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言えない
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その日の夜、ヒメリはパジャマに着替えてお茶を飲んでいる。前にヒメカが【お兄ちゃんに】とヒメリの誕生日に買ってくれたものだ。
そのパジャマはフカフカのタオル生地でクマのキャラクターのイラストが描かれた可愛らしいものである。
もちろん、女性用だ。ヒメリは男性にしてはものすごく華奢だ。
持っている服のほとんどは女性用である。
ヒメリはクロードが戻ってくるのを待っている。
あれから彼はずっとロイと話し込んでいる。
何か、よほどのことがあったに違いない。怖い気持ちもないわけではないが、知らないよりはマシだとヒメリは考えた。
「ヒメ様、お休みになられないのですか?」
心配そうに小人たちに聞かれ、ヒメリは頷いた。
「あと30分だけ待たせて」
「ヒメ様は疲れていらっしゃいます。ご無理はされない方が…」
確かに今日ももうクタクタである。毎日ベッドに入るとすとん、と眠ってしまう。
だが、今日はクロードと話さないと落ち着いて眠れないと思っている。ヒメリはお茶のお替りをカップに注いだ。眠気を感じない工夫である。
そんなことをしている間に、だんだんまぶたが落ちてくるのを止められなくなってきている。
「ヒメリ」
「…!」
名前を呼ばれてヒメリは飛び起きた。
いつの間にかクロードに寄りかかって眠っていたらしい。起き上がろうとして、それを制される。
そのまま抱き上げられていた。
「ふぁ…」
クロードの逞しい胸板に驚いて、ヒメリは小さく叫んだ。自分の薄い体とは大違いである。
そのまま連れて行かれたのはクロードの寝室である。この長屋はとにかく広いので、持て余していた部屋を使ってもらえて嬉しい。
ベッドに寝転ばされる。クロードがそのまま隣に寝そべった。
「クロードさん…ロイさんは?なにかあったんですか?」
クロードに結んでいた髪の毛を優しくほどかれる。ヒメリはもともと癖毛なので、ウェーブした赤髪が広がる。
「ヒメリ、お前には話せない」
ヒメリはがばりと起き上がっていた。
「なんで…なんでですか!」
クロードも起き上がってヒメリを抱き締める。
彼は囁いた。
「思っていたより危ないことになりそうだからだ」
「そんな…」
彼に今のは全部冗談だと笑ってほしかった。だが、クロードは真剣な表情を崩さない。
「ヒメリ、俺はお前が大事だ。分かって欲しい」
「っ…」
ヒメリは悔しかった。自分は戦力になれない。いつも体の小さいヒメリを皆は守ってくれる。なぜもう少し身長が伸びないのだろう、とヒメリはいつしか思うようになっていた。
いよいよ妹に身長を抜かされた日は、自分の部屋に閉じ籠もった。
だが周りにはその理由を言えなかった。
体の小さな自分をヒメリはずっとコンプレックスに感じている。
目の前がだんだんぼんやりしてくる。ヒメリは泣いていた。クロードにまた抱き締められる。
「ヒメリ、お前にはこれから大事なフェスティバルがある。大丈夫だ、お前にしか出来ないことがある」
「俺にしか出来ないこと?」
クロードは笑った。
そのパジャマはフカフカのタオル生地でクマのキャラクターのイラストが描かれた可愛らしいものである。
もちろん、女性用だ。ヒメリは男性にしてはものすごく華奢だ。
持っている服のほとんどは女性用である。
ヒメリはクロードが戻ってくるのを待っている。
あれから彼はずっとロイと話し込んでいる。
何か、よほどのことがあったに違いない。怖い気持ちもないわけではないが、知らないよりはマシだとヒメリは考えた。
「ヒメ様、お休みになられないのですか?」
心配そうに小人たちに聞かれ、ヒメリは頷いた。
「あと30分だけ待たせて」
「ヒメ様は疲れていらっしゃいます。ご無理はされない方が…」
確かに今日ももうクタクタである。毎日ベッドに入るとすとん、と眠ってしまう。
だが、今日はクロードと話さないと落ち着いて眠れないと思っている。ヒメリはお茶のお替りをカップに注いだ。眠気を感じない工夫である。
そんなことをしている間に、だんだんまぶたが落ちてくるのを止められなくなってきている。
「ヒメリ」
「…!」
名前を呼ばれてヒメリは飛び起きた。
いつの間にかクロードに寄りかかって眠っていたらしい。起き上がろうとして、それを制される。
そのまま抱き上げられていた。
「ふぁ…」
クロードの逞しい胸板に驚いて、ヒメリは小さく叫んだ。自分の薄い体とは大違いである。
そのまま連れて行かれたのはクロードの寝室である。この長屋はとにかく広いので、持て余していた部屋を使ってもらえて嬉しい。
ベッドに寝転ばされる。クロードがそのまま隣に寝そべった。
「クロードさん…ロイさんは?なにかあったんですか?」
クロードに結んでいた髪の毛を優しくほどかれる。ヒメリはもともと癖毛なので、ウェーブした赤髪が広がる。
「ヒメリ、お前には話せない」
ヒメリはがばりと起き上がっていた。
「なんで…なんでですか!」
クロードも起き上がってヒメリを抱き締める。
彼は囁いた。
「思っていたより危ないことになりそうだからだ」
「そんな…」
彼に今のは全部冗談だと笑ってほしかった。だが、クロードは真剣な表情を崩さない。
「ヒメリ、俺はお前が大事だ。分かって欲しい」
「っ…」
ヒメリは悔しかった。自分は戦力になれない。いつも体の小さいヒメリを皆は守ってくれる。なぜもう少し身長が伸びないのだろう、とヒメリはいつしか思うようになっていた。
いよいよ妹に身長を抜かされた日は、自分の部屋に閉じ籠もった。
だが周りにはその理由を言えなかった。
体の小さな自分をヒメリはずっとコンプレックスに感じている。
目の前がだんだんぼんやりしてくる。ヒメリは泣いていた。クロードにまた抱き締められる。
「ヒメリ、お前にはこれから大事なフェスティバルがある。大丈夫だ、お前にしか出来ないことがある」
「俺にしか出来ないこと?」
クロードは笑った。
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