15 / 85
手紙
しおりを挟む
スバルはフリースクールからの帰り道、スクールバスに乗って帰宅する。バスから降りて長屋から少し離れたポストを見るのが日課になっている。スバルは今日もいつも通りポストの中を見た。
一通、ピンク色の封筒が入っている。宛名はヒメリだった。
差出人を見てみたがスバルはその文字を読み取ることが出来なかった。すごく癖のある文字だ。まるで有名人のサインのようである。気になったが、とりあえず長屋に入る。
「兄ちゃん、お帰りー!」
「ただいま、オリオ。ヒメ兄ちゃんは?」
「この間ピーチパイを注文した人から注文が入ったんだって!またピーチパイ焼いてるよ!」
オリオが無邪気に笑う。
「あれは美味かったもんね」
「うん、美味かった。で、それなに?」
オリオに手紙を指差されて、スバルは頷いた。
「ヒメ兄ちゃんに手紙。渡してくる」
「一緒におやつ貰ってきてね!」
スバルが厨房に入ると、ヒメリはちょうど窯にパイを入れた所だった。
「お帰り、スバル。お腹が空いたのか?」
「ヒメ兄ちゃんに手紙」
スバルが手紙を渡すとヒメリも差出人を確認している。スバルは気になってヒメリに聞いてみた。よく考えると、自分たちはヒメリのことをあまり知らない。こんなに一緒にいるのにだ。
「それ、誰から?」
「妹からだよ」
「ヒメ兄ちゃんって妹がいるんだ」
ヒメリは笑った。
「そういえば言っていなかったな。つい皆知ってるって思っていたよ」
ヒメリは器用に封筒を開けて中身を取り出す。
そしてそれを読み始めた。
「ふーん」
「なんて書いてあったの?」
いつものスバルなら遠慮して聞かなかっただろう。だが、今日は何故だか聞かざるを得なかった。ヒメリが笑う。
「この間のパーティは覚えているか?」
「うん、すごく怖かったよね」
「また例のペテルギウス三世が動き出したらしいっていう噂だ。妹も学校で薬について習ったらしい」
「へえ、ヒメ兄ちゃんの妹さんって学生なんだ?」
「あぁ。スバルと同い年だぞ」
「えー?」
「スバル、お帰り」
クロードがふらりとやってくる。最近ヒメリとクロードの様子が変わったとスバルは思っていた。
二人が一緒にいるとなんだか、ハートが飛び散っている様に見えるのである。
初めは気の所為かと思っていたが、そんなことはなかった。幸せそうな二人を見ると、スバルもなんだか嬉しくなる。
ヒメリがクロードにも手紙の内容を話している。
「あいつは本当に懲りねえな」
クロードが忌々しそうに呟く。
スバルは今日は何故か、理由を聞かずにはいられなかった。
それで答えてもらえなくても今日は平気そうだ。
「クロー兄ちゃんとペテルギウスって、二人の間に何かあったの?」
「スバル、なかなか察しがいいな。
昔、俺とあいつは同級生だったんだよ。
学生時代、あいつはあんなに派手なやつじゃなかったから驚きだ」
クロードの言葉にヒメリも驚いていた。
皆、まだお互いのことをほとんど何も知らない。だが、毎日少しずつ新たな面を知って好きになっていく。
スバルはふと父親のことを思い出していた。
酒を飲んでは暴れる父親のことを。
「スバル、大丈夫か?」
ヒメリが顔を覗き込んでくる。自分が暗い表情をしていると、ヒメリは必ず声を掛けてくれる。
「父さんのこと考えてた」
スバルは正直に話した。ヒメリにぎゅっと抱き締められる。
「父さん、このまま死んじゃうの?」
「それは誰にも分からない。でもスバルは自分の人生を大切にするんだ」
「俺の…人生?」
スバルはヒメリを見つめた。ヒメリはやはり今日も美しい。
「スバルはもっと幸せになれる。俺が保証する」
「幸せ…」
スバルにはまだよく分からなかった。今だって充分幸せだ。だが、更にその先に道は広がっているのだろうか。
そう考えるとその先に行ってみたいと思う。
これから自分がどこまで行けるのか試したい。
そんな考えがどこからか生まれてきて、スバルは自身に戸惑った。それは紛れもなく希望の光だ。
「ヒメ兄ちゃん、俺もちゃんと大人になれる?」
「もちろんだよ、スバル」
ヒメリに頭を撫でられる。
「そのためには毎日勉強したり遊んだりしなきゃな」
クロードにも言われて、スバルは頷いていた。
もっと自分に力を付けよう、どこまでも歩いていけるように。スバルはそう、一人決意していた。
一通、ピンク色の封筒が入っている。宛名はヒメリだった。
差出人を見てみたがスバルはその文字を読み取ることが出来なかった。すごく癖のある文字だ。まるで有名人のサインのようである。気になったが、とりあえず長屋に入る。
「兄ちゃん、お帰りー!」
「ただいま、オリオ。ヒメ兄ちゃんは?」
「この間ピーチパイを注文した人から注文が入ったんだって!またピーチパイ焼いてるよ!」
オリオが無邪気に笑う。
「あれは美味かったもんね」
「うん、美味かった。で、それなに?」
オリオに手紙を指差されて、スバルは頷いた。
「ヒメ兄ちゃんに手紙。渡してくる」
「一緒におやつ貰ってきてね!」
スバルが厨房に入ると、ヒメリはちょうど窯にパイを入れた所だった。
「お帰り、スバル。お腹が空いたのか?」
「ヒメ兄ちゃんに手紙」
スバルが手紙を渡すとヒメリも差出人を確認している。スバルは気になってヒメリに聞いてみた。よく考えると、自分たちはヒメリのことをあまり知らない。こんなに一緒にいるのにだ。
「それ、誰から?」
「妹からだよ」
「ヒメ兄ちゃんって妹がいるんだ」
ヒメリは笑った。
「そういえば言っていなかったな。つい皆知ってるって思っていたよ」
ヒメリは器用に封筒を開けて中身を取り出す。
そしてそれを読み始めた。
「ふーん」
「なんて書いてあったの?」
いつものスバルなら遠慮して聞かなかっただろう。だが、今日は何故だか聞かざるを得なかった。ヒメリが笑う。
「この間のパーティは覚えているか?」
「うん、すごく怖かったよね」
「また例のペテルギウス三世が動き出したらしいっていう噂だ。妹も学校で薬について習ったらしい」
「へえ、ヒメ兄ちゃんの妹さんって学生なんだ?」
「あぁ。スバルと同い年だぞ」
「えー?」
「スバル、お帰り」
クロードがふらりとやってくる。最近ヒメリとクロードの様子が変わったとスバルは思っていた。
二人が一緒にいるとなんだか、ハートが飛び散っている様に見えるのである。
初めは気の所為かと思っていたが、そんなことはなかった。幸せそうな二人を見ると、スバルもなんだか嬉しくなる。
ヒメリがクロードにも手紙の内容を話している。
「あいつは本当に懲りねえな」
クロードが忌々しそうに呟く。
スバルは今日は何故か、理由を聞かずにはいられなかった。
それで答えてもらえなくても今日は平気そうだ。
「クロー兄ちゃんとペテルギウスって、二人の間に何かあったの?」
「スバル、なかなか察しがいいな。
昔、俺とあいつは同級生だったんだよ。
学生時代、あいつはあんなに派手なやつじゃなかったから驚きだ」
クロードの言葉にヒメリも驚いていた。
皆、まだお互いのことをほとんど何も知らない。だが、毎日少しずつ新たな面を知って好きになっていく。
スバルはふと父親のことを思い出していた。
酒を飲んでは暴れる父親のことを。
「スバル、大丈夫か?」
ヒメリが顔を覗き込んでくる。自分が暗い表情をしていると、ヒメリは必ず声を掛けてくれる。
「父さんのこと考えてた」
スバルは正直に話した。ヒメリにぎゅっと抱き締められる。
「父さん、このまま死んじゃうの?」
「それは誰にも分からない。でもスバルは自分の人生を大切にするんだ」
「俺の…人生?」
スバルはヒメリを見つめた。ヒメリはやはり今日も美しい。
「スバルはもっと幸せになれる。俺が保証する」
「幸せ…」
スバルにはまだよく分からなかった。今だって充分幸せだ。だが、更にその先に道は広がっているのだろうか。
そう考えるとその先に行ってみたいと思う。
これから自分がどこまで行けるのか試したい。
そんな考えがどこからか生まれてきて、スバルは自身に戸惑った。それは紛れもなく希望の光だ。
「ヒメ兄ちゃん、俺もちゃんと大人になれる?」
「もちろんだよ、スバル」
ヒメリに頭を撫でられる。
「そのためには毎日勉強したり遊んだりしなきゃな」
クロードにも言われて、スバルは頷いていた。
もっと自分に力を付けよう、どこまでも歩いていけるように。スバルはそう、一人決意していた。
0
あなたにおすすめの小説
Nova | 大人気アイドル×男前マネージャー
むぎしま
BL
大人気アイドル・櫻井来夢が恋をしたのは、
ライバル事務所のマネージャー・本郷ルカだった。
強く、知的で、頼れる大人の男。
その背中に憧れ、来夢は彼を追いかける。
──仕事のできる色男・本郷ルカは、女にモテた。
「かっこいい」「頼りたい」「守ってほしい」
そんな言葉には、もう慣れていた。
けれど本当の心は、
守られたい。愛されたい。
そして、可愛いと思われたい。
その本心に気づいてしまった来夢は、
本郷を口説き、甘やかし、溺愛する。
これは、
愛されることを知った男と、
そのすべてを抱きしめたアイドルの、
とても幸せな恋の話。
独占欲強めな年下アイドル
(櫻井 来夢)
×
愛に飢えた有能マネージャー
(本郷 ルカ)
ーー
完結しました!
来週以降、後日談・番外編を更新予定です。
俺の推し♂が路頭に迷っていたので
木野 章
BL
️アフターストーリーは中途半端ですが、本編は完結しております(何処かでまた書き直すつもりです)
どこにでも居る冴えない男
左江内 巨輝(さえない おおき)は
地下アイドルグループ『wedge stone』のメンバーである琥珀の熱烈なファンであった。
しかしある日、グループのメンバー数人が大炎上してしまい、その流れで解散となってしまった…
推しを失ってしまった左江内は抜け殻のように日々を過ごしていたのだが…???
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。
N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間
ファンタジーしてます。
攻めが出てくるのは中盤から。
結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。
表紙絵
⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101)
挿絵『0 琥』
⇨からさね 様 X (@karasane03)
挿絵『34 森』
⇨くすなし 様 X(@cuth_masi)
◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
【完結】毎日きみに恋してる
藤吉めぐみ
BL
青春BLカップ1次選考通過しておりました!
応援ありがとうございました!
*******************
その日、澤下壱月は王子様に恋をした――
高校の頃、王子と異名をとっていた楽(がく)に恋した壱月(いづき)。
見ているだけでいいと思っていたのに、ちょっとしたきっかけから友人になり、大学進学と同時にルームメイトになる。
けれど、恋愛模様が派手な楽の傍で暮らすのは、あまりにも辛い。
けれど離れられない。傍にいたい。特別でありたい。たくさんの行きずりの一人にはなりたくない。けれど――
このまま親友でいるか、勇気を持つかで揺れる壱月の切ない同居ライフ。
経理部の美人チーフは、イケメン新人営業に口説かれています――「凛さん、俺だけに甘くないですか?」年下の猛攻にツンデレ先輩が陥落寸前!
中岡 始
BL
社内一の“整いすぎた男”、阿波座凛(あわざりん)は経理部のチーフ。
無表情・無駄のない所作・隙のない資料――
完璧主義で知られる凛に、誰もが一歩距離を置いている。
けれど、新卒営業の谷町光だけは違った。
イケメン・人懐こい・書類はギリギリ不備、でも笑顔は無敵。
毎日のように経費精算の修正を理由に現れる彼は、
凛にだけ距離感がおかしい――そしてやたら甘い。
「また会えて嬉しいです。…書類ミスった甲斐ありました」
戸惑う凛をよそに、光の“攻略”は着実に進行中。
けれど凛は、自分だけに見せる光の視線に、
どこか“計算”を感じ始めていて……?
狙って懐くイケメン新人営業×こじらせツンデレ美人経理チーフ
業務上のやりとりから始まる、じわじわ甘くてときどき切ない“再計算不能”なオフィスラブ!
サラリーマン二人、酔いどれ同伴
風
BL
久しぶりの飲み会!
楽しむ佐万里(さまり)は後輩の迅蛇(じんだ)と翌朝ベッドの上で出会う。
「……え、やった?」
「やりましたね」
「あれ、俺は受け?攻め?」
「受けでしたね」
絶望する佐万里!
しかし今週末も仕事終わりには飲み会だ!
こうして佐万里は同じ過ちを繰り返すのだった……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる