
「わ、おばちゃんありがとう」
「気を付けて行ってくるのよ」
「うん!行ってきまーす!」
外に出ると、月が煌々と明るい。
「いっくん、射的やろ!」
「うん!」
祭り囃子の音が聞こえてくる。
「いっくん、行こ!」
克樹が手を握ってくれる。
樹はそれが嬉しい。
彼に向かって頷いた。
父の運転で母の妹である叔母の家に向かっていた。2人の家からそんなに離れていない。高速道路に乗れば30分ほどの道のりだった。
叔母は最近子供を産んだばかりらしい。
毎日てんやわんやだと母にこぼしているのだという。だがその裏側には嬉しさもあるようだ。母もそれを分かっているようで、にこにこしながら言っていた。
「赤ちゃんかー!やっぱり小さいのかな。もう遊んだり出来るの?」
克樹が楽しそうに言う。母が自分のスマートフォンの画面を見せてくれた。小さな赤ん坊が映っている。
「まだ首も据わってないみたい。でも話しかけてあげたら喜ぶわ」
「わー、いっくん楽しみだね!」
「女の子?」
樹が呟くと、母が頷く。
「そうよ。樹、よく分かったわね?」
「うん、なんとなく」
そんなことを話していたら、いつの間にか車は高速道路から下りていた。
しばらく走ると見慣れた道に出る。
ここまで来たらもうすぐだ。
「いらっしゃい、克樹、樹。2人ともよく来てくれたわね」
「こんにちは。おばちゃん」
樹と克樹が挨拶すると、叔母はニコニコしている。
「散らかってるけど上がって。
あ、そうそう。暑いしレモネード飲む?」
「飲む!おばちゃんのレモネード最強!」
克樹がぶんぶん頷いている。
レモネードはこの家に来ると、必ず出てくるメニューだ。
叔母が庭に生っている木から収穫したレモンのシロップは甘酸っぱくて炭酸水で割ってサイダーにすると何杯でも飲めてしまう。
克樹も樹もそれが大好きだ。
叔母は手際よくレモネードを作り、グラスに注いでくれた。
「いただきまーす」
キンキンに冷えたレモネードがしゅわあと口の中で弾ける。
蜂蜜の優しい甘さが嬉しい。喉が乾いていたので、一息に飲んでしまった。
「うまーい!」
「美味しいね、かっちゃん」
「よかった。あ、おばあちゃんに挨拶してあげて?帰ってきてるから」
「はーい」
2人は仏間に向かった。叔母の家はもともと母の実家でもある。祖母が亡くなるまで、叔母は祖母の面倒を看ていた。
線香をあげて仏壇に向かって拝む。
毎回この行事にドキドキしてしまうが、無事に終わった。
「2人とも、今日のお祭り行くんでしょう?
浴衣を着て行きなさい。おばちゃん、新しく作ったのよ」
「わー、ありがとう!」
叔母がにこにこ笑っている。
ふと、音がした。
赤ん坊が泣いている。
叔母がベビーベッドに向かった。
「お腹空いたのかな?」
克樹に囁かれて、樹は頷いた。
✣✣✣
「よかった、ぴったりね」
夕飯を軽く食べた後、浴衣を着てみると、採寸したかのようにぴったりだった。
克樹は紺色、樹は緑色の浴衣だ。
柄はない。
「わー、いっくん。お祭り楽しみだね!」
「うん!」
「2人とも、これお小遣い」
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「わ、おばちゃんありがとう」
「気を付けて行ってくるのよ」
「うん!行ってきまーす!」
外に出ると、月が煌々と明るい。
「いっくん、射的やろ!」
「うん!」
祭り囃子の音が聞こえてくる。
「いっくん、行こ!」
克樹が手を握ってくれる。
樹はそれが嬉しい。
彼に向かって頷いた。
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