ヒメ様が賊にさらわれました!

はやしかわともえ

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ヒメナ

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スバルがフリースクールの体験に通い始めて数日が経つ。彼は毎朝緊張しながら学校に行く支度をして、バスの来る時間まで時計を見ながらカチコチになっている。傍から見たら可哀想になるくらいだったが、ヒメリは敢えて声を掛けなかった。ここで声を掛けて、スバルのペースを崩したくなかったからだ。もちろんクロードやオリオ、小人たちにも協力してもらっている。いつの間にか家族のように一致団結しているのが不思議だが、この繋がりにヒメリは温かさを感じている。

「い…行って来ます」

「スバル、行ってらっしゃい」

バスが来る五分前、スバルが出掛ける。
ヒメリは彼の背中を見送った。

✢✢✢

『やっと着いた』

スバルは机に教科書を入れながら呟いた。
体験とはいえ、他の生徒と同じように授業を受ける。改めて字の読み書きから習い始めたスバルだったが、勉強はなかなか楽しいものだった。
今日は何を学べるんだろうというワクワク感があるのも事実だ。

「おはよー!スバルっち!」

「あ、おはよう。えーとナオト君」

「スバルっち、固すぎ。ナオトでいいから!まだ緊張してるの?」

「うん、緊張する。俺さ、前の学校でいじめられちゃって」

スバルは正直に胸の内を明かした。ナオトが苦々しい表情になる。

「そうゆう人の痛みが分からないやつらが大人になるってどう思う?」

「え…」

ナオトの問にスバルは困ってしまった。ナオトは自分より年下だが、時々鋭い質問を投げ掛けてくる。

「俺はさ、やっぱり優しい大人になりたい。
困っている人がいたら助けたい」

ナオトが胸を軽く叩いて言う。スバルもそれに頷いていた。

「うん、俺もそう思うよ」

「人助けって案外難しいものよ?」

ふと澄んだ声がしてスバルはそちらを見た。
体つきから少女だと分かるが、短髪の彼女は一瞬、男に見えてしまう。スバルはドキドキしながら彼女に聞いた。

「君はヒメナさんだったよね?やっぱり難しいのかな?」

彼女は頷く。

「人に甘える人がいるのも事実よ」

「確かにそれはヒメナの言うとおりかもしれないな」

ナオトも頷いている。

「甘えるって頼るのと違うの?」

スバルは二人に聞いてみた。ずっと疑問に思っていたことだ。

「頼るのは、出来ない事を助けてもらうこと。甘えは出来るのにやってもらうこと、あたしはそう定義しているわ」

「ヒメナさんは偉いなぁ」

スバルが呟くと、彼女は頬を赤らめた。

「スバル、あたしもヒメナでいい。
あなたのこともっと知りたい」

「え…」

スバルは困ったがチャイムが鳴り出してしまう。朝のホームルームの時間だ。
スバルはしばらくヒメナの言葉を反芻した。
彼女とちゃんと話したのはこれが初めてだったが、頭のいい人だとスバルは彼女を尊敬したのだ。そして優しいクラスメイトたちにスバルは心の中で礼を言った。
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